みかん小説
本棚

"開けなかった手紙" 第2話

男は阪、次男は尼崎、末娘は堺。

3ともすでに庭を持っており、父親に何度も島をるよう勧めていた。

娘が盆に帰ってきたにも、同じ話になった。

「お父さん、もう1で島にいるのは危ないよ。何かあっても、病院までに乗らないといけないんだから」

「何もない」

「何もないうちに来てって言ってるの。うちなら部を1つ空けられるし、お仏壇だって置けるから」

源次郎は縁側から畑を見た。

「まだ畑がある」

「畑なんて、自分でべる分しか作ってないでしょう」

「それでも畑は畑だ」

娘はため息をついた。

「お母さんのお墓だって、こっちから来られるよ」

「墓だけの話やない」

それ以、源次郎は何も説しなかった。

島では昔から頑固者としてられていた。度決めたことはなかなか変えず、妻がくなったも子どもたちが「今度こそ緒に暮らそう」と勧めたが、葬儀が終わると翌朝からいつも通り畑へた。

それから7。

所のが1軒、また1軒と空きになっても、源次郎だけは島の番いに残った。

そんな源次郎のには、毎週必ず1通のが届いていた。

第1週は阪の男。

第2週は尼崎の次男。

第3週は堺の娘。

第4週になると、また男。

どうやら3で相談し、順番を決めているらしかった。

曜の午。

正吉が坂をると、源次郎は縁側で網を繕っていた。

広告

「崎さん、郵便だぞ」

「おう」

正吉は鞄から封筒をした。

「今は阪からだ」

源次郎は差を見ることもなく受け取った。

「分かっとる」

「字を見たのか」

「男は昔から字がでかい」

それだけ言うと、源次郎は封筒を脇へ置いた。

次の週には尼崎から届いた。

その次は堺。

のものいも、3の子どもから交代でが来た。

正吉はそれを見るたび、れて暮らしていても父親を気にかけているのだろうとった。

源次郎も返事をいていた。

に何度か、正吉が配達に来ると封筒を差しす。

「これ、してくれ」

「阪か」

「ああ」

翌週には尼崎。

その次には堺。

のやり取りだけ見れば、親子の仲が悪いようにはえなかった。

に入った頃、源次郎は腰を痛めた。

数畑へなかったため、所の老が配して正吉へらせた。

そのの午、正吉は玄関で何度か声をかけた。

「崎さん?」

奥から声がした。

「いる。入ってくれ」

正吉は靴を脱いだ。

何も配達に来ていたが、のへがることはほとんどない。

「腰、丈夫か」

「寝とれば治る」

「そんなこと言って悪くしたら、本の病院まで運ぶの変だぞ」

「寄りの腰くらいで騒ぐな」

声だけは相変わらず元気だった。

正吉は苦笑し、を持って仏へ入った。

「今は堺からだ。ここに置いとくぞ」

仏壇のへ封筒を置こうとしただった。

広告

正吉のが止まった。

仏壇の横に、何通もの封筒が積まれていた。

10通どころではない。

30通。

いや、それ以ある。

男から。

次男から。

娘から。

どれも正吉には見覚えがあった。

自分がこのへ届けたものだ。

しかも乱雑に放置されているわけではない。折れないよう何束かに分けられ、紐で丁寧に結ばれている。

正吉は1つをに取った。

そこで、もう1つのことに気づいた。

封筒の端が、どれもきれいだった。

封した跡がない。

「崎さん」

正吉は縁側を振り返った。

「これ……読んでないのか?」

源次郎はを見たまま答えた。

「そのうち読む」

「そのうちって、のもあるぞ」

「あるな」

「通も?」

「暇になったら読む」

正吉はわず呆れた。

「今より暇ながあるか」

源次郎は肩を揺らして笑った。

だが、理由は話さなかった。

数、帰りの渡しで、良平は正吉に尋ねた。

「本当なんですか。源さん、子どもから来たを通も読んでないって」

正吉はのベンチに腰をろし、子を膝へ置いた。

「ああ。仏壇の横にほどあった」

「毎週来てるんでしょう?」

「毎週だ」

「じゃあ、字が読めないとか」

「聞は毎読んどる」

良平は腕を組んだ。

「子どもと喧嘩してるんじゃないですか」

「返事もしてる」

「読まずに?」

良平が声をげた。

正吉にも分からなかった。

源次郎は届いた封筒を捨てるわけではない。むしろ折れたり汚れたりしないよう、事に束ねている。

それなのに、けない。

「何をいて返事してるんです?」

「元気だとか、畑がどうだとか。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: