"映画の夜に消える少女" 第7話
弥平へ詳しく話すには、自分自が映像を見なければならない。
美代は初めて、映画の夜に裾へくべきかどうか迷った。
映当、学の講堂はいつも以に混雑した。
くから座布団を置いて席を取るもいた。普段は巡回映画へ来ない寄りたちまで、杖をつきながら族に連れられて入ってきた。
「昔のが映るらしいぞ」
「誰がるんだろうな」
そんな声があちこちから聞こえた。
美代は講堂の入にちながら、何度もを見た。
弥平のへかなければ。
そうう。
けれど今夜の映画を見なければ、弥平へ何も伝えられない。
いつものように案内にかれた話を届けるだけではりない気がした。
正夫が隣へ来た。
「今は残ればいい」
「でも、おじいちゃんが待ってる」
「話してやればいいだろ」
美代は迷った。
「全部見て、覚えて、それからけばいい」
正夫にそう言われ、美代はようやく頷いた。
「うん」
その夜、美代は初めて映始も講堂に残った。
源蔵もしれた所に座っていた。
やがて窓の黒布が閉じられ、講堂の灯が落ちた。
カタカタカタ……。
何度聞いても胸が鳴る映写の音。
美代はい幕を見つめた。
最初に映された作品が終わり、い休憩を挟んだ。
そして巡回映画班の男がへた。
「次は、県の保管庫から見つかった古い記録映像です。
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昭13頃にこの域で撮されたものとわれます」
講堂のがざわめいた。
「フィルムが古く、部見づらいところがありますが、当の祭りや暮らしの様子が残されています」
男ががる。
再び映写が回った。
画面がくり、何度かちらついた。
そして突然、20のが現れた。
「ああっ」
誰かが声をげた。
今よりが細い。
茅葺き根のが並んでいる。
農夫が馬を引いて歩いている。
映像は黒で、ところどころ傷が入り、画面もし揺れていた。
それでも、そこに映っているのは確かにこの方だった。
「昔のだ」
「まだ架け替えるだぞ」
講堂のあちこちから声ががる。
養蚕の面になった。
桑の葉をきな籠へ入れ、若い娘たちが運んでいる。
「あれ、きよさんじゃないか?」
「本当だ。若いなあ」
笑い声が起こった。
今では腰の曲がった老婆が、画面のでは髪を結った若い娘として歩いている。
学の面。
子どもたちが庭をる。
「あれは誰々の親父だ」
「顔がそのままだな」
昔をる々は、次々に名を呼んだ。
美代は議な気持ちで見ていた。
自分がまれるにも、同じを歩いたがいた。
同じを見げ、同じ季節を過ごしていた。
今は老になった々が、画面のでは笑いながらっている。
やがて祭りの面になった。
神社の鳥居。
段。
提灯。
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い浴姿の女性たちが、何も段をりてくる。
誰かがを振った。
別の娘が笑った。
そのの1を見た瞬だった。
美代の息が止まった。
どこかで見た顔。
いや、見たことがあるというより、自分自に似ている。
目元。
頬の形。
笑うの元。
「……え?」
美代はを乗りした。
隣にいた正夫もかなくなった。
しれた所に座っていた源蔵の表からも、笑みが消えた。
画面の女性は友らしい娘に何か言われ、恥ずかしそうにで顔を隠した。
その次の瞬、また顔をげて笑った。
美代の唇が震えた。
「……母ちゃんだ」
正夫がさく言った。
源蔵もスクリーンから目をさなかった。
それは、若い頃のだった。
美代がっている母の顔は、ほとんど1枚しかなかった。
仏壇の横に置かれた写真。
着物をきちんとえ、真正面を向いて座っているの写真だった。
昔の写真だから、笑ってはいない。
し緊張したようにを閉じ、背筋を伸ばしている。
美代にとって母親とは、いその静止した顔だった。
幼い頃の記憶も、々曖昧になっていた。
声。
の温かさ。
抱かれた覚。
覚えているつもりでも、それが本当の記憶なのか、から周囲に聞かされた話なのか分からなくなることがあった。
しかしスクリーンのにいるは違った。
いている。
笑っている。
友に何かを言われ、肩を押している。
段をし急いでり、元を見てまた笑う。
別の面では祭りの台のにち、何かをへ運んでいた。