"変な家" 第1話
宅報サイト「図」の編集者、森川直のもとに通のメールが届いたのは、末の夜だった。
〈この、いんですけど、つだけ気になるところがあって〉
差は坂啓介。埼玉県にある築の古宅を購入しようとしているという。添付された階平面図は、ごく普通のLDKに見えた。玄関から廊が延び、居、、洗面、浴が並んでいる。だが寸法を拾うと、洗面と斎のに幅メートル余りの空が残った。そこへ通じる扉はない。
空の隣には、のから入れない物置がある。さらに側には、台所にも居にもつながらないさな第玄関があり、階主寝の窓はや庭ではなく、壁に囲まれた細い吹き抜けへ向いていた。
森川は、宅記事を作ってきた。古いには増改築の矛盾がいくらでもある。押入れを潰して廊にしたり、元の勝だけ残ったり、建築当初の図面と現の取りが致しないことも珍しくない。
それでも、このの自然さは偶然の積みねに見えなかった。
森川は建築士の倉田悠介へ図面を送った。学代からの友で、宅設計のほか古物件の改修診断もしている。
「これ、誰かを閉じ込めてたに見えないか」
話の向こうで倉田はしばらく黙った。
「そう見せたい図面には見える。
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ただ、図面だけで決めるな。第玄関の鍵の向きと、物置の奥を現で見たい」
「買主からの相談なんだ。内見できる」
「ならけ。空そのものより、そこへどうづけるかを見ろ。は部の数より線の方が嘘をつきにくい」
通話を切ったあと、森川は坂の本文を読み返した。
〈内見した産会社のは、昔の増改築の名残でしょうと言っていました。でも、図面を見ていると、誰かが入りしにくいように作ってある気がします。森川さんなら、どう見ますか〉
宅の取りには、むの都が表れる。子どもがければ収納が増え、朝が忙しければ洗面台が広くなる。老を考えれば段差が減り、当たりが欲しければ窓が増える。
では、誰にも使えない空を残し、活には便な第玄関をつくり、窓をではなく壁の内側へ向けるは、何を必としていたのか。
森川は内見を申し込んだ。
第章 られない
は写真以に普通だった。いの壁、さな庭、台分の駐。の向かいでは学が自転を止めて話しており、異様な過を像させるものは何もない。
仲介会社の担当者は、所者が源蔵という男性だったと説した。にくなり、そのは妻が施設へ入ったため空きになった。現の売主は親族で、建物の詳しい改修履歴までは分からないという。
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森川は玄関から順に歩いた。
問題の第玄関は、階側のい通の先にあった。靴箱もがり框もほとんどなく、来客を迎えるための造りではない。通は洗面の裏につながっているため、そこから入ったは居を通らずを洗い、着替えることができる。
扉には通常の錠のほか、古い面付錠がつ付いていた。
「の方、防犯に神経質だったそうです」
担当者はそう言ったが、森川は補助錠の位置を撮した。つとも内側から施錠する構造だった。
へ回ると、そのすぐ横にアルミ扉の物置がある。鍵は売主も持っておらず、内部は確認できなかった。壁のさを測ると、図面通りなら物置の奥に約メートル幅の空が残る。
階主寝の窓をけると、センチほど先にい壁がっていた。細い吹き抜けのにだけ空が見える。からこの窓は見えない。窓際のには机か棚を置いていた跡が残っていた。
森川は帰りの内で、ひとつの仮説をメモした。
族とは別の入。から見えない窓。普通の活線から切りされた側区画。そして用途の空。
過、このには所のに見せられない誰かがんでいたのではないか。
翌、倉田の事務所で写真を見せると、彼も完全には否定しなかった。
「別線を使わせるだけならあり得る。
染症患者とか、夜勤で活が違う族とか、介護が必なとか。
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