"出産予定日2日前、家を追い出された" 第8話
その声を聞いた瞬、腹の奥をこれまでにないい痛みがった。続いてシーツのへ、温かいものが広がっていく。
助産師がナースコールに駆けつけ、計を確認した。
「破しています。本さん、赤ちゃんが来ますよ」
第9話 まれたの選択
破から30分もたたないうちに、陣痛の隔は急にくなった。私は分娩へ運ばれ、い井灯のですりを握る。波のような痛みが来るたび、玄関先のたいや健の声まで緒によみがえった。
「息を止めないで。赤ちゃんも頑張っていますよ」
助産師の声にわせ、ゆっくり息を吐く。胎児拍の速い音が内に響いていた。予定まであと2だった夜、私は赤ん坊と緒に捨てられた。それでもこの子は、暗いからここまで私についてきてくれた。
痛みのには、助産師が温かいタオルで汗を拭き、をしずつませてくれた。健は妊娠、「産なんて誰でもしている」と度も両親学級へ来なかった。今、名もらなかったたちが私の呼吸を見守り、声を掛け続けてくれる。その優しさに触れるたび、族という言葉を血縁や戸籍だけで考えていた自分に気づいた。
分娩のでは、父が杖を両で握って待っていると聞いた。3れていたを埋める言葉はまだ見つからない。
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それでも今は、ドアの向こうに帰れる所がある。そのが、次の痛みに耐える力をくれた。
1726分、細くい産声ががった。
「女の子です。2980グラム、元気ですよ」
胸のへ乗せられた娘は、濡れた髪を額に貼りつけ、さな指で私の肌をつかんだ。温かく、く、確かにきている。私は初めて声をげて泣いた。
「ごめんね。怖いいをさせて……でも、もう丈夫だから」
娘の背を撫でると、あれほど荒れていた呼吸がしずつ落ち着いた。守るという言葉は、耐えることではない。危険な所かられ、助けを求め、必なら戦うことなのだと、ようやく分かった。
赤い顔で泣く娘の首には、私の氏名と刻を記したバンドが巻かれた。助産師が読みげた内容を、私は眠気に負けないよう2度確認する。健たちが病院の予約や保険報まで変えようとした以、どんなさな続きも任せにはできなかった。
面会許をしたのは父だけだった。ガラス越しに孫を見た父は、経営会議でも崩したことのない顔をくしゃりとゆがめた。
「由美。まれてきてくれて、ありがとうと伝えてくれ」
「自分で言って。これから何度でも会えるから」
父は目元を押さえ、くうなずいた。私が結婚を選んだことも、父が反対したことも消えない。けれど、今から始め直すことはできる。
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を洗い、護師から抱き方を教わった父は、恐る恐る娘を腕へ乗せた。いつもまっすぐだった背をさく丸め、「軽いな」と何度もつぶやく。2980グラムの命を抱く姿を見て、私は3、自分だけでなく、このからも族になるを奪っていたのだとった。
病へ戻ると、しい端末には健から19件の着信が残っていた。娘を気遣う文面は1つもない。《受理申を取りげろ》《監査を止めさせろ》《母さんに恥をかかせるな》。最には、《子どもは本の孫だ。勝に隠すな》とかれていた。
私は画面を保し、藤原へ転送した。病院には改めて、健と佳代を面会させず、に関する報も伝えないよう依頼する。娘の寝息を聞きながら、自分ので許をせることに、静かな堵を覚えた。
夜20、藤原からけ渡し通の最終案が届いた。の単独所者が私であること、正な担保設定を試みたこと、今14以内に自主退を求めることが記されている。制退には別の続きが必だが、なくとも、あのを自由に使い続けてよいという私の黙認は終わる。
「これでしてください」
子署名を終えると、娘がさくじろぎした。私は淡い緑の産着をベッド脇へ置き、黄いおくるみの写真を証拠フォルダへ移す。
翌朝10、藤原と黒川がを訪れ、健と佳代へ通を直接渡すことになった。
退期限は、14だった。
第10話 14の退通
翌朝10ちょうど、玄関の防犯カメラに藤原と黒川の姿が映った。
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