"家族席から外された弟" 第7話
父は枕元の袋から古い帳面をした。創業当からの仕入れ先と献の記録だった。「やる」と差しされたが、私はすぐ受け取らなかった。
「これは父さんのものだ。《よし》の会社資料でもある。私にくれるなら、兄さんを含めて権利関係を確認してからにして」
父は満そうに顔をしかめた。以の私なら、父の気持ちを優先して持ち帰っていただろう。しかし青いノートの来事を繰り返したくなかった。
「父さん、を残すことは、同じを残すことじゃない。従業員をく使い、誰かの名を勝に使ってまで続けるなら、私は守らない」
父の目に涙がたまった。私は謝らなかった。父を傷つけるためではなく、父が聞けるうちに伝える必があった。
退院、父は司法士と税理士を交え、会社の株式と個資産を理した。な事実が分かった。父は法化の際、株式の割を兄へ譲り、割を自分で保していた。の建物は父個の所で、会社へ賃貸している。つまり兄がすべてを自由にできるわけでも、私が突然会社を受け継げるわけでもなかった。
父は自分の株を私へ渡したいと言った。私は断った。兄と経営権を争うために戻れば、またがだけになる。代わりに、父がくなったもの賃貸条件を透にし、母の活費と修繕費を確保する契約を専と作るよう頼んだ。
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父は寂しそうだった。「欲、ないのか」
「あるよ。自分のを育てたい。澪の演奏を最初から聴きたい。夜に眠りたい。父さんのをもらうことだけが欲じゃない」
父は初めて、し笑った。
、《さな晩ごはん》の注文は週ほどになった。私は古の軽蔵をリースし、共同厨の固定枠を借りた。には売に応じた曖昧な謝礼ではなく、額の監修契約を結んだ。久美子のようなを度と作りたくなかったからだ。
その矢先、SNSに投稿がた。《老舗弁当のレシピを持ちして商売を始めた元従業員》。名は伏せられていたが、域のには誰のことか分かる。投稿者は兄嫁の友で、兄が報を渡していた。
コメントには、「族経営はこれが怖い」「介護施設の顧客まで奪ったらしい」とかれた。注文のキャンセルが件た。私は腹がったが、SNSで兄を攻撃し返さなかった。
弁護士を通じ、事実と異なる顧客奪取の記載を削除するよう求めた。施設側の依頼経緯、契約終に見積もりを受けた記録を示すと、投稿はに消えた。ただし画面の記憶までは消えない。つの個客は戻らなかった。
兄はさらに、《MUSUBI》の名称で凍弁当の通信販売を始め、柚子鶏そぼろを「父から子へ受け継がれた」と宣伝した。私はレシピの所を巡って争うより、表示の虚偽だけを問題にした。
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にはしなかった献であることは、青いノートの付や試作写真で示せる。
代理同士の交渉で、兄は「受け継がれた」という表現を削除したが、商品の販売自体は続けた。私は完全な勝利を得られなかった。料理はごとに著作権で囲えるものではなく、似た材料を使うことまで止めるのは難しい。
澪は納得しなかった。「盗んだのに、売っていいの?」
「法律で止められることと、嫌なことは同じじゃない」
「じゃあ、やった者勝ちじゃん」
私もそうう夜はあった。しかし、兄の販売を止めることだけにを使えば、自分の仕事が育たない。「同じ料理でも、誰が、どんな約束で作るかは変えられる。お父さんはそっちを選ぶ」
私は商品の説に妻の病名をさず、《欲のない夜にもりが届く、柚子のそぼろ》といた。購入者へ、温め方と保期限をきな文字で添えた。べたから届いたを、許を得てつずつ紹介した。
方、兄の凍弁当は配送遅延と容器の液漏れが続いた。駅ビル向けの見栄えを優先したい容器が、凍配送にわなかったためだ。兄は製造現より広告費へ資を使い、返品対応を恵理に任せた。
ある夕方、恵理が私の共同厨へ来た。謝罪ではなく、相談があると言った。
「雅さんが、のを担保に追加融資を受けると言っています。
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