"ソファの下のピンクのスマホ" 第10話
事の途。
雄がぽつりと言った。
「優奈からが来た」
私は箸を止めた。
「何て?」
「今はスーパーで働いてるって。翔太も方ので働き始めたらしい」
「そう」
「謝ってた」
私はそれ以聞かなかった。
雄も、それ以話さなかった。
許すのか。
許さないのか。
いつか誰かと再婚するのか。
できていくのか。
それはもう、息子が自分で決めることだ。
事を終え、雄がソファへ座った。
テレビのリモコンを取ろうとしてを滑らせた。
リモコンがへ落ち、そのままソファのへ入った。
「母さん、取って」
「自分で取りなさい」
「昔は取ってくれたのに」
「昔の話よ」
雄は笑いながらへしゃがんだ。
を伸ばし、リモコンを引っ張りす。
「今度はスマホじゃなかった」
私はわず吹きした。
「あんなもの、度と見つけたくないわ」
窓のには、穏やかな夕暮れが広がっていた。
あの。
ソファのからピンクのスマートフォンを引きした瞬、私は息子の庭を壊すものを見つけたとった。
けれど今になれば、し違う気がする。
壊れていたものは、そのからすでに壊れていた。
私は偶然、それを見つけただけなのだ。
切なのは、そこからだった。
雄は会社を失う恐怖に縛られ、妻の裏切りを半も黙っていた。
私は息子を守ろうとするあまり、自分が全部解決しなければならないとい込んだ。
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優奈さんはの優しさを、何をしても許される権利だと勘違いした。
翔太はの所を考えなければ、自分には責任がないとっていた。
それぞれが、自分に都のいいものだけを見ていた。
そして結局、番がかかったのは、相の嘘を暴くことではなかった。
自分自が見たくなかったものを見ることだった。
「母さん」
雄が器をねながら言った。
「来週の曜、ある?」
「どうして?」
「会社のみんなでバーベキューするんだ。母さんも来る?」
私はし考えた。
昔ならすぐくと言ったかもしれない。
息子の会社を見て、社員へ挨拶をして、ちゃんとやっているか確認したくなっただろう。
でも今は。
「やめとく」
「何で?」
「若いたちだけで楽しみなさい」
雄はそうな顔をした。
「母さんらしくないな」
「私にも私の予定があるのよ」
「何?」
「友達と温泉」
雄が笑った。
「そっちの方が楽しそうだな」
「でしょう?」
玄関で雄を見送った。
ドアを閉めようとすると、彼が度振り返った。
「母さん」
「何?」
「ありがとう」
私はしだけ黙った。
「もういいわよ」
「何が?」
「その話」
雄は笑った。
「じゃあ、また来る」
「今度は肉じゃが以の材料持ってきて」
「分かった」
エレベーターの扉が閉まった。
私は静かになった部へ戻った。
ソファのを通る。
あののことをいし、しだけを止めた。
けれど、もうしゃがみ込んでを覗くことはしなかった。
見つけなければならない秘密は、もうない。
私は窓をけた。
夕方のがカーテンを揺らした。
蔵庫には雄が置いていったじゃがいもがまだ残っている。
はカレーにしよう。
そんな、ごく普通のことを考えられる毎が戻ってきた。
失ったものはある。
傷も残っている。
それでも。
平凡な卓で好きなものをべ、言いたいことを言い、それぞれのへ帰る。
今の私には、それが番贅沢な幸せだった。
完
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