初代宮内庁長官の田島道治が昭和天皇とのやりとりを記録した「拝謁記」が、岩波書店から『昭和天皇拝謁記』として刊行された。この史料は天皇の肉声が生々しく記録されており、天皇研究者の間で注目を集めている。特に、昭和天皇が母である皇太后節子と妻である皇后良子をどう見ていたかについての言葉からは、天皇の等身大の姿を垣間見ることができる。田島道治は皇太后を「おたゝ様」ないし「大宮様」、皇后を「良宮」と呼んでいた。注目すべきは、天皇が戦争末期の米軍の空襲について語ったことである。その言葉からは、大宮御所と沼津本邸が標的とされたのは、皇太后を狙って天皇を戦争終結に動かすためだったという風説があったことが分かる。
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