"「ただの用務員でしょ?」卒業式で笑われた72歳――アルバムを開いた生徒たちが泣き、校長は壇上を降りた" 第2話
退学届を持っていた朝
体育館のざわめきが、ゆっくりと広がっていった。
壇では教が表を確認し、式を始めるべきか迷っている。担任が青蓮の肩へを伸ばしたが、蓮はさく首を振ってちがった。
「すみません。もう丈夫です」
そう言いながらも、彼の線は佐藤かられなかった。
蓮が学を辞めようとしたのは、2のだった。
教科がごみ箱に入れられ、体育館履きが何度も隠された。教では誰も見ていないだけ肩をぶつけられ、匿名のアカウントからは「も来るの?」というメッセージが届いた。
担任に話そうとしたことはある。しかし、証拠をせと聞かれたら何も説できない気がして、結局「最眠れない」としか言えなかった。
11の曜、蓮は自分でいた退学届を通学かばんに入れて登した。保護者欄は空のままだった。授業にはず、職員の提箱へ入れて、そのまま学をるつもりだった。
午817分。徒たちが昇へ流れ込む、蓮だけが反対方向のへ歩いていた。
「青」
背から名を呼ばれた。
振り返ると、佐藤が脚ので計の枠を拭いていた。担任でもないに引き止められたことが腹たしく、蓮は「忘れ物です」と答えて歩き続けた。
「そうか。じゃあ、これだけ落とさないようにな」
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佐藤が指したのは、かばんのから半分ほどていたい封筒だった。「退学届」の文字が見えていた。
蓮は反射に封筒を押し込み、逃げるようにへ向かった。佐藤は追いかけず、脚をりて脇のベンチに座った。
「提するなら、止めない。ただ、すに5分だけ座らないか。俺は成績もつけないし、説教する権限もない」
なぜか、その言葉でが止まった。
蓮はベンチの端に腰をろした。佐藤は事を問い詰めず、温かい缶のお茶を1本置いた。最初の数分、2のにあったのは、登する徒の音だけだった。
やがて蓮が「教に戻りたくない」と漏らすと、佐藤は初めて顔を向けた。
「戻らなくていい所と、戻れるように直すべき所は違う。どちらなのか、先と緒に確かめてもらおう」
佐藤が連絡したのは担任だけではなかった。養護教諭と学主任もへ来た。そののうちに学は蓮と複数の徒から聞き取りを始め、廊の防犯カメラも確認した。映像には、蓮の体育館履きを持ちる徒の姿が残っていた。
退学届は提されなかった。加害徒への指導とクラス内の座席変更がわれ、蓮は保健登からしずつ教へ戻った。
現の体育館で、蓮はアルバムを胸に抱えた。
「佐藤さんは、俺を自分で助けたなんて度も言いませんでした。
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でも、あの、名を呼ばれなかったら、俺は何も説しないまま学を辞めていました」
何かの徒がうつむき、保護者席からをすする音が聞こえた。
担任の森は、蓮の退学届を最初に受け取ったのことをいしていた。あの、佐藤から連絡がなければ、欠席を単なる体調良として処理していたかもしれない。森はちがり、保護者席へ向かってをげた。
「学がもっとく気づくべきでした。佐藤さんが異変を見つけ、正式な対応につないでくれたから、映像も消期限のに確認できました」
蓮はその言葉を聞き、ようやくく息を吐いた。卒業のまで自分のさを隠すつもりだったが、あの朝のことを恥じる必はないのだと、初めてえた。
すると別の列で、岸真帆が静かにを挙げた。
「私もです。佐藤さんは、私がに帰れなかったのことをっています」
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