"ソファの下のピンクのスマホ" 第3話
私は振り返り、笑った。
「ありがとう」
その笑顔を作るだけで、顔の筋肉が痛かった。
夕方、帰るに私はわざと尋ねてみた。
「そういえば優奈さん、ソファのにスマートフォンを落としてない?」
彼女のきが止まった。
ほんの瞬だった。
それからすぐ、キッチンの黒いスマートフォンを持ちげた。
「私のはここにありますよ」
「そう。じゃあ気のせいね」
「何かありました?」
「モップがいものに当たった気がしただけ」
私は靴を履いた。
優奈さんは笑って見送ったが、瞳の奥だけは笑っていなかった。
マンションをて5分ほど歩いたところで、スマートフォンが震えた。
翔太からメッセージが届いていた。
《幸子さん、今姉ちゃんのでピンクのスマホ見ませんでした?》
私はを止めた。
優奈さんは弟へ連絡したのだ。
なぜ弟が、あの端末のをっているのか。
《見てないわよ。なくしたの?》
そう返す。
すぐに返信が来た。
《いや、姉ちゃんが探してるだけです。気にしないでください》
私は画面を消した。
倫相だけではない。
弟まで、秘密の端末についてっている。
事態はっていたよりいところまでつながっている。
自宅へ戻ると、私はすぐ画像を別の保媒体にも移した。
それから雄へ話をかけた。
「母さん、どうした?」
疲れた声だった。
「、うちへ来なさい」
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「? 午仕事なんだよ」
「終わってからでいいわ。事な話があるの」
し沈黙があった。
「……分かった」
私は話を切った。
息子へ全て話すつもりだった。
けれど翌、その考えはきく変わることになる。
翌の昼、私は雄の好きな肉じゃがを作った。
じゃがいもを煮ながら、何度も言葉を組みてた。
いきなり「あなたの妻は浮気している」と言えば、雄は信じないかもしれない。
あるいは信じたとしても、母親である私にられたことを恥じて、を閉ざすかもしれない。
1140分ごろ、インターホンが鳴った。
玄関をけると、雄がっていた。
久しぶりにゆっくり顔を見ると、ずいぶん痩せている。
目のにはい隈があり、髪にもいものがし混じっていた。
「疲れてるの?」
「まあ、会社が忙しいから」
雄は笑った。
卓へ座り、肉じゃがをべる。
「やっぱり母さんの飯、うまいな」
その言葉を聞くと胸が痛んだ。
私はしばらく黙って事を続け、それから何気ない調子を装って言った。
「そういえば昨、あなたのを掃除していてね。ソファのにスマートフォンみたいなものがあった気がするの」
雄の箸が止まった。
ほんの瞬。
けれど母親の私は見逃さなかった。
目が揺れた。
「スマホ?」
「ええ」
「それ……俺の古いやつじゃないかな」
私は箸を置いた。
「あなたの?」
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「ああ。この種変更した、のやつを適当に置いてたから」
雄は私と目をわせなかった。
私は静かに尋ねた。
「何?」
彼の喉がいた。
「何で?」
「あなたの物なら分かるでしょう」
沈黙。
それから雄は、無理に笑った。
「母さん、そんな細かいことどうでもいいだろ」
息子が嘘をつくの癖は、子どもの頃から変わらない。
目を見ない。
箸先でべ物を触る。
喉が渇くのか、何度も茶をむ。
私はそれ以追及しなかった。
「そうね。あなたのならいいの」
雄はらかに堵した。
その姿を見た瞬、胸の奥に別の痛みが広がった。
彼はっている。
あのピンクのスマートフォンが優奈さんの物だとっている。
それでも、私へ嘘をついた。
なぜ。
妻を庇っているのか。
までっているのか。
それとも、別の理由があるのか。
午1、雄は仕事へ戻ると言って帰った。
玄関で靴を履く背へ声をかけた。
「雄」
「ん?」
「何か困っていることがあるなら、母さんには言っていいのよ」
瞬、彼の表が崩れた。
だが、すぐに笑った。
「何もないって」
ドアが閉まった。
私はしばらく玄関にっていた。
何もないの顔ではなかった。
午3。
迷った末、私はもう度息子のマンションへ向かった。
結婚した当初、雄から「留守に何かあったのため」と渡されていた鍵がある。勝に入ることにろめたさはあったが、あのスマートフォンがまだ残っているかだけ確かめたかった。
部は静かだった。
ソファのへを伸ばす。
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