"1800円の御膳が1万8000円になった日――覆面社長が見つけたホテルの嘘" 第12話
午237分の箱
美佐子は画面を見たままかなかった。
映像のの彼女は、事務から両腕で段ボール箱を抱え、従業員用通を抜けて駐へ向かっている。サングラスも、紺の属ケースも、今と同じだった。
「古い備品を持ち帰っただけです。私の会社の物ですから」
「その箱は、今どこにありますか」
捜査員が尋ねると、美佐子は藤堂へ助けを求めるように振り返った。しかし藤堂は俯き、濡れたハンカチを握りしめている。
駐のに積んであると分かり、捜査員はを任で見せるよう求めた。美佐子はしばらく拒んだが、野から会社類の持ちしが疑われていると説され、最には自分での鍵をけた。
箱のには、未使用の領収、ホテルの角印を押したの用、客の名と請求額を記した覧、青葉クリーンサービスの請求控えが入っていた。だけで正の全てが証できるわけではない。それでも、井のノート、POS履歴、防犯映像、会社の振込記録と照するためのな資料だった。
覧には、通常料と実際の請求額が2列で記され、支払いを拒みかけた客の名には赤い丸が付いていた。澄の名にも丸があり、横には「孫・警察」とかれている。彼女が会計に漏らした言葉を、脅しに使える報として残していたのだ。
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私は面を見つめたまま、喉の奥に込みげたりをゆっくりみ込んだ。
野は1枚ずつ撮し、捜査員へ資料目録を渡した。捜査員もそので全員を連するようなことはせず、藤堂夫妻には今の連絡先と資料を処分しないよう告げた。警察の調査は、保されたデータや座資料、関係者の供述を突きわせてからめられる。
夜8、私は臨休業をらせるをレストラン入へ貼った。理由を「設備点検」とごまかさず、会計処理にな疑いが判したためと記し、専用の相談窓も載せた。
ホテルの従業員には、客の個報や調査内容をへ漏らさないことだけを求め、疑いのない者まで犯扱いしないよう伝えた。厨責任者は唇を噛み、「料理まで偽物だとわれるのでしょうか」と尋ねた。私はをげ、の信用を取り戻すまで雇用と与を守ると約束した。
誰もいなくなった客席には、めただしの匂いが残っていた。昼には満席だった窓際の席も、澄が脅された柱のも、同じ暗さに沈んでいる。私は彼女へ話し、翌朝、ホテルで正式に返と謝罪をしたいと伝えた。
「私だけ返してもらうわけにはいきません」
澄はためらいながら言った。
「同じことをされたにも、返してあげてください」
「確認できた486件すべてに連絡します。
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連絡先が分からない17件についても、申しを受けられるよう公表します」
話の向こうで、澄が静かに息を吐いた。そのさな音を聞き、数字の奥にいるひとりへ返すまで、この問題は終わらないのだと改めてった。
その、野のスマートフォンが鳴った。相は、経済誌の記者だった。
通話を終えた野が、険しい表で私へ画面を見せる。記者へ匿名で送られたという内部文には、〈特別席料制度 導入承認〉とかれ、そのに私の子印が表示されていた。
承認は2。請求が始まった期と致している。
文番号も社内式も本物に見えた。このまま記事になれば、ホテル側が組織に10倍請求を命じ、藤堂だけへ責任を負わせようとしているように映る。被害者への連絡を始めるに、会社そのものの信用が崩れかねない。
「社、この文に当たりはありますか」
私は画面を拡し、自分の名のにある印を見つめた。
「ありません。私は、こんなものに承認していない」
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