"最後の迷子放送" 第10話
「何が?」
「もっと、だから言ったでしょうとか、いところで苦労したでしょうとか言うかとってた」
澄はスプーンでアイスをしすくい、ゆっくりへ運んだ。
「昔だったら言ったかもしれない。でも、言いすぎてあなたがいなくなったから」
その言葉を聞き、京子は黙った。
澄はしばらく窓のを見つめてから続けた。
「あの、あなたがへくのが怖かったの。いからじゃない。あなたがいなくなることそのものが怖かったんだとう」
「……うん」
「5歳の、で見失ったでしょう。あののことが、ずっとに残ってた。し見えなくなるだけで、またいなくなるような気がしていたの」
京子は初めて、母の反対が単なる支配欲だけではなかったのだと理解した。もちろん、それで当の息苦しさがすべて消えるわけではない。けれど母には母の恐怖があり、その恐怖をうまく言葉へできなかったのだとえば、しだけ過の見え方が変わった。
「でも私、あのほんとに嫌だったよ」
「うん」
「お母さんが全部決めようとするの」
「うん。ごめんね」
澄は言い訳をしなかった。
そのい謝罪を聞き、京子もクリームソーダのグラスへ線を落とした。
「私も……あんな言い方しなきゃよかった」
「『もう迎えに来なくていい』?」
京子は顔をしかめた。
「覚えてるの?」
「忘れるわけないでしょう」
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は顔を見わせ、今度はしく笑った。
それからすぐに昔通りの母娘へ戻ったわけではない。京子がその晩澄のへ泊まったも、最初は何をどこまで話せばよいのか分からず、互いに妙に丁寧な言葉を使ってしまった。翌朝も、澄が噌汁を作りながら「は濃くない?」と聞き、京子が「と同じ」と答える程度の会話しかなかった。
しかし帰る、京子は自分の所と話番号をいたをテーブルへ置いた。
「今度は、ちゃんとちょうだい」
澄はを両で受け取った。
「返事、遅くてもらない?」
「半以内なら」
「そんなに待たせません」
玄関をた京子は、数歩んでから振り返った。
昔、をた夜にも同じ所で振り返った。
けれど今度の言葉は違った。
「また来るね」
澄は追いかけなかった。
ただ玄関からを振った。
「待ってるよ」
それでよかった。
翌の第1曜、午3になっても、丸百貨に「京ちゃん」という名は流れなかった。毎聞いていた部の員が「あれ、今はないのね」と議がったものの、事をる芳は何も説しなかった。案内所ではいつも通り本物の迷子の呼びしが流れ、泣いていた子どもが母親の姿を見つけて駆けしていった。
恵子はその景を見ながら、先のことを何度もい返した。もし自分が規則を理由に放送を断らなければ、京子は「今で最」
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と聞くこともなく、また売りのどこかで声だけを聞いて帰っていたかもしれない。逆に考えれば、自分が終わらせようとしたからこそ、く続いた待ちに区切りがまれたのだともえた。
数週、崎澄が百貨へやって来た。けれどこのは第1曜ではなく、放送を頼むこともなかった。にはさな菓子折りを持ち、案内所ので恵子と芳へ何度もをげた。
「娘からが来ました」
澄は嬉しそうにそう言った。便箋には仙台での暮らしや俊夫の況がかれ、になったら夫婦で帰省するという。8ほとんど途切れていた母娘のやり取りは、まだぎこちなさを残しながらもしずつ続いていた。
それから数、恵子は別の売りへ異した。やがて結婚して丸百貨を退職したため、澄と京子がそのどのように暮らしたのか、詳しいことまでることはなかった。それでも々買い物で百貨を訪れると、1階案内所のを通るたびに、あのの放送をいした。
昭の百貨には、の代にはなくなっていく景が数くあった。遊園では子どもたちが馬にまたがり、堂では族がつのテーブルを囲み、制姿のエレベーターガールが「へ参ります」とをげた。館内放送から迷子の名が流れれば、買い物をしている々まで何となくを傾け、無事に親のもとへ戻れたことをると、らない族のことなのにしした。