"一杯の鍋が変えた人生" 第5話
その姿を見ながら、優太はし違を覚えた。
7歳の子供なら、もっと失敗してもいい。
をこぼして笑ったり、形の悪い野菜を作ってしまったり。
そんながあっていいはずだった。
でも美咲は違う。
何をするにも周囲を気にしている。
妹たちが騒いでいないか。
里が疲れていないか。
優太が迷惑そうな顔をしていないか。
いつも誰かの表を確認していた。
その理由に気づいたのは、数のことだった。
そのは夕、珍しく里が疲れた顔をしていた。
パート先で急なシフト変更があり、朝から休む暇がなかったらしい。
「今はし疲れました」
里は笑いながら言った。
「でも丈夫です」
その言葉を聞いた瞬、優太は胸が痛くなった。
また「丈夫」だ。
里も、翔夜と同じように言う。
本当は苦しいのに。
本当は助けてほしいのに。
は限界まですると、助けを求めることすら忘れてしまう。
その夜。
子供たちが寝た、優太は里に言った。
「無理してませんか?」
里は瞬、固まった。
「え?」
「いつも丈夫って言いますけど」
優太はゆっくり続けた。
「本当に丈夫なは、そんなに何度も言わない気がします」
里は黙った。
しばらくして、さく笑った。
「優太さん、よく見ていますね」
「昔……見逃したことがあるから」
里はそれ以聞かなかった。
ただ静かに頷いた。
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そのだった。
隣の部からさな物音がした。
「美咲?」
里がちがる。
しかし、すぐにはかなかった。
「……」
優太も気づいた。
泣き声だった。
きな声ではない。
誰にも聞こえないようにしているような、さな泣き声。
里が急いで部へ向かう。
優太もし遅れてろからついていった。
部の隅。
布団の横で、美咲が膝を抱えて座っていた。
「美咲、どうしたの?」
里が駆け寄る。
美咲は慌てて涙を拭いた。
「何でもない」
「嘘つかないで」
里の声が震える。
美咲はしばらく黙っていた。
そして、さな声で言った。
「ママ……」
「私がもっといい子だったら」
里の表が変わった。
「何言ってるの?」
「私がちゃんとしてたら、ママ困らなかった?」
その言葉を聞いた瞬、優太の胸が締め付けられた。
この子は、自分を責めている。
まだ7歳なのに。
族が苦しい理由を、自分のせいだとっている。
優太はしゃがんで、美咲と目線をわせた。
「美咲ちゃん」
美咲が顔をげる。
「それは違うよ」
「でも……」
「絶対に違う」
優太はゆっくり言った。
「の問題は、の責任なんだ」
美咲は黙って聞いていた。
「子供が頑張ったから族が幸せになるとか、子供が悪いから族が苦しくなるとか、そんなことないんだよ」
美咲の目から涙が落ちた。
「でも……妹たちが泣くから」
「うん」
「ママが変そうだから」
「うん」
「私がしっかりしなきゃって……」
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最の言葉は震えていた。
優太はその瞬、昔の自分をねていた。
自分もそうだった。
周囲に迷惑をかけてはいけない。
音を吐いてはいけない。
誰かを困らせてはいけない。
そうって、自分の苦しさを隠し続けた。
結果、自分自が壊れた。
「美咲ちゃん」
優太は優しく言った。
「頑張らなくていいもあるんだよ」
「……」
「7歳の女の子は、妹のお世話を全部しなくてもいい」
「……」
「遊んでもいいし、甘えてもいい」
美咲の唇が震えた。
そして、ずっとしていた涙が溢れた。
「……甘えてもいいの?」
その言に、優太の胸が痛んだ。
普通なら、子供はそんな確認をしない。
甘えることは当たりだからだ。
でも美咲は、それすら許が必だとっていた。
「もちろんだよ」
優太が答えると、美咲は声を押し殺して泣いた。
その夜。
美咲は初めて、子供らしい泣き方をした。
里は隣で涙を流していた。
「私……気づいていませんでした」
「……」
「この子がこんなにしていたなんて」
優太は何も言えなかった。
親もまた、必だったのだ。
里は3を守ることで精杯だった。
美咲は母親を助けることで精杯だった。
誰も悪くない。
ただ、全員がで頑張りすぎていた。
そのから、美咲はしずつ変わった。
以より笑うようになった。
妹たちと緒に遊ぶも増えた。
優太に宿題を見せるも、以のような緊張した顔ではなくなった。
「ゆう君、ここ分からない」
「どれどれ」
「先みたい」
「先じゃないよ」
そんな会話が増えた。
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