"映画の夜に消える少女" 第6話
――汽は画面のどっちから来る?
――が横に流れるんだろうな。
弥平にとって、映画は単なる娯楽ではなかった。
そのものだったのかもしれない。
そして目が見えなくなった老のもとへ、かつて自分が映画を見せた7歳の女が、10に映画を届けるようになった。
正夫はへ戻る途、何度もそのことを考えた。
その夜、父へ話すべきか迷った。
だが結局、隠したままにはできなかった。
正夫から事を聞いた源蔵は、しばらく何も言わなかった。
囲炉裏のを見つめたまま、腕を組んでいる。
美代は父の向かいに正座し、鳴られるのを覚悟していた。
正夫が横から言った。
「男なんかじゃなかったんだ」
源蔵は答えない。
「弥平じいのところへってた。目が見えないから、映画の話をしに」
それでも黙っている。
美代は次第に居が悪くなった。
られる方がまだ楽だった。
「父ちゃん」
ようやく美代が呼んだ。
源蔵はい声で言った。
「何で最初から言わん」
「言うほどのことじゃないとったから」
「おはそうでも、周りは勝なことを言う」
「うん」
「夜に1でを歩くのも危ない」
「うん」
「……今度からは俺に言ってからけ」
美代は顔をげた。
源蔵は美代を見ようとせず、箸で炭をかしていた。
「くなとは言わないの?」
「言ってもくんだろ」
美代はし笑った。
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「たぶん」
「なら言うだけ無駄だ」
それが源蔵なりの許しだった。
「このは悪かった」
そんな言葉をにできる父ではなかった。
けれど美代には分だった。
次の巡回映画の。
美代はいつものように講堂の準備を伝い、映画案内を呂敷へ入れた。
へ戻ってから、源蔵へ声をかけた。
「父ちゃん、今から弥平じいのところってくる」
「そうか」
源蔵はそれだけ答えた。
美代が履を履こうとすると、玄関の隅に見慣れないものが置いてあることに気づいた。
懐灯だった。
古いものではあったが、ガラスはきれいに拭かれ、属部分まで磨かれている。
「これ?」
源蔵は背を向けたまま言った。
「が暗い」
美代は懐灯をに取った。
「使っていいの?」
「そのために置いたんだ」
「ありがとう」
源蔵から返事はなかった。
美代は笑いながらをた。
その夜から、裾へ向かう暗いには、さな懐灯のが揺れるようになった。
弥平は、その話を聞いて笑った。
「源蔵らしいな」
「ってるの?」
「昔からああいう男だ」
「謝らないの」
「謝れん男もいる」
美代はし考えた。
「でも、懐灯くれた」
「なら、それが謝ったってことだ」
美代は納得したように頷いた。
それからも巡回映画はに1度やって来た。
美代は映に弥平のへく。
映画案内にかれた内容を話し、見たから聞いた面を伝える。
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には正夫も緒に歩いた。
源蔵も、もう何も言わなかった。
の噂もやがて消えた。
正夫が事を話したわけではない。
ただ美代が毎回同じを歩いていることをる者が増え、弥平のへっていることがしずつ伝わった。
「なんだ、弥平じいのところか」
そう言われるようになると、それ以面がる者はいなくなった。
そして昭32の。
々のがしずつ変わり始めた頃、巡回映画班からいつもとは違うらせが届いた。
今は普通の劇映画だけではない。
県の倉庫を理していた際、古いフィルムが見つかったという。
戦に撮された、この方の記録映画だった。
撮されたのは昭13頃。
祭り。
養蚕。
学事。
田畑で働く々。
今から約20のや、その周辺の暮らしが映っているらしい。
「昔のが見られるぞ」
らせはすぐに広がった。
「あの頃なら、うちの親父もきてた」
「俺たちも子どもだったな」
寄りまで映を待ちしそうに話した。
いつもの映画以に、全体が騒がしくなった。
美代も掲示板のでいっていた。
「昭13頃……」
自分がまれるよりだ。
父も若かった。
そして、母のもきていた。
もしかしたら。
そんないが瞬浮かんだ。
だが、すぐに打ち消した。
のが映るわけではない。
母が偶然映っている能性など、ほとんどないだろう。
それより美代には別の迷いがあった。
その映画は、事の案内だけでは内容がほとんど分からなかった。