"家族写真の左端" 第2話
にはい台に貼られた写真を持っている。
顔が妙に悪かった。
清郎が帳の奥から父を見ていると、源蔵は番へい声で言った。
「森川写真館へ使いをせ」
「写真師を呼べ」
番が驚いて顔をげた。
「何かございましたか」
源蔵は答えなかった。
そのまま族を座敷へ集めた。
志乃も、きぬも、子どもたちも何事かと顔を見わせながら座る。
源蔵は写真を畳のへ置いた。
「よく見ろ」
清郎はを乗りした。
父。
母。
自分。
妹たち。
祖母。
全員が、数に写真館でっていた通りの位置に写っている。
「何がおかしいんですか」
清郎が言いかけただった。
志乃が息をのんだ。
「……あなた」
その線の先。
写真の番。
の柱を描いた背景のくに、族の誰とも違うがっていた。
若い男だった。
20代半ばほどに見える。
着流し姿で、こちらをまっすぐ見ている。
だが、姿は奇妙にかった。
族のようにはっきり写っておらず、その向こうにある背景が透けて見えるようだった。
清郎は写真へ顔をづけた。
「誰ですか、この」
誰も答えない。
志乃は首を振った。
「こんな、撮るにはいませんでしたよね」
妹たちもそうに顔を見わせた。
撮にいたのは、瀬の族と写真師、それに助だけだった。
男が入り込めるような状況ではなかった。
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そのだった。
ぱさり、と軽い音がした。
祖母のきぬが持っていた扇子が畳へ落ちた。
「おばあさま?」
清郎が振り返る。
きぬは、写真のの若い男だけを見ていた。
唇がわずかに震えている。
そして、ほとんど声にならないほどさく呟いた。
「……宗吉」
次の瞬、きぬの体がきく傾いた。
「おばあさま!」
志乃の叫び声が座敷に響いた。
清郎と源蔵が同にを伸ばし、倒れかけたきぬの体を支えた。奉公が呼ばれ、座布団をし、きぬはすぐ隣の部へ寝かされた。
幸い、識はすぐに戻った。
ただ顔は青く、清郎が何度声をかけても、きぬは目を閉じたまま何も答えようとしなかった。
その、源蔵は写真を裏返して座敷の隅へ置いた。
清郎には、その父の仕の方が気になった。
「父」
源蔵は振り向かない。
「さっき、おばあさまは宗吉と言いましたよね」
返事はなかった。
「写真のをっているんですか」
「清郎」
ようやく源蔵が振り返った。
その表は、商売でっているよりも厳しかった。
「子どもがをすことじゃない」
清郎はそれ以言えなくなった。
しかし、胸のには疑問が残った。
宗吉。
その名を、自分は今まで度も聞いたことがない。
親戚にも奉公にも、宗吉というはいなかったはずだった。
やがて源蔵は、裏返していた写真をに取った。
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「これは処分する」
志乃が驚いて顔をげた。
「せっかく族みんなで撮ったのに?」
「撮り直せばいい」
「でも……」
「この写真は残さない」
源蔵は言い切った。
さらに番へ向かって言った。
「森川が来たら、乾板も全部処分させる」
清郎はわずを挟んだ。
「どうしてそこまでしなければならないんですか」
父の目が向いた。
「撮のに誰かが入っただけかもしれないじゃないですか」
「入っていない」
「では、なぜ——」
「もういい」
源蔵の声はかった。
それ以の質問を許さない声だった。
午になると、森川写真館の主・亀吉が瀬へやって来た。
いつもは穏やかな表の男が、そのは額に汗を浮かべ、玄関先から何度もをげていた。
「このたびは、本当に申し訳ありません」
源蔵は亀吉を座敷へ通した。
族ので事を聞くつもりはなかったらしく、最初は清郎たちをがらせようとした。しかし志乃が「私も聞かせてください」と言い、結局、清郎もしれた所へ座ることを許された。
亀吉は問題の写真をに置いた。
「まず申しげておきますが、撮の際にこの方が入り込んだわけではございません」
「それは分かっている」
源蔵の返事はたかった。
「では、何だ」
亀吉は慎に説を始めた。
当の写真館では、撮した像をガラス乾板に残し、その乾板から印画へ焼き付けて写真を作る。
今回、助が乾板を理する際に違いがあったらしい。
「しく撮した乾板と、古い乾板の枚がなったままになっておりました」
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