"面接官の誤算" 第1話
俺の名は館達郎、24歳。学を卒業してから2が経つが、今の俺はまだ、自分がい描いていた所にはてていない。卒で入ったのは規模の材サービス会社で、採用補助や企業向けの研修運営を担当していたが、いつかもっときな組織で事の仕事をしたいといういを捨てきれず、休も採用や労務について勉を続けていた。
俺がそこまで事という仕事にこだわるようになった理由には、の男のがあった。12歳の兄、島次郎である。俺と兄の姓が違うのは、俺たちが幼い頃に両親が婚し、兄は父に、俺は母に引き取られたからだった。
もっとも、両親が別れたからといって、兄弟までれれになったわけではない。兄はになってからも頻繁に母のへ顔をし、学だった俺の宿題を見てくれたり、母が忙しいには夕を作ってくれたりした。父のへ遊びにきたいと言えば迎えに来てくれ、逆に俺が母のことで悩めば、父には言わず黙って話を聞いてくれた。
兄は昔から、とのにつのがうまかった。誰かだけをてるのではなく、それぞれの事を考えながら、誰も余計に傷つかない着点を探すことができる。両親が婚したも俺が父と自然に会い続けられたのは、違いなく兄が細かなところまで気を配ってくれたおかげだった。
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「兄貴みたいな仕事がしたい」
学の頃、俺がそう言った、兄は困ったように笑った。
「俺の仕事なんて、から見るほど格好いいものじゃないぞ。の問題ばっかりだし、嫌われることもい」
「それでも、を見る仕事だろ」
「まあな。でも事で番怖いのは、自分にを見る目があるとい込むことだ」
その言葉は妙に印象に残った。学歴、肩、会社名、話し方、装。そういう分かりやすいものだけでを判断し始めた瞬、事はを見る部署ではなく、を選別する部署になってしまうのだと兄は言った。
兄自は父が経営する島カンパニーで働き、現はグループ全体の事・経営管理にも関わっている。父の会社だから簡単に世したのではないかと言うもいるらしいが、俺は兄が学卒業、あえて部企業で経験を積み、10以かけて父の会社へ戻ったことをっていた。
だからこそ、俺は兄のようになりたかった。
父の会社へ入れてもらうという選択肢を考えたことがないわけではない。しかし、兄の名や父のを使って入社してしまえば、「社の息子だから」と言われ続ける気がした。母も「自分で選んだを歩きなさい」と言っていたため、俺は館という母の姓のまま就職活をし、自分の力で経験を積むことを選んでいた。
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そんなあるの夜、兄から珍しく話がかかってきた。
「達郎、転職する気はまだあるか?」
「あるけど、突然どうした?」
兄がにした会社名を聞いた瞬、俺は子からちがりそうになった。
都アドバンス株式会社。
業界ではらないの方がない企業で、にも複数の拠点を持ち、若社員の待遇がいいことでも名だった。島カンパニーのグループ企業のつではあったが、独がく、採用倍率もいことでられている。
以から俺が「いつか挑戦したい」とにしていた会社でもあった。
「今、途採用をやってる。受けてみないか」
「俺が?」
「そうだ」
俺は嬉しいより先に戸惑った。都アドバンスほどの企業なら、俺の学歴も現の勤務先も特別目を引くものではない。
「兄貴の名でねじ込むって話なら嫌だぞ」
そう言うと、兄は話の向こうで笑った。
「しろ。向こうにはおが俺の弟だなんて言も言わない。履歴も普通にして、普通に試験を受けてもらう」
それならやってみたいとった。ところが兄は続けて、しだけ声をくした。
「ただし、つ頼みがある」
最、都アドバンスの採用部について、親会社側へ気になる相談が何件か届いているという。応募者への対応が横柄だ、特定の学者ばかり優遇される、庭環境にまで踏み込んだ質問をされた。
どれも匿名にい相談で、会社側から正式に調べればすぐ警戒される能性があるため、まず通常の応募者がどんな扱いを受けるのか確認したいらしい。
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