"愛人とタイへ行った夫の10日後" 第12話
タイへ発したあの。
2はきっと、これから何もかもうまくいくとっていたのだろう。
私をから追いす。
父の遺産を使う。
しいマンションへむ。
邪魔になった義母はい施設へ入れる。
その計画ので、私だけは最まで何も言わず従う女だとわれていた。
私自もい、そういう女だったのかもしれない。
「母さん」
健の声で顔をげた。
「最、本当に顔が変わったよね」
「そう?」
「よく笑うようになった」
私はし笑った。
「実はね、来週から駅のおさんでパートすることになったの」
健が目を丸くした。
「本当?」
「ええ。昔からが好きだったでしょう」
介護活に入ってから、自分が何を好きだったのかさえ忘れていた。
を選ぶこと。
ゆっくり本を読むこと。
友と昼をべること。
美容院へくこと。
庭にを植えること。
それらは全部、私には必のない贅沢だとうようになっていた。
駅のの主は、私と同じくらいの齢の女性だった。
求の張りを見て勇気をして入ると、
「おがお好きなら、ぜひ緒に働きませんか」
と笑ってくれた。
久しぶりに、自分が誰かの役につことを「嫁だから」「妻だから」ではなく、自分自として求められた気がした。
「初任がたら、俺がご飯ご馳するよ」
健が言った。
「普通、逆じゃない?」
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「じゃあ母さんの初任で俺が奢ってもらおうかな」
「調子いいんだから」
2で笑った。
こんな何気ない会話が、以のではほとんどなかった。
私はちがった。
「そろそろお昼にしましょう」
「何作るの?」
「マカロニグラタン」
健が嬉しそうな顔をした。
「やった。俺、母さんのグラタン好きなんだよ」
「浩司さんが嫌いだったから、ずっと作ってなかったの」
言ってから、自分でも驚いた。
そうだった。
私は28、浩司が好きなものを作ってきた。
浩司が嫌いなら、自分が好きな料理でも作らなかった。
浩司が嫌になるは着なかった。
浩司が嫌がる所にはかなかった。
しずつ、私の活から「私」が消えていた。
キッチンへち、しく買ったエプロンを結ぶ。
玉ねぎを刻む。
トントンという包丁の音が、静かなのへよく響いた。
誰かの音に怯える必はない。
義母の呼び鈴にを止める必もない。
事のを罵られることもない。
健が縁側から言った。
「母さん」
「何?」
「幸せ?」
私は包丁を止めた。
し考えた。
そして笑った。
「今、すごく幸せよ」
52歳。
の半分以を、私は妻や嫁という役割のできてきた。
失ったを取り戻すことはできない。
父と母が残してくれたおも、全てが元通りになるわけではない。
でも、これからのは違う。
好きなを育てる。
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べたいものを作る。
疲れたら休む。
嫌なことには嫌だと言う。
そんな当たりのことを、これから1つずつ取り戻していけばいい。
浩司がタイへ発した朝。
私は玄関で彼の背を見送りながら、何も言わなかった。
あのの浩司は、10、自分が全てを失ってこののに崩れ落ちるとは像もしていなかっただろう。
そして私自もらなかった。
夫を失うことが、を失うことではないということを。
むしろあの。
古いボストンバッグを持って玄関をた瞬から、私はようやく自分のへ戻り始めていた。
オーブンから、焼けたチーズのりが漂った。
「健、できたわよ」
「今く!」
るい返事が聞こえた。
私は皿を2枚並べた。
窓からのが入り、カーテンを静かに揺らしている。
誰の顔も窺わなくていい。
誰かのためだけにきなくてもいい。
私は自分ので温かい皿を持ち、ゆっくりとテーブルへ運んだ。
今もまた、私自のの1が始まっていた。
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