"席次表から消された母" 第5話
でも母さんが何通か止めてたことまではらなかった」
「何通か?」
奈津子は23通の封筒を見る。
「これを何通かって言うの?」
雅は黙った。
「養育費を受け取ってたことは?」
夫の顔がわずかに変わった。
それで分かった。
「ってたんだ」
「亮のためのだろ」
「どうして私には言わなかったの?」
「言う必あるか?」
奈津子はを疑った。
「私は緒に計をやってたでしょう」
「あのは別だよ」
「真理子さんは息子を捨てたって、私に言ったよね」
「実際、度はていった」
「でも毎お送ってた」
「送れば母親なのか?」
話がずれていく。
奈津子は夫を見ながら。
このは25から。
同じ方法で話してきたのかもしれないとった。
都の悪い事実を。
つずつ切りす。
真理子がをた。
それは本当。
病気だった。
それは言わない。
養育費を送った。
それも言わない。
会いたがった。
それも言わない。
そして最に残った、
《子どもを置いてていった》
という部分だけを。
事実として使う。
「調もしたんだって?」
雅が顔をげた。
「真理子から聞いたのか」
「類も見た」
奈津子はコピーをテーブルへ置いた。
「私との庭を定させるために、会わせないっていてある」
「亮が定だったからだよ」
「その、亮に聞いた?」
雅は答えなかった。
「私には?」
「何を」
「真理子さんからが来てる。会わせない方がいいとうかって、度でも聞いた?」
広告
夫は黙った。
奈津子は続けた。
「聞いてくれればよかったのに」
声は。
自分でも驚くほど静かだった。
「私、反対なんてしなかった」
「奈津子」
「亮が会いたいなら会えばいいって言ったとう」
「そんな簡単じゃない」
「簡単にしたのはあなたでしょう」
雅が眉を寄せた。
「どういうだよ」
「真理子さんは男を作って亮を捨てた。そういう話にして」
「から男がいたのは本当だ」
「婚してからでしょう」
雅はを閉じた。
真理子は。
婚から1半。
治療を受けていた期にりった男性と交際した。
そのとは結局結婚しなかった。
雅はそれをり。
《やっぱり男がいた》
と周囲へ話した。
系列が。
逆だった。
「母さんも真理子を信用してなかった」
雅は言った。
「病気でして、亮を置いていったんだ。母さんが会わせたくないとうのも分かるだろ」
「分かることと、勝に決めることは違う」
「何で今さらおが真理子の方するんだよ」
奈津子はその言葉で。
はっきり分かった。
夫のでは。
まだ。
奈津子と真理子は。
つの席を奪いう女なのだ。
「方とか敵とかじゃない」
「じゃあ何だよ」
「りたいだけ」
奈津子は23通のへ目を落とした。
「私が25、何を信じてきてきたのか」
雅はしばらく黙った。
やがて。
さな声で言った。
「奈津子と結婚した、やっと普通の庭になったとったんだ」
広告
奈津子は顔をげた。
「普通?」
「亮も落ち着いた。母さんもんでた。おも亮をがってくれた」
「だから?」
「そこへ真理子が戻ってきたら、また全部おかしくなる気がした」
初めて。
本音らしい言葉だった。
奈津子は夫を見た。
「私を守るためじゃなかったんだね」
雅の顔が固まった。
「庭の形を守りたかっただけ」
「同じだろ」
「違うよ」
奈津子は即座に答えた。
「私は、その庭のにいただから」
夫は何も言えなかった。
奈津子は24に真理子が自分へ送ったを見せた。
雅は。
そのについては本当にらなかったらしい。
「母さん……」
呟いた。
でも。
奈津子には。
もう文を悪者にする気にもなれなかった。
文は確かにを隠した。
でも。
雅は。
それをろうとしなかった。
都が良かったから。
奈津子が母親になり。
亮が真理子を忘れ。
族が静かに続くことが。
「それで今回、どうして真理子さんを呼んだの?」
奈津子が聞いた。
雅はすぐに答えなかった。
「今さら罪悪?」
「違う」
「じゃあ何?」
夫は目を伏せた。
「健康診断で引っかかった」
奈津子は初めて聞いた。
腺に腫瘍が見つかり。
幸い期の能性がいが。
翌、詳しい検査と治療を受ける予定だという。
「何で言わなかったの」
「まだしたことない」
雅は苦笑した。
「でもさ。病気かもしれないって言われたら、昔のこと考えるだろ」
文もんだ。
亮も結婚する。
自分も60歳を過ぎた。
雅は。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 201 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111 -
完結第21話
母を遠ざける姉の嘘
長野で一人暮らす母の介護を一手に担う姉から「母の体調が悪化するから来るな」と言われ、私は五年間帰省を控え、毎月五万円の仕送りを続けていた。だがある夜、母から五年ぶりに直接電話が入る。「まだ怒ってるの。あんたが私の顔も見たくないと言っていたと姉から聞いた」と母は怯えていた。直後に受話器を奪った姉は「母の被害妄想だ」と言い放つ。不審に思った私は姉に告げず始発の新幹線に乗り、五年ぶりに実家の引き戸を開けた。兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|介護3.2万字5 166