"離婚後に生まれた息子" 第3話
鳴る力もなかった。
泣く気力もなかった。
ただ。
ここからたい。
それだけになった。
財産分与について最限の確認はした。しかし、当の由美は争うことに疲れていた。
婚届に判を押した。
健はししたような顔をした。
「由美も、これからしい考えたほうがいいよ」
由美は返事をしなかった。
そのから2週。
朝。
歯を磨いている途で吐き気がした。
最初は、婚の疲れだとった。
欲も落ちていた。
眠も乱れていた。
しかし。
何となく買った妊娠検査薬に、はっきり2本線がた。
由美はトイレのへ座り込んだ。
しばらくけなかった。
病院へく。
妊娠が確認された。
最に受けていた治療周期が、遅れて結果につながっていた。
「8週くらいですね」
医師から言われた。
由美は診察で泣いた。
嬉しい。
怖い。
信じられない。
いろいろなが混ざった。
そして。
最初にへ浮かんだのは。
健へらせるべきか。
だった。
スマートフォンを持った。
連絡先をいた。
指が止まった。
婚の。
健は、由美の体調を度も聞かなかった。
治療が最どうなったかも。
次の受診も。
何も。
枝は最まで、
「田に何も残せなかった」
と言った。
由美は。
今すぐらせることが怖かった。
子供が欲しくなかったからではない。
反対だった。
この子を、あのの価値観のへ戻したくなかった。
広告
まず無事に産む。
それから考える。
そう決めた。
それでも。
完全に黙っていていいのか。
由美は何度も迷った。
妊娠10週。
母子帳をもらった。
役所の帰りに、健の連絡先をいた。
《話があります》
そこまで入力した。
送れなかった。
消した。
妊娠12週。
初めて赤ちゃんの音を聞いた。
診察で、規則正しい速い音が響いた。
由美は涙がた。
病院をると。
またスマートフォンを持った。
今度も送れなかった。
理由は。
健への復讐ではない。
怖かった。
「俺の子なら戻ってこい」
と言われるのが。
「田の孫だ」
と枝が押しかけてくるのが。
何より。
妊娠したという事実だけで。
10の扱いが全部なかったことになるのが。
怖かった。
子供ができたから。
由美に価値がまれた。
そんなふうに扱われたくなかった。
妊娠14週。
由美は弁護士へ度相談した。
「元夫へ伝える義務はありますか」
はすぐには答えなかった。
「妊娠に今すぐらせなければならない、という単純な話ではありません。ただ、お子さんがまれれば父子関係について理が必になる能性があります」
「やっぱり言うべきですか」
「由美さんが今、何を番守りたいかです」
由美は腹へを置いた。
「この子を無事に産みたいです」
「なら、まずそこを優先していいといます」
は続けた。
「ただし、婚成から定期内にまれる子については、法律の扱いが複雑になることがあります。
広告
産から必な続きだけ確認しておきましょう」
由美は頷いた。
だけで。
「らせない」
と決めるのではない。
子供のを利にしない。
それだけは守る。
妊娠18週。
性別が男の子だと分かった。
母は笑った。
「元気ならどっちでもいいけど、男の子か」
父はし複雑な顔をした。
由美が聞く。
「何?」
「向こうの、男の子欲しがってたんだろ」
「うん」
「ったら来るな」
由美は頷いた。
「たぶん」
「怖いか」
「し」
父は何も言わなかった。
数分。
「何かあったら俺がる」
「なくていい」
「何で」
「私が話す」
父は娘を見る。
「そうか」
「うん」
「じゃあろにはいる」
その言い方が父らしかった。
へて全部解決するのではない。
必ならろにつ。
妊娠24週。
由美はの仕事を探し始めた。
すぐ働くためではない。
産。
子供と2で活していくため。
以のパート先へ連絡すると、は驚いた。
「戻りたいなら、落ち着いてからでいいよ」
「本当に?」
「由美さん、急に辞めたもお義母さんの介護だったでしょう」
「はい」
「ずっと働きたいって言ってたじゃない」
由美は、その言葉を忘れていた。
自分には仕事がない。
健がいなければ活できない。
婚の頃。
そうっていた。
でも。
戻れる所はしずつあった。
妊娠30週。
健のSNSを偶然見た。
共通のがタグ付けしていた写真。
美と健。
隣同士。
会社の事会。
そのろに枝までいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 481 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 615 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 441 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 294 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3040 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 3096 -
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1865 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251