"夫に「姉のふり」を頼まれた日" 第1話
「分だけ、俺の姉ということにしてくれ」
ホテルの宴会へ続く廊で、夫の修平は私の腕をつかんだ。妊娠かの腹をかばってを振りほどくと、彼は会の扉を気にしながら声を落とした。
その、品包装会社に勤める修平は、創周の式典で営業部への昇を発表される予定だった。私は席するつもりではなかったが、会社の総務から「奥様にも内助の功をたたえる束をお渡しします」と話を受け、夫が忘れた企画も届けるため会へ来た。
ところが司会者に名を呼ばれてちがったのは、私ではなかった。修平の部で歳の坂莉奈が、淡い青のドレスで夫の隣へみた。修平は彼女の腰へを添え、同僚たちはへ「来の結婚も楽しみですね」と声をかけた。
私は会の方でけなかった。腹ので娘がくき、片で子の背をつかんだ。修平はそこで初めて私を見つけ、笑顔を凍らせた。
「どういう?」
「今だけ黙ってくれ。昇が正式に発表されたら、全部話す」
夫の説では、社内では私たちがく別居し、婚協議も終わっていることになっていた。莉奈とは次のに再婚する予定で、司にもそう話している。今ここで妻が現れれば、部との関係や申告内容が問題になるという。
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「では、私のお腹にいるこの子は、あなたの姪ということ?」
背でグラスの触れる音がした。莉奈が廊にち、私の腹と修平の顔を交互に見ていた。
「今の話、どういうことですか」
修平は、私がになって押しかけてきたと説した。婚届をさず、の男との子どもまで自分の子だと言い張っている。莉奈へは以からそう話していたらしい。
私は携帯話をき、朝届いた夫のメッセージを見せた。《今夜は遅くなる。帰ったら赤ちゃんの名を決めよう》《曜はベビーベッドを見にこう》。送信刻は式典のだった。
莉奈の顔から血の気が引いた。修平は、夫婦関係を穏便に終わらせるための社交辞令だと言った。まれてくる子どもへベッドを買う話まで、彼のでは社交辞令になるらしい。
会から総務部がてきた。始が遅れているためともへ戻るよう促したが、莉奈は「私は奥様ではありません」と束をへ置いた。
修平は私へ、頼むから席に座って何も言わないでくれと懇願した。私は姉のふりもしなければ、会で鳴るつもりもない。ただ、総務から正式に招待を受けた法律の妻として、自分の席を確認してほしいと答えた。
総務部は名簿を調べ、困惑した。族欄には《配偶者なし》とあり、招待の話は古い事記録に残る私の番号を見た担当者が、確認せずかけたものだった。
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その、宴会のスクリーンに修平の受賞企画が映った。商品のパッケージ案、彩計画、購買層分析。私は目で、それがに自分で作った提案だと分かった。
夫は妻だけでなく、私の仕事まで別の名へ変えていた。
私はフリーランスのパッケージデザイナーとして働いてきた。妊娠は案件を減らしていたが、までは品会社や印刷会社から直接依頼を受けていた。スクリーンに映ったのは、方の調料メーカーへ提し、予算の都で保留になった企画だった。
修平は当、参考に見せてほしいと言った。私は夫婦の会話として、分析と試作データを説した。しかし完成ファイルを渡した覚えはない。自宅の共パソコンからコピーした能性があった。
式典は分の休憩になった。会社役員、総務、修平、莉奈と私が控へ集まり、私は画面の資料をもう度見せてもらった。企画名こそ変えてあるが、試作品に付けた管理番号と、私独自の見本の順番まで同じだった。
「妻が庭内で伝ってくれたものです」
修平は急に説を変えた。自分が構し、私が体裁をえた夫婦共同の企画で、会社へ無償提供することにも同していたという。莉奈も資料を夫から受け取り、営業用にまとめただけだと話した。
私はそので盗用だと断定しなかった。元データ、作成履歴、以の提記録を確認しなければ、私の記憶だけでは争えない。
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