全日本女子バレーボール界のエースとして君臨していた木村沙織。彼女は、その圧倒的な実力とカリスマ性で多くのファンを魅了していました。一方で、新鍋理沙はその卓越した守備力と冷静なプレーで知られる選手でした。二人が出会ったのは、2009年の全日本女子バレーボール代表チームでのことでした。
木村は当時すでにスター選手としてチームの中心に位置しており、その存在感は計り知れないものでした。新鍋はその陰で黙々と努力を重ねるタイプで、華やかな木村とは対照的な存在でした。しかし、その対照的なスタイルが次第にチーム内での確執を生むことになるのです。
真鍋政義監督が率いる全日本代表チームは、木村を中心に戦術を組み立てることが多く、その影響で新鍋の起用が制限されることがありました。木村の攻撃力はチームの武器であり、監督にとっても重要なカードでしたが、その一方で、新鍋の持ち味である守備力や冷静な判断力が軽視されがちでした。
「アイツがいるから出ない」という新鍋の言葉がチーム内で囁かれるようになったのは、この頃からでした。木村への依存が強すぎるチームの戦術に、新鍋は次第に不満を募らせていきました。チーム内の温度差が、次第に二人の間に深い溝を生み出し、その溝は時間とともに埋めることが難しくなっていきました。
2014年の世界選手権での出来事が、新鍋にとって決定的な転機となりました。この大会で彼女は個人的に結果を残せず、精神的に大きく落ち込んでしまいました。自分のプレーがチームに迷惑をかけるのではないかという不安に苛まれ、遂には代表辞退を決意することになります。
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