"隠し子を知っていた55歳妻" 第4話
正典は、
「母さんのことが落ち着いたら」
と答えた。
母親の介護。
それが便利な理由だった。
実際に介護しているのは律子なのに。
その妻を。
正典は婚できない理由として使った。
芳との6は。
律子にとって。
苦しいだけのではなかった。
脳梗塞の。
最初の半は。
芳自が番荒れていた。
それまで自分で何でもしていたが。
呂に入るにも。
靴を履くにも。
のを借りなければならない。
「もういい」
「今はお呂入らない」
「そんなにべられない」
律子へ当たるもあった。
ある。
入浴介助。
芳が突然泣いた。
「ごめんね」
律子は驚いた。
「何がですか」
「こんなことまで嫁にやらせて」
「嫁とか今関係ないですよ」
「でも」
「私だって、いつか誰かに伝ってもらうかもしれません」
芳は。
そのから。
しずつ律子へ本音を話すようになった。
若い頃。
夫に逆らえなかったこと。
正典を息子だからと甘やかしたこと。
正典がさい頃。
勉ができれば何でも許してきたこと。
「私も悪かったんだよ」
と何度か言った。
律子は。
その頃。
子供がいないことをまだ引きずっていた。
芳は。
昔は孫を急かした。
でも。
70代半になって。
ある。
言った。
「子供のこと、昔いろいろ言って悪かったね」
律子は驚いた。
「急にどうしたんですか」
「取ると、言わなくていいことまでいすんだよ」
広告
「もういいですよ」
「よくない」
芳は言った。
「あんた、ずっと傷ついてたろ」
律子は。
否定できなかった。
夫から。
そんなふうに言われたことはなかった。
正典は。
「母さんも孫欲しかっただけだから」
で終わらせた。
芳本だけが。
最に謝った。
だから。
律子は。
介護を「嫁だから」続けていたわけではない。
芳が。
族になったから続けていた。
正典は。
その関係をほとんどらなかった。
デイサービスから帰る。
芳が笑って。
「今は律子とプリンべる」
と言っても。
正典は、
「糖分取りすぎるなよ」
としか言わない。
誕。
律子がさな束を買った。
芳は何度も眺めた。
正典は。
夕方まで誕を忘れていた。
「母さん今だっけ」
その言に。
芳は笑った。
「おは昔からそうだよ」
らなかった。
でも。
律子には分かった。
し寂しかった。
あるの。
芳が形科から帰るので言った。
「律子」
「はい」
「もし私がいなくなったら、あんたここにいるの?」
律子は返事に困った。
「どうしたんですか」
「なんとなく」
「正典さんと?」
「夫婦ですから」
芳は窓のを見た。
「夫婦だからって、緒にいなきゃいけないとは限らないよ」
律子は。
その言葉を聞いた。
義母がどこまでっているのか分からなかった。
そのも。
芳は具体には聞かなかった。
ただ。
「自分のくらい、自分で分かるようにしときな」
広告
「も確認しときな」
と。
何度か言った。
律子は。
それが単なる老の話ではないとじていた。
芳の体調が悪化したのは、そののだった。
欲が落ち。
歩ける距もくなった。
律子は介護サービスを増やした。
訪問護。
週2回のデイサービス。
通院。
正典は言った。
「かかるな」
律子は聞いた。
「じゃあ、あなたが週1回でもお呂伝えます?」
正典は黙った。
「仕事あるから」
「再雇用で週4でしょう」
「だからって介護は無理だよ」
「私は6やってます」
正典は嫌そうに聞を広げた。
そのの夕方。
正典は「会社のとむ」と言ってかけた。
美のだった。
律子は芳の体を拭き、着替えをさせた。
芳は疲れた顔で言った。
「正典は今も遅いのかい」
「そうみたいです」
「今も、あの子のところかい」
律子のが止まった。
「お義母さん?」
芳は井を見たまま言った。
「寄りはね、はっても、を見る目までるわけじゃないよ」
律子は何も言えなかった。
芳は続けた。
「に駅で見たろ」
律子の胸が詰まる。
「あの、似てるですって」
