"愛人とタイへ行った夫の10日後" 第9話
健がちがった。
「父さん」
い声だった。
「自分の母親を置いてとタイへったが、母さんを責めるの?」
浩司のが止まった。
「俺は仕事で」
「まだ言うのかよ」
健の目には、父親への軽蔑が浮かんでいた。
「全部バレてるんだよ」
浩司は息を荒くした。
会社。
母親。
息子。
その全てが自分の予とは違う方向へいている。
けれど、まだ最の切り札があるとったらしい。
突然、私へ向き直った。
「いい。会社なんか辞めてやる」
がるように言った。
「俺にはマンションがある。おの親父の遺産だってあるだろ。さっさと婚届をせ。保証の類にも判を押せ」
私は静かにテーブルを指した。
「欲しかった類なら、そこにあるわよ」
浩司はづいた。
そして、並べられた類を見た。
婚届。
美穂の便箋。
細。
慰謝料に関する面。
財産の返還を求める資料。
その瞬、浩司のから残っていた荷物が滑り落ちた。
「な……何だ、これは」
浩司の声が震えた。
最初にへ取ったのは、黒い帳に隠していた婚届だった。
その横には美穂の便箋。
「お……斎の引きしを勝にけたのか!」
浩司は鳴った。
「のプライバシーを何だとってる!」
「私の父が残した1500万円を勝に使ったが、何を言っているの?」
私は自分でも驚くほど静かな声で答えた。
浩司が黙った。
林弁護士がへた。
広告
「初めまして。由美さんの代理をしております林です」
「弁護士?」
浩司の顔が張った。
「由美さんが相続された財産の使用状況については、今正式に精算を求めます。また、貞関係についても証拠を理しています」
林弁護士は淡々と説した。
「マンションについて、由美さん名義で保証や同を取ることも認めません」
「違う。俺は族のために管理していただけだ」
「美穂さんへの定期送も?」
健が言った。
「タイ旅も?」
浩司は答えられない。
「1500万円なんて、今すぐ返せるわけないだろ!」
突然、浩司が叫んだ。
「だったら、このを売る。俺のだ。このを売ればは作れる」
私は登記関係の資料を取りした。
「それも無理よ」
「何?」
「こののには、私が相続した権利があるの」
浩司の目が見いた。
「28、お父さんがを建てるにおをしてくれたこと、覚えてない?」
「そんな昔の話」
「あなたが忘れても、記録は残ってる」
健がたく言った。
「父さん1のじゃない」
会社から求められる返還。
私の遺産。
慰謝料。
義母の施設費用。
浩司の肩が見る見るがっていった。
「待ってくれ」
初めて、声から威圧が消えた。
「由美。俺が悪かった」
私は何も言わなかった。
「謝る。だから考え直してくれ」
「何を?」
「28も夫婦だったじゃないか」
浩司は必に私を見る。
「美穂とは別れる。もう会わない。
広告
それでいいだろ?」
私はテーブルからピンクの便箋を取った。
そして読みげた。
「『邪魔なおばあちゃん、くどうにかならないかな。今のうちに奥さんにたっぷり働かせておこうね』」
浩司の目が泳ぐ。
「それは美穂が勝に」
「『奥さんのお父さんが残したおは、私たちのしいマンションの具に使えるし』」
「由美、聞いてくれ」
「あなた、これを読んだのよね?」
浩司は黙った。
「読んで、それでも美穂とタイへったのよね」
「……」
鈴さんが吐き捨てるように言った。
「見苦しいぞ、浩司。ここまで来て女に全部なすりつけるのか」
「鈴、おまで俺を見捨てるのか」
「見捨てたのはおだろ」
鈴さんの声はたかった。
「妻も、母親も、会社もな」
浩司は部を見回した。
方は誰もいなかった。
そのだった。
に置かれていた浩司のスマートフォンが鳴った。
画面には〈美穂〉と表示されていた。
浩司は救いを求めるように通話ボタンを押した。
「美穂?」
しかし聞こえてきたのは、甘い声ではなかった。
「浩司さん! どういうことなのよ!」
鳴り声だった。
「今マンションに帰ったら弁護士から分い封筒が届いてた! 慰謝料を払えって何なの!」
浩司が固まった。
「落ち着け、美穂。俺が何とかする」
「何とかするってどうやってよ! 私の会社にも連絡が来てるの! あんたが会社のおで旅してたこと、全部調べられてるじゃない!」
浩司の顔がさらに青ざめた。
「でもマンションがある。俺たち緒に」
「マンション?」
美穂が笑った。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 448 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2848 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第32話
不妊を理由に別れた元妻が、機内で双子を抱いていた
5年前、妻・小百合に「ほぼ不妊」という診断が下された瞬間、俺は後継ぎを求める父の言葉に従い、彼女へ離婚届を突きつけた。あの選択は正しかった――そう信じて生きてきた俺の前に、ファーストクラスで小百合と、自分に瓜二つの幼い双子が現れる。 真相を追ううち、俺は恐ろしい事実に辿り着く。不妊診断そのものが偽りであり、小百合は両親まで脅され、何も言えないまま俺の前から消えていた。そして、その全てを裏で仕組んだのは、俺が誰より尊敬してきた父だった。 さらに、本当に問題を抱えていたのは小百合ではなく俺自身で、双子は離婚直前に宿った俺の子供だと判明する。 妻を捨て、子供たちの5年間まで奪ってしまった俺は、もう父の作った「正しい人生」に従うつもりはない。失った家族と向き合い、父が守り続けてきた巨大な権力と秘密に、自分の手で決着をつけると決めた――。夫婦|熟年離婚4.9万字5 8453