"1億8400万円の夜逃げ" 第4話
「帰ってきたんですね」
佳子はそう言った。
「9もかかって……ようやく、帰ってきたんですね」
が消えてから、佳子は最初の1、ほとんど毎警察へ話していたという。そのは週に1度になり、に1度になったが、息子の誕には必ず好物を作った。秀夫は何も言わなかったものの、そのだけはいつもよりく仕事から帰ってきた。
数、父の秀夫は脳梗塞で倒れ、を辞めざるを得なくなった。計を支えるため、60歳を過ぎていた佳子が堂の勤務を増やしたが、彼女が最もつらかったのは働くことではなかった。「が戻ってきたら、こんな姿を見て配するだろう」と考えることだった。
佳子には、9ずっと理解できない言葉があった。
失踪直、から突然話がかかってきたのだ。
「母さん、俺たち、これからは幸せに暮らそう」
いつも節約ばかりしていた息子らしくない言葉だった。佳子が何かあったのかと聞くと、は笑いながら「そのうち話すよ。母さんに贅沢させてやるから」と答えた。その、佳子がいつものように「ちゃんとご飯をべたの」と尋ね、は「べたよ」と返した。
それが、親子の最の会話になった。
佐藤はその通話記録を見ながら考えた。国公務員試験を目指し、賃3万5000円の古いアパートで暮らしていた無職にい青が、なぜ突然「贅沢させてやる」
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と言ったのか。の座には、その言葉を裏付けるは入っていなかった。
そこで佐藤は、健の方資料に記された「ロト1等当選」という文字をいした。
1億8400万円。
当選したのは、本当に健だったのか。
佐藤は2016当の宝くじ受け取り記録を、もう度調べることにした。
の記録、1億8400万円を受け取った物は健だった。本確認類を提示し、必な続きもすべて健名義でわれているため、9の警察も当然のように健を当選者と考えていた。しかし、宝くじを誰が最初に購入したのかまでは、その記録から分からなかった。
佐藤は当選券が販売された舗を特定した。本から徒歩圏内にあるコンビニエンスストアで、も経営者もすでに代わっていたが、本部には当の販売記録が残されていた。20166の曜、夕方くに1枚だけ購入されたロト券が、その週の1等に該当していた。
購入は現だった。防犯カメラ映像は保期をとっくに過ぎており、客の姿を確認することはできなかった。しかし佐藤は、同じの鈴の交通系ICカード記録を調べ、が野から本方面へ移していたことを確認した。
さらに、その約3、健からへ4分ほどの話がかかっていた。学代の友に誘われて本へ向き、帰る途にコンビニへ寄ったと考えれば自然ではない。
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には普段から宝くじを購入していた記録はなく、そのだけ偶然、200円を支払って1枚を買った能性がてきた。
佐藤はの学代の友を探した。何かに連絡を取るうち、「鈴はと番仲が良かった」という証言が繰り返された。るく付きいのい健と、控えめで友のないは正反対に見えたが、健は学代からをよく事へ誘い、に余裕のないの分まで支払うこともかったという。
は健をから信頼していた。
方、健のが経営難に陥った頃、は友の苦境をりながら何もできないことを悩んでいた。本も試験勉で、両親からの仕送りをできるだけ減らすためアルバイトをしていたであり、銭援助などできるはずもなかった。それでも折健へ話をかけ、「飯くらいなら付きうから」と励ましていたらしい。
事件の全体像を変える証言がたのは、の古い携帯話データを復旧できないか調べていたときだった。端末そのものは見つからなかったが、通信会社に保されていた部の履歴と、母親の記憶が組みわさったことで、がロト当選をった直、なくともへ話していた能性がいことが分かった。
は母親の佳子だった。
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