"孫の一言で、三億円の家を売りました" 第3話
「これ、しいのにして」
女性スタッフがし驚いた。
「こちらでしょうか?」
「トマト入ってるから」
美奈が笑う。
「すみません、この子トマト苦で」
スタッフがをげた。
「確認してまいります」
子がを挟んだ。
「いいんです。こちらが伝えていなかっただけですから」
「でも、おばあちゃん。べられない」
「トマトだけ残せばいいでしょう」
「汁ついてるもん」
すると健がスタッフへ言った。
「すみません。しいのお願いできます?」
「健」
「いいじゃん。せっかく来たんだから」
「でも、おののミスじゃないでしょう?」
「子供の好き嫌いなんだから仕方ないよ」
また、その言葉だった。
仕方ない。
数分。
しい皿が運ばれてきた。
スタッフは、
「お待たせいたしました」
とをげた。
涼太は何も言わずフォークを取る。
「涼太」
「なに?」
「作り直してもらったのよ」
「うん」
「何か言うことない?」
面倒そうに顔をげる。
「……ありがとう」
声はさかった。
女性スタッフは笑顔で、
「どうぞごゆっくり」
と言ってった。
子は胸がくなった。
たった「ありがとう」の5文字。
それを言わせるだけで、なぜこんな空気になるのだろう。
会計は4で2万4000円をし超えた。
健がカードをす。
をると、涼太が言った。
「パパ、あのおの、交換するの遅かったね」
「混んでたからな」
「もっとくすればいいのに」
健は笑った。
「涼太は厳しいな」
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その笑い方を見た瞬。
子はもう黙っていられなかった。
「健」
「ん?」
「し、涼太に厳しくしたほうがいいんじゃない?」
健の笑顔が消えた。
美奈もこちらを見る。
「昨の配達のもそう。今のおのもそう」
「涼太はまだ7歳よ。だからこそ、今のうちに教えたほうがいいとうの」
「何を?」
「おを払っているから、何を言ってもいいわけじゃないでしょう」
健はさくため息をついた。
「母さんさ。昔からそうだよね」
「何が?」
「細かすぎるんだよ」
子は目を瞬いた。
「ありがとうとか、すみませんとか、礼儀とか。もちろん事だよ。でも、いちいちそこまで言う必ないだろ」
「7歳だから今――」
「今は母さんの若い頃とは違うんだよ」
その言葉に、子のが止まった。
健は続けた。
「サービスを受ける側がおを払ってるのは事実だろ?」
「ちゃんと料を払ってるんだから、必以にへりくだる必もない」
「へりくだる?」
子はを疑った。
「ありがとうと言うことが?」
「そういうじゃないって」
健は面倒そうに首を振った。
「母さんは何でもげさなんだよ」
美奈も困ったように笑った。
「お義母さん、涼太もではちゃんとしてますから」
「族のだから、ちょっと甘えてるだけです」
子はそれ以言えなかった。
帰りの。
涼太は部座席でゲーム。
美奈はスマートフォン。
助席の子は、窓のを見ていた。
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信号待ち。
事の男性が炎でを誘導している。
昔の健なら、
「あんな暑いのに変だね」
と言っただろう。
の頃、コンビニの員に乱暴な態度を取る同級を見て、
「ああいうの嫌だな」
と言ったこともある。
その息子が今、
「料を払っているんだから」
と言う。
いつからだろう。
どこで変わったのだろう。
それとも。
変えたのは、自分なのだろうか。
第4章 3億円の「自分の」
その夜。
子は眠れなかった。
夜1を過ぎても、目が冴えていた。
居へり、古いアルバムをく。
健が3歳。
学の入学式。
12歳の運会。
20歳の成式。
25歳で会社をちげた。
写真のの健は、いつも笑っていた。
会社を始めた。
「最初に1000万円くらい必なんだ」
健はそう言った。
から借りられる額だけではりない。
設備費。
事務所の保証。
運転資。
当、子の貯は約1800万円。
夫が残したおをしずつ増やし、老のために守ってきたもの。
そのから1200万円をした。
「絶対返すから」
健は言った。
「返さなくていい。親なんだから」
そう答えたのは子自だった。
5。
会社の資繰りが悪化。
500万円。
結婚。
300万円。
そして12。
涼太がまれるし。
健が言った。
「子供を育てるなら庭のあるがいい」
当、健夫婦がんでいたのは2LDKの賃貸マンション。
賃は16万円。
美奈は仕事を度辞める予定だった。
宅ローンの審査も希望額には届かなかった。
そんな2を見て。
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