"三度目の金色の玉" 第3話
やがての主たちがそれぞれのへ戻り、福引所の周囲からがいなくなった。
森田だけが残った。
しゃがみ込み、抽選器の蓋をけてを拭いている。
俊夫は百の軒先からを隠すようにして見ていた。
しばらくすると、森田が周囲を見回した。
そのきに、俊夫の胸がざわついた。
森田は着のポケットへを入れた。
そして何かを取りした。
さな玉だった。
目にもが分かった。
。
俊夫は息を止めた。
森田はその玉を抽選器のへ入れなかった。
そばに置いてあったさな袋をき、の玉だけをそのへ入れた。
それから袋を折り、目たない所へ置いた。
俊夫はしばらくけなかった。
まで抱いていた疑いが、気に形を持ったようにえた。
等の玉を、ほかの玉と分けている。
なぜそんなことをする必があるのか。
福引が公平なら、等の玉も最初から抽選器のに入っていなければおかしい。
俊夫のに、千代が抽選器を回したの景が蘇った。
コロンと落ちたの玉。
鐘を鳴らす森田。
そして3続いた等。
「……やっぱりやってたのか」
から声が漏れた。
森田には聞こえなかった。
俊夫はそのをれると、すぐ数の主に声をかけた。
「今夜、寄りいをいてくれ」
「何かあったのか?」
「会に聞きたいことがある」
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俊夫の表を見て、皆それ以は聞かなかった。
その夜。
いつもなら末の売りしについて確認するだけの寄りいに、い空気が漂っていた。
誰かが戸を閉めた。
ストーブのでは薬缶がさく音をてていた。
森田は部の奥に座っていた。
俊夫は向かい側から、真っすぐ森田を見た。
「会」
森田が顔をげた。
「何だ」
俊夫はしだけ息をえた。
「今、福引の準備をしているところを見ました」
森田の表は変わらなかった。
「それがどうした」
「の玉を、ほかの玉と別にしましたよね」
部が静かになった。
主たちが斉に森田を見た。
俊夫は続けた。
「説してください」
誰かもをいた。
「林さんが来ただけ、等の玉を入れていたんですか」
森田は何も答えなかった。
「3ずっと?」
沈黙が続いた。
やがて森田は、ゆっくり息を吐いた。
そしてく答えた。
「ああ」
誰もかなかった。
森田はもう度言った。
「俺がやった」
その瞬、寄りいの空気が完全に変わった。
「本当にやってたんですか」
俊夫の声にはりが混じっていた。
森田は否定しなかった。
「林さんが福引に来ただけ、等の玉を入れていた」
「じゃあ3とも?」
「ああ」
「どうしてそんなことをしたんです」
俊夫はわずを乗りした。
「福引の景品は会1ので買っているんじゃないでしょう。
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俺たちのだって負担してるんです」
別の主も続いた。
「客だって券を集めているんですよ」
「最初から等がないがあるなら、福引にならないじゃないですか」
森田は黙って聞いていた。
言い訳をする様子もなかった。
主たちの声が止まると、森田はゆっくりちがった。
部の壁には、昔の商を写した写真が何枚か掛けられていた。そのうちの1枚へ歩み寄ると、額をして皆のへ持ってきた。
黒写真だった。
昭40代の商が写っている。
まだアーケードがなく、今より幅が広く見える。の板も古く、若い主たちが法被姿でに並んでいた。
俊夫もその写真を見たことがあった。
父親の若い頃の姿が写っているからだ。
森田は指先で、写真のの1を示した。
「このを覚えているか」
配の主たちはすぐ分かった。
若い俊夫も名だけはっていた。
「林信夫さん……」
「ああ」
森田は頷いた。
「千代さんの亭主だ」
写真の信夫は、今の千代よりずっと若かった。
法被の襟元をしけ、隣の男と肩が触れるほどくにっている。写真のでは笑っていた。
森田は額縁を膝のへ置いた。
「昭46ののこと、覚えてるだろ」
配の主たちの顔がしずつ変わった。
俊夫は黙って森田の続きを待った。
昭46の。
商の裏にあった乾物からがた。
当の商には造のがく、隣の建物との隔も狭かった。軒にが回れば、次第で何軒も続けて燃える危険があった。