"席次表から消された母" 第2話
奈津子はち止まった。
図館の仕事を終え、駅へ向かっていた夕方だった。
「亮の……」
「はい。産んだ母親です」
真理子はしを置いた。
「どうしても、結婚式のに奈津子さんへお伝えしたいことがあって」
奈津子は駅のベンチへ座った。
「何でしょう」
話の向こうから返ってきた言葉は、奈津子が像していたものとまったく違った。
「私、あなたから母親の席を譲ってもらいたいなんて、度も言っていません」
奈津子は何も言えなかった。
「むしろ、雅さんには断りました」
「断った?」
「はい」
真理子の声がし震えた。
「25育てたをどかして、私が母親の顔をして座れるわけがないって」
奈津子は席次表をいした。
雅は言った。
《向こうも、それを望んでる》
「じゃあ、どうして……」
「それを私も聞きたいんです」
真理子は続けた。
「それと、奈津子さんにつ確認したいことがあります」
「何ですか?」
い沈黙のあと。
真理子は言った。
「私が亮にを送り続けていたこと、本当に何も聞いていませんか」
奈津子の指先がたくなった。
「?」
「毎です」
真理子の声がくなった。
「亮が5歳から、なくとも14歳になるまで」
奈津子はちがることができなかった。
そんなを。
度も見たことがなかった。
奈津子が雅とりったのは31歳のだった。
友がいたさな事会で紹介された雅は、当36歳。
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宅設備会社の営業をしており、数はくなかったが、穏やかで責任のあるに見えた。
婚歴があることも、5歳の息子がいることも、最初から聞いていた。
「の奥さんは?」
奈津子が尋ねた、雅はし嫌そうな顔をした。
「男を作ってていった」
詳しく聞くのは悪い気がして、それ以追及しなかった。
亮は最初、奈津子を警戒していた。
挨拶をしても返事をしない。
奈津子が作った料理にもをつけない。
夜になると祖母の文の部へき、そこで眠ることもかった。
文は雅の母で、同じ内にんでいた。
「無理に母親になろうとしなくていいから」
雅は言った。
「が経てば慣れるよ」
奈津子も、そのつもりだった。
ところが結婚して3ヶほど経ったの夜、亮がをした。
雅は県へ張。
文には話がつながらない。
奈津子は亮を背負うようにして夜救急へ連れてった。
診察を待っている。
亮はで赤くなった顔を奈津子の肩に預け、さな声で聞いた。
「帰らない?」
「どこに?」
「奈津子さん」
奈津子はが分からなかった。
「僕が病気だから、嫌になって帰らない?」
その初めて。
亮が何を怖がっていたのかをった。
奈津子は亮の額へを当てた。
「帰るよ」
亮の顔が固くなった。
奈津子は続けた。
「でも亮も緒に帰るの。病院終わったら、でに帰ろう」
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亮はしばらく奈津子を見ていた。
その夜を境に。
しずつ変わった。
翌。
亮は初めて奈津子を、
「母さん」
と呼んだ。
本は呼んだことに気づいていなかった。
朝、ランドセルを背負いながら、
「母さん、体操どこ?」
と言っただけだった。
奈津子は返事をするまで数秒かかった。
「洗面所の横」
それだけ答えた。
嬉しかった。
でも。
その言葉を奪い取るようなことはしたくなかった。
亮自が選んでくれた呼び方なのだとった。
奈津子は結婚、百貨の文具売で正社員として働いていた。
結婚もしばらく続けたが、亮が学2の、学へくになると腹痛を訴えるようになった。雅は「子どもにはよくある」と言ったが、奈津子は勤務を減らし、やがて退職した。
仕事を辞めることに迷いがなかったわけではない。
それでも当は。
亮がして学へけるようになることの方が切だった。
数。
図館の契約職員として働き始めた。
収入は以よりずっと減った。
それでも。
に戻れば亮がいる。
それでいいとっていた。
学2の。
亮が突然、学へけなくなった。
いじめではなかった。
成績も悪くない。
本も理由が分からなかった。
朝、制を着る。
玄関までく。
そこで体がかなくなる。
雅は最初、
「くだけけ」
と言った。
文は、
「甘やかしすぎじゃないの」
と奈津子へ言った。
奈津子にも正解は分からなかった。
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