"5人目だけが若かった" 第1話
1999722、午540分。
岐阜県青川の空から、3り続いたがようやくがった。けれどの々にとって、が止んだことは災害の終わりをしていなかった。
晩、裏から流れ込んだが田畑をのみ込み、へ通じる細いには腰のさほどまで砂が積もっていた。したも数軒に及び、の方からは折、の根が裂ける音やが転がり落ちる鈍い音が響いていた。
にむ田圭は、夜がけるとすぐにシャベルをにの裏へ向かった。畑の端にある倉庫まで砂が押し寄せていないか確かめるためだった。
柿のは根元から倒れ、畑の境に積んであった垣も半分ほど崩れていた。田はに埋まった農具を探しながら、何度かシャベルを差し込んだ。
3度目だった。
刃先に、ともとも違う触が伝わった。
いのに、妙に軽い。
田は最初、折れた枝か何かだとった。だが周囲のを払いのけると、がかったさな物が転がりた。
の指だった。
正確には、首から先の骨だった。黒く腐った縄のようなものが首に巻きついたまま、のから現れていた。
田は声をげて尻もちをついた。
のに座り込んだまま、しばらくちがれなかった。ところが恐ろしいことに、それは1つだけではなかった。
広告
の骨のには別の腕の骨がなり、しれた所では丸い蓋骨の部がから覗いていた。骨と骨のには、黄く変した布切れと黒い縄が絡みついていた。
田から通報を受けた交番の警察官たちは、最初、古い共同墓が砂崩れで崩れたのだろうと考えた。
青川の裏帯には、戸代から使われてきた古い墓や無縁墓が点していた。のに骨や棺の破片がてくることも、全くない話ではなかった。
しかし現を確認していた1の巡査が、のから黒いを見つけた。
1つ。
さらにもう1つ。
計5つ。
は自然に散らばったようには見えなかった。ある程度の隔を保つように置かれ、それぞれの表面には赤い顔料のようなものがく残っていた。
そのからは腐った縄と、黄く変した札もてきた。
札はを吸ってほとんど読めなくなっていたが、数枚には漢字の部が残っていた。
「封」
「帰」
そう読める文字があった。
午9過ぎ、青川警察署の俊介警部が現へ到着した。
42歳のは斜面から流れ落ちた砂を見ろし、ポケットから煙をしかけたが、そのまま戻した。湿ったの匂いに、古い棺から染みしたようない臭いが混じっていた。
の線は、骨そのものより先に縄へ向かった。
広告
最も側にある腕の骨へづき、しゃがみ込む。
「から転がってきて偶然絡まったんじゃない」
隣にいた巡査が顔をげた。
は縄の位置を指した。
「首を回ったあと、肘のを通って、別の遺骨の首につながっている。これは結び目だ」
偶然ではなかった。
誰かが複数のを、図に1つにつないでいた。
警察は直ちに現帯を入禁止とした。
ががったことをったたちは、濡れたを歩いて規制線のに集まってきた。だが老たちは骨を見た瞬、誰もが様に顔をこわばらせた。
若い民が何が起きたのか尋ねても、老たちは答えなかった。
何かはの方へ向かってをわせた。
配の女性の1は、唇を震わせながらさく呟いた。
「に帰らんと……」
が理由を聞こうとした、の佐藤徳夫がへた。
佐藤はのから現れた骨をく見つめ、それからい声で言った。
「を殺して埋めたんやないです」
「では、何ですか」
佐藤はすぐには答えなかった。
背にいるたちを度振り返り、にしてはいけないことを語るように声を落とした。
「6、こので同じに老が5くなりました」
は黙って聞いた。
「昔のやり方で、5を1つの棺に入れたんです」
「1つの棺に?」
「のに埋めた。その棺が、今回ので崩れて流れてきたんでしょう」
説だけを聞けば、発見された骨が異様な形でなっている理由はついた。
だがは、どうしても腑に落ちなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
「死産」と告げた院長と20年目の出生記録
