"ATMで呼ばれた「奥様」" 第5話
夕方、買い物から戻ると片付けは終わっていて、悠馬は縁側で煙を吸っていた。
に1本か2本しか吸わないだった。
「何かてきた?」
「いや」
しがあった。
「何もない」
あの、悠馬が押入れの奥から私の古い学ノートを見つけたことを、私はらなかった。
そして、そのノートに、私が誰にも見せるつもりのなかった喫茶のをき続けていたことも、彼は初めてった。
けれど当の私は、そんなことなど何もらないまま婚した。
そして3が経った。
仕事を失い、貯が7300円になり、とうとうカードを使うが来た。
央の応接には、い机と布張りの子が4脚あった。
壁に景画が掛けられ、の音がほとんど入ってこない。
私はコートも脱がずに座った。
案内してくれた女性が名刺をした。
「佐々と申します」
私は財布から免許証をした。
そこには《朝倉美》とある。
佐々さんは確認したあと、静かに言った。
「まず、ATMでお取り扱いできなかった理由からご説いたします。この座は現、部のお取引を制限しております」
「凍結されているんですか?」
「凍結ではございません。ご登録所へお送りした郵便物が繰り返し戻ってきておりまして、ご本様の確認が必な状態になっております」
登録所。
3まで悠馬と暮らしていた部だった。
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私は婚、所変更をしていない。
そもそも座そのものをほとんど忘れていた。
「いつからですか?」
「昨11からです」
「1も?」
佐々さんは頷いた。
「はい。1、お待ちしておりました」
その言い方が気になった。
事務な調ではなかった。
「どうして私を?」
佐々さんはすぐに答えず、私のののカードを見た。
「1つだけ、先に確認させてください。暗証番号をご主様から聞いておられますか?」
聞いていた。
忘れようとしても忘れられない。
私は息を吸った。
「0427です」
佐々さんは目を閉じ、さく頷いた。
「違いございません」
机のから、角が潰れた茶い封筒がされた。
表に黒いペンで文字がある。
その字を見た瞬、指先から力が抜けた。
悠馬の字だった。
丸みがなく、しに傾き、「」の縦棒だけ妙にい。
そこには、
《0427を覚えていてくれた美へ》
とかれていた。
「これ……いつ預けたんですか」
答えようとした佐々さんの代わりに、応接の扉がいた。
髪の配の男性が入ってきた。
「支の宮原と申します」
彼は座っても着のボタンをさなかった。
姿勢を正したまま、私を見た。
「朝倉様。こちらをお読みいただくに、どうしても先にお伝えしなければならないことがございます」
嫌な予がした。
「何ですか」
宮原支は、度だけ息をえた。
「瀬悠馬様は、昨119、交通事故でおくなりになっております」
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私は、を握ったままけなかった。
3、憎んでいた。
どこかできているとっていた。
いつか偶然会ったら、何を言ってやろうかと何度も考えた。
その相は、もう1からこの世にいなかった。
それなのに。
なぜ、悠馬はぬ直までに私の名を残していたのか。
なぜ、婚した私を「奥様」と呼ばせたのか。
そして、この封筒のに、何をいたのか。
私は震える指で、ようやく封をいた。
は3枚あった。
便箋でも価なでもない。どこにでも売っている、い罫線入りのだった。
枚目のには、きして消した跡が残っていた。
私は最初のを読んだ。
《美へ。たくしてすまなかった。あののことを何度もい返している。順番にく。うまくけないとうが、順番だけは違えないようにする》
悠馬らしい文章だった。
話すのがなは、くも最初に順番を気にする。
《3の、押入れの奥の箱をけた。学ノートがてきた。勝に見て悪かった》
胸が鳴った。
消えていた段ボール箱。
悠馬が婚のに理していた押入れ。
全てがつながった。
ノートには、私が20代の頃からいていた喫茶の構が残っていた。
名の候補。
のにしたいみ物。
窓際に1で座れる席。
誰かが泣いていても、理由を聞かない。
最のページくには、結婚の付もあった。
私はを諦めたのではない。
誰にも見せず、々続きをいていた。
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