"愛人とタイへ行った夫の10日後" 第11話
浩司が慌てる。
「し助けてくれれば、俺はて直せる」
「助ける?」
美の目が吊りがった。
「うちだって子供の学費で変なのよ。お兄ちゃんの借なんてらないからね!」
さらに義母の施設費用の話がると、美は完全に態度を変えた。
「私に払えって言うの? 無理よ!」
「実の娘だろ」
「お兄ちゃんだって実の息子でしょう!」
リビングには兄妹の鳴り声が響いた。
親戚の男性も、
「わしは関係ない」
と々に席をった。
ほんのしまで「族」「の恥」と言っていた々は、おと責任の話がた途端に逃げていった。
美もバッグを掴んだ。
「もうらない。勝にして!」
玄関のドアが激しく閉まった。
浩司は呆然としていた。
最に頼った血縁からも、見放された。
「浩司さん」
私は婚届をテーブルへ置いた。
「もう誰もあなたの代わりに責任を取ってくれないわ」
浩司はを見つめた。
いが流れた。
やがて震えるでペンを持った。
名をく。
印を押す。
28の結婚活は、1枚のので終わった。
浩司はさなボストンバッグに数着のを詰めた。
タイ旅のために買ったきなスーツケースとは似ても似つかない、使い古したバッグだった。
玄関で度だけ振り返った。
「由美……」
私は何も言わなかった。
健も父親を見つめるだけだった。
浩司はを閉じた。
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そして、肩を落としてへていった。
玄関のドアが閉まった。
静かだった。
義母の呼び鈴もない。
浩司の音もない。
私は空になったリビングを見回した。
かつてここは、私が守らなければならない「庭」だとっていた。
けれど今は分かる。
誰か1がし続けなければ成りたない所を、庭とは呼べないのだ。
それから半が過ぎた。
季節はを越え、になった。
私は今、両親が残してくれた古い平で暮らしている。
婚の続きは、林弁護士を通じてんだ。
浩司には争い続けるだけの余裕もなく、最終に婚は成した。
28暮らしたも、その売却することになった。
や建物の権利関係を理し、私が持つ分についても適切に精算された。
浩司側に残るおは、会社への返還や、私に対する財産の清算などへ充てられた。
それでも全てを度に返すことはできず、今も支払いは続くことになった。
ある休。
庭のへをやっていると、健が縁側から声をかけた。
「母さん、伝おうか?」
「丈夫よ。これ、毎朝の楽しみだから」
私はじょうろを置き、自分のを見た。
半まではひび割れだらけだった。
消毒液と仕事で皮膚がくなり、何枚も絆創膏を貼っていた。
今はずいぶん柔らかくなった。
夜、お呂がりにゆっくりハンドクリームを塗る。
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それだけのことが幸せだった。
誰にも急かされない。
夜に何度も起こされない。
朝5に呼び鈴が鳴ることもない。
健が茶を入れてくれた。
2で縁側に並んだ。
「そういえばさ」
健が言った。
「父さん、今はさな運送会社で働いてるらしいよ」
「そう」
私はカップを見たまま答えた。
会社での位を失った浩司は、以のような条件での再就職はできなかった。
今はい部へ移り、活をて直しながら働いているという。
かつては級スーツを着て、
「俺が稼いでやっている」
と威張っていた。
事は私がして当然。
事も洗濯も、介護もして当然。
そんな男が今は、自分の事も洗濯も全て自分でしなければならない。
けれど私は、ざまあみろともわなかった。
かわいそうともわなかった。
もう私のとは別の所にいるだった。
「おばあちゃんの方も、まだ施設にいるって」
健が続けた。
義母は施設で活している。
美は費用のことで何度も文句を言ったらしいが、積極に介護へ関わろうとはしていないという。
私は毎温かい事を作った。
何度鳴られても、お茶を入れ直した。
夜にも体を起こした。
それがどれほどのことだったのか、義母は今になって初めてったのかもしれない。
けれど、もう確かめようとはわなかった。
美穂も勤務先で事を聞かれ、その職をれたと聞いた。
私からの慰謝料請求についても、林弁護士を通じて続きがんだ。
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