"帰れなかった15歳" 第3話
美津子は何も言わなかった。代わりに、自分の弁当に残っていた沢庵を切れへ包み、同じように鞄へ戻した。
午になり、列はきな駅でくした。
そこで別のから来た女たちが何か乗り込んできた。佐子の隣には、体のさな女が座った。
制の袖はが半分隠れるほどく、膝のには褪せた呂敷包みが1つあるだけだった。
「ここ、座ってもいい?」
女は申し訳なさそうに尋ねた。
「もちろん」
佐子が荷物を寄せると、女はさくをげた。
名は野寺千代子。
戸籍は15歳になったばかりだが、背がく顔ちも幼いため、12歳か13歳ほどにしか見えなかった。
千代子は座ってからも、何度も求票をいていた。の端は、繰り返し触ったため柔らかくなっている。
「どこのへくの?」
佐子が尋ねると、千代子は求票を見せた。
京の町にある縫製だった。女子寮と事が用され、初者でも裁をから教えるとかれている。
「を縫うの?」
「うん。学じゃ雑巾くらいしか縫ったことないけど、教えてくれるって」
「私たちは属部品の。くだったら、休みのに会えるかもしれないね」
千代子は初めて笑った。
しかし、その笑顔はすぐに消えた。
彼女が列へ乗る、見送りに来た族はいなかったという。
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父親は幼い頃にくなり、母親は再婚した。しい夫とのに幼い子どもが2いて、駅まで来る余裕がなかったと千代子は説した。
「をけばいいよ」
佐子が言うと、千代子は求票へ目を落とした。
「母ちゃん、しい族があるから。あんまり送らない方がいいとう」
言い方は淡々としていたが、佐子には、それが千代子自へ言い聞かせている言葉のように聞こえた。
それ以は尋ねなかった。
夕方、列が途の駅へしただった。
胸にい腕章をつけた男が乗り込んできた。40歳で、焦げ茶の子をかぶり、には数枚の名簿を持っている。
男は引率者とく話した、通へって名を呼び始めた。
「野寺千代子。松初。藤君。川澄」
4の女が顔をげた。
「おたちは次の駅で乗り換えだ。荷物を持って、ろの両へ移れ」
千代子は驚いて求票をいた。
「京まで、この列でくと聞いています」
「予定が変わった。の迎えが別のところへ来る」
「でも、ここには野駅集って……」
「仕事なんだから、決められた通りにすればいい」
男は面倒そうに言った。
「子どもが余計なをすな」
千代子の顔から血の気が引いた。
男が呂敷包みを持ちげると、千代子は仕方なくった。それでも、そのだけは佐子の袖を掴んだままだった。
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「佐ちゃん。私、そんな話、聞いてない」
声が震えていた。
佐子は引率者のところへった。
学の教師ではなく、複数の就職先を担当する職業定関係の職員だった。
「この子は京の縫製へくんじゃないんですか?」
「き先が変わっただけだ。先方同士で話がついている」
「本のお母さんはっていますか?」
「そんなことまで君が配する必はない」
職員はを振った。
佐子は納得できなかった。
けれど15歳の女に、たちの決定を覆す力はなかった。
千代子は別の3と緒に方の両へ連れてかれた。
扉を通る直、彼女は何度も佐子を振り返った。
その怯えた目だけが、佐子の胸に残った。
列が野駅へ着いた、はすでに暗くなっていた。
旅に疲れた女たちはい荷物を抱えてホームへりた。きな駅の井には蒸気がくたまり、汽笛と構内放送、々の音、荷物を運ぶ台の音が入り交じっていた。
方のさな駅しからない佐子たちには、目に入るものすべてが圧倒だった。
がどこから現れ、どこへ消えていくのかさえ分からない。
改札付には企業名をいた旗や板を掲げた採用担当者が並んでいた。女たちは学ごと、会社ごとに分けられ、次々と点呼を受けていく。
「亜精密業へくはこちらです!」
佐子たちの会社名が聞こえた。
美津子たちは互いの荷物を確認し、担当者のところへ移した。