"祖父を迎えた家に福が来た" 第5話
それでも匠は、
「おじいさん、福の神なんじゃない?」
と笑っていた。
そんなある。
祖父のもとへ、の弁護士から連絡が入った。
50以、ほとんど音信通だった祖父の弟がくなったという。
祖父の弟は若い頃に故郷をて事業を始め、その成功したらしい。
方で結婚はせず、涯独。
子供もいなかった。
兄弟姉妹ので命なのは祖父だけだった。
相続について詳しい説を受けた、私たちは言葉を失った。
祖父が受け取ることになった財産は、およそ3億円。
「3億……?」
私はわず声をげた。
祖父本は、なほど静だった。
「弟のやつ、そんなに持っとったんか」
私の方は、正直しいがってしまった。
旅ならどこへける。
もっと広いに引っ越せるのではないか。
祖父に良いベッドを買ってあげたい。
考えれば考えるほど像が膨らむ。
そんな私を、匠が呆れ顔で見た。
「恵子」
「何?」
「おじいさんのおだからな」
「分かってるよ」
「さっきから自分の宝くじが3億当たったみたいな顔してるぞ」
「してないって」
「してる」
祖父が横で笑った。
しかし数。
祖父が突然、私たちへ言った。
「このな」
「うん」
「寄付しようとう」
私は本気で聞き返した。
「全部?」
「全部じゃ」
弟は、財産を社会のために使いたいと周囲に話していたらしい。
ただし、法に効な遺言は残されていなかった。
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祖父は弟のを尊したいと言った。
「わしが急にもろうても、使い切れん」
「それに、弟が働いて作ったじゃ。弟のうようにしてやりたい」
私はし寂しい気持ちもあった。
けれど、それ以に祖父らしいとった。
3億円は元自治体へ寄付されることになった。
額がきいため、自治体は謝状の贈呈式をきたいと申した。
祖父は「目ちたくない」と困っていたが、最終には席することになった。
式典当。
私も匠も仕事で会へけなかった。
昼休み。
職の休憩で元ニュースをつけると、緊張で顔を張らせた祖父が映った。
から謝状を受け取り、祖父が目録を渡す。
これで終わるはずだった。
ところが。
画面の奥が突然騒がしくなった。
誰かが警備員を振り切るようにへてくる。
「ちょっと待ちなさいよ!」
聞き覚えのある女性の声だった。
カメラが揺れた。
そして画面の隅に、見覚えのある男女が映った。
「その3億円は私たちのものよ!」
兄嫁だった。
その直、継映像は慌てたようにスタジオへ切り替わった。
午の仕事は、ほとんどにつかなかった。
どうして兄夫婦が会にいたのか。
そもそも祖父が3億円を相続したことを、私たちは兄夫婦へ伝えていない。
寄付をすることも教えていなかった。
仕事が終わると、私は急いで帰宅した。
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「おじいちゃん!」
玄関をけると、祖父は何事もなかったように居でお茶をんでいた。
「おお、お帰り」
「今の式典!」
祖父はきょとんとする。
「お兄ちゃんたち来たでしょ?」
すると突然、声で笑いした。
「あはは。何でっとるんじゃ」
「テレビに映ってたの!」
「そうかそうか」
祖父はどこか楽しそうだった。
「あいつらが急にてきてのう。3億よこせとか寄付を止めろとか、騒ぎじゃった」
「おじいちゃん、怖くなかった?」
「警備のがいっぱいおったからな」
兄夫婦は式典のを妨げ、警備員によって会のへ連れされたという。
祖父は、
「元気なもんじゃ」
と事のように笑った。
私は呆れながらも、祖父が無事だったことに胸を撫でろした。
そのは、兄夫婦も恥をかいたのだから、もうおとなしくなるだろうとっていた。
しかし夜になって帰宅した匠は、険しい顔でスマートフォンを差しした。
「恵子、これ見た?」
ネットニュースだった。
《3億円寄付の贈呈式で親族が乱入》
記事には、式典を妨害する男女の写真が掲載されていた。
顔にはぼかしが入っている。
それでも祖父の名が公表されている以、「孫夫婦」とかれれば、周囲のには分かってしまう。
しかも記事が拡散されるにつれ、個を特定しようとするき込みまで増えていた。
私は背筋が寒くなった。
こういうのインターネットの速さは、恐ろしい。
兄夫婦が祖父の相続をった経緯も、その分かった。
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