20年前、出産した娘を「死産でした」と告げられた私・佐藤しず子。しかし私は、麻酔の中で確かに聞いた産声を一度も忘れられなかった。 真実を確かめるため、私は清英産婦人科医院の清掃員として20年間働き続け、誰にも気づかれず院内の秘密を探ってきた。そんなある夜、若い看護師から「まだ間に合います。あなたの娘さん生きています」と書かれた紙を渡される。 やがて地下の保管庫へ忍び込んだ私は、自分の出産記録の隣に「佐藤女児――転送」と記された手帳を発見する。 さらにそこには複数の新生児と金銭の記録まで残されていた。娘を奪ったのは誰なのか。そして病院は20年間、何を隠してきたのか。見下され続けた“掃除婦”は、集めた証拠を手に院長・安藤剛と対峙する――。真相|修羅場2.1万字5 407 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第24話
目覚めた部下にクビを問われた
地方旅館の火災で客を救い出し重傷を負った部下が目を覚ました。だが彼女の記憶は直近の二年分が抜け落ち、着任初日の私が冷酷に解雇を迫った日のまま止まっていた。会社は避難扉が開かなかった責任を彼女の記憶喪失に乗じて背負わせようと、退職金の支払いを口実に過失を認める書類への署名を病室で迫る。何も思い出せない部下は震える手でペンを握り、かつて自分を追い詰めたはずの私を怯えた目で見つめた。職場逆転|真実|裡の顔|修羅場3.7万字5 700 -
完結第20話
偽りの仕送りと緑の通帳
専業主婦の佐藤真美は、長年にわたり傲慢な義母・君代から「無収入の居候」と見下され続けてきた。夫の減給により進学を断念し、誇りを持って介護職に就いた二十歳の娘・奈々までも、義母は「高卒の無能な孫」と親戚の前で嘲笑する。さらに君代は「長男の嫁・恭子を見習い、毎月十五万円を仕送りしろ」と理不尽な要求を突きつけてきた。耐えかねた真美が恭子に相談すると、長男一家の仕送りに隠された信じがたい事実が判明する。義母の言う通り「見習う」ことを決意した真美は、夫の浩一を巻き込み、スマートフォンに収めたATMの振込画面の写真と、タンスの上の空の茶封筒を使ったある計画を仕掛ける。だが、疑念を深めた義母が「緑の銀行通帳」を差し出し、記帳を命じたことで事態は急転する――。嫁姑|真相3.0万字5 721 -
完結第20話
教室の最後列に座る元教員
定年退職した元教員の私は、一度も教えたことのない男子生徒の保護者会に、身元を偽って六年間通い続けていた。教室の最後列から見つめる先には、油まみれの作業着を着た父親が座っている。受付簿の不審な記録に気づいた校長から昇降口で問い詰められた帰り道、桜が散る坂道でその父親が私の前に立ちふさがった。二十四年前の元教え子だったその男は、振り返りもせず、私の背中に向けて「あの席、あと何年座るつもりですか」と低く告げ怒り|真実|親子関係|修羅場3.1万字5 122 -
完結第30話
一万八千円の伝票
病を克服し、身なりを隠して自らのホテルへ宿泊客として訪れたオーナー・佐藤かず子。亡き夫と四十年にわたり心血を注いできた老舗ホテルは、かつての温もりを失い、強欲な支配人・中村の私欲に侵されていた。 きっかけは、わずか千八百円の粗末な昼定食に突きつけられた「一万八千円」の法外な伝票。中村たちは気の弱そうな高齢客を狙って組織的なぼったくりを繰り返し、さらにはホテルそのものを外資系ファンドへ売り飛ばそうと目論んでいた。 無力な老婆と侮られ、嘲笑と脅迫を受けるかず子。だが彼女の手には、亡き夫の誇りである一本の「蒔絵万年筆」と、深夜に掴んだ決定的な「裏帳簿」の証拠があった。誇りを泥靴で踏みにじられた元女将の、静かなる大反撃が今、幕を開ける――。職場逆転|真相4.6万字5 6321