"帰る家は、ちゃんとあった" 第8話
「あなた、私の仕事について度でも詳しく聞いたことあった?」
順が黙った。
「ずっと『でパソコンを触ってるだけの仕事』だとってたでしょう」
「それは今関係ないだろ!」
「関係あるとうけど」
私は順を見た。
「兄は私から、あなたとお母さんにされたことを全部聞いてる」
順の顔が歪んだ。
「だから入居を断ったんじゃない?」
「ふざけるな!」
「私に鳴っても仕方ないでしょう」
すると順は、さらに信じられないことをにした。
「それで腹がって、施設の職員にちょっとをしたら、げさに騒がれたんだよ!」
「……をした?」
「腕を掴んだだけだ!」
私は呆れた。
「それ、暴力でしょう」
「違う! 本当にちょっと掴んだだけだ!」
「それでも相が嫌がっていたなら駄目でしょう」
順は興奮したまま続けた。
「取り押さえられて恥かいたし、まで請求されたんだぞ!」
私はが痛くなった。
「普通なら警察汰になっていてもおかしくないわよ」
「何で俺が悪いみたいに言うんだ!」
「悪いでしょう」
順は真っ赤になった。
昔なら、その顔を見ただけで私は言葉をみ込んだだろう。
今は違った。
「それで何のために来たの?」
私は聞いた。
順の勢いが急にくなった。
「おの兄貴と話をさせてくれ」
順はそう言った。
「母さんをあの施設に入れたいんだ」
「無理よ」
私は即答した。
「兄はあなたと話す気なんてないとう」
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「頼むよ」
「入居を断られたに職員へまでしたんでしょう? 私から取りなす話じゃない」
「俺、もうどうにもならないんだよ!」
順が声を震わせた。
「母さんと緒に暮らすの、本当にきついんだ」
私は黙って聞いた。
「朝から文句ばっかりだし、仕事から帰ってもあれしろこれしろって言われる。飯も作らないといけないし、のことも全部俺がやらなきゃならない」
私はわず目を細めた。
それは以、私がしていたことだった。
義母の介護。
事。
仕事。
その全てを私1へ押しつけておきながら、順は「にいるんだからできる」と言っていた。
「もう疲れたんだ」
順は玄関先で力が抜けたように座り込んだ。
「頼む。どうにかしてくれ」
ほんのしだけ、れだとった。
かつては夫婦だっただ。
3緒に暮らした。
楽しかった期がなかったわけではない。
しかし、そのと「戻ること」は別だった。
私は首を横に振った。
「私がどうにかする理由はないわ」
順が顔をげた。
「霞……」
「私はもうあなたの妻じゃない」
「でも……」
「お母さんの介護は、あなたとお母さんで考える問題でしょう」
「そんなたいこと言うなよ」
その言葉に、私は苦笑した。
「私が介護で苦しんでた、あなたは何て言ったか覚えてる?」
順は何も言わない。
「『母さんに余計なストレスをかけるな』『おに問題があるんじゃないか』って言ったのよ」
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「……」
「だから今度は自分でやって」
順の顔が青ざめた。
「もう帰ってくれる?」
「霞」
「これ以ここで騒ぐなら、本当に警察を呼ぶわ」
私の決が変わらないと分かったのだろう。
順はしばらく俯いていたが、やがてちがった。
背を丸め、を引きずるようにの方へ歩いていく。
私はその姿を見送った。
以、私を見ろしながら「帰るがあるならていけ」と笑っていた男と、同じには見えなかった。
玄関を閉めた。
リビングへ戻り、窓をける。
澄んだが部へ入ってきた。
私はく息を吸った。
これで本当ので終わった。
もう順にも義母にも振り回されない。
それから数週。
兄から連絡があった。
「順さん、別の施設を探したらしいぞ」
「そうなんだ」
「入居費用がかなり必になったみたいだ」
条件のう別の施設へ義母を入れるため、順は額の費用を用しなければならなかったという。
その結果、借を抱えたらしい。
私はただ聞いた。
義母自も、兄の経営する施設にどうしても入りたかったようで、直接話をして再度お願いしたという。
だが断られた。
兄のところでは入居を認めなかった。
義母は激したらしい。
そして、そのりは順へ向けられた。
しい施設へ入ったも、何かにつけて順へ文句を言っているという。
順の活もきく変わった。
施設の費用と借の返済がくのしかかり、それまでんでいたを引き払うことになった。
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