"0円の注文帳" 第3話
だが。
番きな疑問は残っている。
「それと、私の専学は関係ないでしょう?」
隆子が顔をげた。
「専学?」
「次の、お母さんに京へくなって言われたの」
隆子は眉を寄せた。
「枝さんが?」
「そうよ」
「それは変だね」
「何が?」
隆子はしばらく直子を見ていた。
「あんたのお母さん、直子ちゃんを京へかせるために、何もを貯めてたよ」
直子は返事ができなかった。
「うちので緒に積の話したもの。『直子が料理を勉したいって言った、がないから諦めろとは言いたくない』って」
30信じてきた記憶に、初めてきな亀裂が入った。
直子はそのの午、の倉庫を最初から調べ直した。母が自分のためにを貯めていたという隆子の話が本当なら、どこかに記録が残っているはずだった。
古い茶箱の底から、方の通帳がてきた。
名義は野枝。
平成元から3まで使われており、毎2万円、3万円、いには5万円ずつ入されている。摘欄には母自の字で《直子学》とかれていた。
平成310。
残は128万4,600円。
当としては決してさな額ではなかった。
直子は通帳を握ったままけなくなった。
母は本当に、自分を京へかせるつもりだった。
「じゃあ、何で……」
さらに探した。
仕入れ先の請求。
保険関係。
税。
父の与細。
そのから、見覚えのある学名が印刷された封筒がてきた。
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《京央調理学院》
直子が格した学だった。
封筒には、
《入学辞退届 写》
が入っていた。
氏名欄には、
《野直子》
とかれている。
直子は瞬、背がたくなった。
「私の字じゃない」
何度見ても違う。
署名は本がいたように似せてあるが、「直」の払い方に覚えがあった。
父・茂の字だった。
若い頃、町内会の類で何度も見た。
父が自分の名をいた。
直子は机のに座り込んだ。
母が勝に学を断った。
そう信じてきた。
違った。
父だった。
さらに封筒のには、母から学へ送られたの控えがあった。
《娘の入学辞退について確認させてください。本に辞退のはありません》
《能であれば、続きを取り消していただけないでしょうか》
付は117。
直子の誕から4だった。
学側からの返事も残っている。
推薦枠による特別減免は、すでに次の候補者へ移っている。
通常枠であれば翌の入学は能だが、学費と寮費をわせて追加で100万円以必になる。
直子はを何度も読んだ。
母は。
自分のを止めようとしたのではない。
なくとも最初は。
取り戻そうとしていた。
その夜、直子は叔母の節子へ話した。
母より5歳の節子は現76歳で、群馬にんでいる。
「お母さんとお父さん、私の専学のことで喧嘩した?」
話の向こうで、節子が黙った。
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その沈黙で分だった。
「ってたんだね」
「全部じゃないよ」
「ってるところだけ話して」
節子はく息を吐いた。
「茂さんは、最初から京へかせたくなかった。女の子がで京へったら戻らなくなるって、本気でってただから」
父には、悪いで昔気質なところがあった。
直子も覚えている。
女はを守るものだ。
結婚したら夫をてろ。
父は何の疑いもなく、そうにするだった。
「辞退届を勝にしたのも、お父さん?」
「そうらしいね。枝姉ちゃんがった、変だったよ」
母は学へ話した。
父を責めた。
は直子が聞いたことのないほど激しく言い争った。
節子によれば、母は度、
「直子だけでも、この町からしてやりたい」
と言ったことがあるという。
「じゃあ、どうして私には『京へくな』って言ったの?」
節子は答えなかった。
「らないの?」
「そこは……姉ちゃん本にしか分からない」
直子は話を切った。
母への30のみが消えたわけではなかった。
むしろ。
しい疑問がまれた。
母は学へ頼んでいた。
も貯めていた。
それなのに最は直子へ、
「京へくな」
と言った。
なぜ途で気持ちを変えたのか。
その答えは、まだどこにもなかった。
母のまであと1週となった午、の男がを訪ねてきた。60代半ばに見える細の男で、閉した内を覗き込み、直子を見ると「野枝さんの娘さんですか」
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