「私が気づいてないとったかい」
律子は黙った。
「悪かったね」
「どうしてお義母さんが謝るんですか」
「私の息子だから」
「お義母さんがしたことじゃありません」
芳はし笑った。
「律子は、昔からそうだ」
「何がですか」
「の分まで背負う」
律子はタオルをたたんだ。
芳が言った。
「あんたはもう、自分のためにきなさい」
律子は初めて。
芳ので泣いた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 475 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 614 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 3035 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第32話
不妊を理由に別れた元妻が、機内で双子を抱いていた
5年前、妻・小百合に「ほぼ不妊」という診断が下された瞬間、俺は後継ぎを求める父の言葉に従い、彼女へ離婚届を突きつけた。あの選択は正しかった――そう信じて生きてきた俺の前に、ファーストクラスで小百合と、自分に瓜二つの幼い双子が現れる。 真相を追ううち、俺は恐ろしい事実に辿り着く。不妊診断そのものが偽りであり、小百合は両親まで脅され、何も言えないまま俺の前から消えていた。そして、その全てを裏で仕組んだのは、俺が誰より尊敬してきた父だった。 さらに、本当に問題を抱えていたのは小百合ではなく俺自身で、双子は離婚直前に宿った俺の子供だと判明する。 妻を捨て、子供たちの5年間まで奪ってしまった俺は、もう父の作った「正しい人生」に従うつもりはない。失った家族と向き合い、父が守り続けてきた巨大な権力と秘密に、自分の手で決着をつけると決めた――。夫婦|熟年離婚4.9万字5 8453 -
完結第10話
妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった
「貧乏な漁師なんて絶対に嫌」――妹・美咲が鼻で笑って断った縁談を、35歳の私・香織が代わりに受けることになった。幼い頃から何でも妹を優先され、「我慢できる姉」として生きてきた私にとって、それは初めて自分で選んだ人生だった。 相手の総一郎は、古い家と軽トラックで暮らす不器用な牡蠣漁師。ところが島では誰もが彼に頭を下げ、格式高い老舗料亭まで最上級の敬意を払う。やがて大嵐で加工場が壊れ、会社が存続の危機に陥る中、私は書店員時代に培った「名前と物語を届ける力」で直売所を立ち上げる。そんな矢先、総一郎の本当の立場を知った母と美咲が現れ、「その縁談は本来、美咲のものだった」と言い出す。そして料亭に掛けられた、値段も生産者名もない古い「牡蠣」の木札が、夫にも知らされていなかった過去へとつながっていく――。夫婦|修羅場1.4万字5 747 -
完結第13話
十年の沈黙と離婚届
明治から続く旧家・宗方家に嫁ぎ、十年間「無能な嫁」と蔑まれながら耐え忍んできた白木咲子。義父からは冷え切った古米を押し付けられ、義母や義姉からは下女のように扱われ、夫の孝幸は浮気を重ねては嘲笑を浮かべる日々。ある激しい雷雨の夜、孝幸は朱肉の鮮やかな『離婚届』を卓上に放り出し、「子供も産めぬ役立たずは今日限りで出て行け」と冷酷に追放を宣告する。 だが、咲子の指先は一片も震えていなかった。彼女が着物の帯の間へ静かに滑り込ませたその紙切れこそ、十年間待ち続けた反撃の「合図」だったのだ。 宗方一族四十二人が寄生し、高給を貪る企業群。その頂点に君臨する巨大財閥「白木グループ」の真の支配者は誰なのか――。翌朝、受話器から呼び出された直通秘書ライン。すべてを奪ったと信じ込む傲慢な一族に、音もなく下される苛烈な審判とは。夫婦|修羅場1.9万字5 1124