"ソファの下のピンクのスマホ" 第2話
夕飯の支度くらいしておこうとって」
「いつもありがとうございます」
優奈さんは何事もなかったように微笑んだ。
私は、その笑顔を初めて恐ろしいとった。
ふとキッチンの作業台を見ると、もう台のスマートフォンが置かれていた。
黒いケース。
それは普段、優奈さんが使っているスマートフォンだった。
つまり。
ソファのに隠されていたピンクの端末は、らかに別用途のものだった。
私は何わぬ顔で掃除を続けた。
ソファのまで戻ると、モップの先をへ入れ、ピンクの端末をさらに奥へ押し込んだ。
私が触れたことを悟られてはいけない。
証拠を隠しているは、自分が全だとっているほど油断する。
それくらいのことは、私にも分かった。
その、私は初めてった。
優奈さんは、私たちがっている優奈さんとは違う顔を持っている。
そして問題は、その男が誰なのかだけではなかった。
息子の雄が、その事実を何もらずに毎働いている。
そのことが、何より胸に刺さった。
昼を終えたあと、優奈さんは所のスーパーへ買い物へくと言った。
「お義母さん、みかんがお好きでしたよね。かったら買ってきます」
「気を遣わなくていいのよ」
そう答えながら、私はので彼女がくへることを願っていた。
広告
玄関の扉が閉じた。
音が廊の向こうへ消えるまで待ってから、私はソファへ向かった。
しゃがみ込み、奥へを伸ばす。
ピンクのスマートフォンはまだそこにあった。
取りした瞬、が汗ばんだ。
のスマートフォンを勝に見ることが正しいとはわない。
それでも、待ち受け画面の写真だけを見て見なかったふりをして帰れば、悔するような気がした。
画面を点けると、パスコード入力画面が表示された。
優奈さんの誕。
違った。
雄の誕。
それも違った。
やめるべきだ。
ではそうった。
その、ふと優奈さんの弟・翔太の顔が浮かんだ。
28歳になるというのに定職が続きせず、何かあるたびに姉を頼ってこのへ来ていた。雄は「義弟だし仕方ないよ」と笑っていたが、私は以からし気になっていた。
試しに翔太の誕を入力した。
ロックが解除された。
私は息を呑んだ。
どうして秘密の端末の暗証番号が、夫ではなく弟の誕なのか。
しかし考えているはなかった。
まず写真アプリをいた。
そこには待ち受け画面の男との写真が何枚も保されていた。
レストラン。
辺。
ホテルのラウンジ。
築マンションのモデルルーム。
男は40代半ばくらいで、細い縁鏡をかけ、いつも仕ての良さそうなを着ている。
広告
数枚の写真には位置報まで残っていた。
横浜。
京。
箱根。
雄が仕事をしていたはずの平昼の付もある。
私はそれ以写真を見るのをやめた。
次にメッセージアプリをいた。
番に固定されていた相の名は、
《しい》
だった。
指先がたくなった。
トーク画面には男の名が折てくる。
佐々。
佐々健。
「来週、例のマンション見にこう」
「の500万は俺からす」
「雄のローンがあとしになったらけばいい」
そこまで読んだところで、私は画面を閉じかけた。
だが、次の文章が目に入った。
《を売れたら、その分で残りを返せるでしょ》
私は何度も読み直した。
雄が今んでいるこのマンション。
5、息子が節約しながら宅ローンを払っているだった。
優奈さんは、そのを将来売却し、自分と佐々の活の資へ回すつもりらしい。
さらにスクロールすると、振込のスクリーンショットがてきた。
500万円。
振込先には、
《野翔太》
とかれていた。
優奈さんの弟である。
備考欄には、
《》
その言だけ。
私は自分のスマートフォンを取りし、画面を撮した。
倫写真。
メッセージ。
500万円の振込記録。
必最限だけを残した。
その、廊の向こうでエレベーターが止まる音がした。
私は慌てて端末の画面を消し、指紋をハンカチで拭き、元の位置へ押し戻した。
数秒、玄関がいた。
「お義母さん、みかんありましたよ」
優奈さんが袋を提げて入ってきた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 418 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695 -
完結第15話
元義母の誤爆着信と暴かれた花婿の嘘
モラハラと不倫を重ねた夫・裕二と離婚し、独身としての平穏な生活を取り戻してちょうど一年が経ったある休日の朝。主人公・マナのスマートフォンに、元義母・文から突如「結婚式になぜ来ないの! 早く来ないと離婚させるわよ!」と怒鳴りつける狂気の電話が入る。 「私はもう独身ですが」と告げるも、来なければ自宅や職場に押しかけると脅され、指定された高級シティホテルの式場へ向かうマナ。黒留袖姿で激怒する文は、新郎となった息子の晴れ舞台を元嫁が邪魔しに来たとロビーで激しく罵倒し、白タキシード姿の元夫も腕力で追い出そうと詰め寄る。 だが、文のスマートフォンの発信履歴を確認させた瞬間、事態は暗転。人身事故で遅延していた本当の新婦「まみ」が泥だらけのパンプスで駆けつけた時、元夫が隠し続けていた致命的な大嘘が白日の下に晒される――。嫁姑|修羅場2.5万字5 358 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94