"失踪した妻を道の駅で見つけた――「来ないで」と怯えた理由" 第6話
だから私は、結婚活へ仕事の肩きを持ち込みたくなかった。
「妻を見つけた」
佐々が息を呑んだ。
結の失踪について、彼もっていた。
「ご無事ですか」
「きている。ただし半に障害があり、かなり衰している」
私は所を伝えた。
「信頼できる医療関と搬送段を頼む。岐阜県内の関係先は避けたい」
「分かりました」
「警察への連絡は弁護士経由で準備してくれ。まだかないでほしい」
「理由を伺っても?」
私は吉兼の名をした。
数秒。
佐々がく答えた。
「承しました」
彼はそれ以聞かなかった。
40分ほどして、県の医療関と連携した民搬送が到着した。
医師ではなく救急救命の資格を持つスタッフも同乗している。
結をストレッチャーへ移す。
杏奈は泣きそうな顔になった。
「ママ、またどっかくの?」
結の顔が歪む。
「違うよ」
娘の頬へを伸ばした。
「お医者さんに診てもらうだけ。今度はちゃんと帰ってくる」
「絶対?」
「絶対」
半、その言葉を言えなかった母親。
杏奈はく頷いた。
結は私へ宝くじの箱を差しした。
「これ」
「持っていていいのか」
「誠さんに預ける」
私は受け取った。
「に何がある?」
「底」
結は疲れ切った声で言った。
「底をして」
搬送がる。
私は見えなくなるまで見送った。
杏奈とへ戻る。
「ママ丈夫?」
「ああ」
「パパが助ける?」
広告
「みんなで助ける」
私は部座席に置いた箱を取った。
古いプラスチック。
細かな傷。
には売れ残った宝くじ、ボールペン、計算用のメモ。
見、何もない。
底に敷かれたい布。
触る。
部だけい。
端を見ると、自然な縫い目がある。
私は慎に糸をした。
からてきたのは、型のICレコーダーだった。
黒い本体。
傷だらけ。
源を押す。
反応なし。
の充ケーブルを確認すると、幸い端子がった。
数分待つ。
画面が点いた。
録音データ。
1件。
付。
結が消えた夜。
「杏奈」
「なに?」
「しだけ、パパ静かにするから待ってて」
「うん」
私はイヤホンをつけた。
再。
の。
枯葉を踏む音。
結の息。
『お父さん、こんな夜に何の話なの?』
私は目を閉じた。
宗郎の声。
『会社の今に関わる話だ』
次に武志。
『この類に署名しろ』
結。
『こんなもの、今ここで署名できない』
宗郎。
『余計な弁護士など入れるな。族の問題だ』
『おじいちゃんが私に残した株でしょう?』
『女のおには必ない』
私は奥歯を噛んだ。
録音は続く。
言い争い。
音。
結の声。
『お兄ちゃん、して!』
武志。
『おさえいなければ全部まとまるんだよ!』
鳴。
雑音。
衝撃。
しばらくだけ。
そして。
宗郎の声。
『何をしてる』
武志。
『……落ちた』
『を見ろ』
『見えない』
沈黙。
次に。
武志のい笑い声。
『これで株は戻るんだろ』
宗郎。
『馬鹿。まず事故に見せる。にもを置け。
広告
夫には男と逃げたとわせればいい』
録音が終わった。
私はしばらくけなかった。
鳴りたい。
今すぐ敷へき、2を殴りたい。
そううはずだった。
だが実際には、異様なほどが冴えていた。
だけでけば、証拠を失う。
私は音声データを複製した。
社内の全なストレージ。
弁護士。
自分の別端末。
さらに佐々へ送った。
数分。
話が来た。
「確認しました」
佐々の声もかった。
「これは……」
「ああ」
「警察へすぐ提できます」
「頼む。ただし俺は予定通り吉兼へく」
「危険です」
「向こうはまだ、結がきていることをらない」
「代表」
「証拠隠滅へかれるに、どこまで自分たちで話すか確認したい」
佐々は沈黙した。
「なら、弁護士と警察へ所を共してください」
「ああ」
「それから、吉兼産業との契約についてですが」
私はハンドルへを置いた。
「資料を準備してくれ」
3。
吉兼産業が経営危に陥った。
約300億円規模の資支援をったのは、私たちの会社だった。
宗郎も武志も。
目ので何度も「無能な男」と呼んできた相が、その最終決裁者だったことをらない。
を再びらせた。
杏奈は助席のチャイルドシートで、し疲れたのか黙って窓を見ている。
「パパ」
「ん?」
「ママ、今帰れる?」
「今は病院に泊まるとう」
「じゃあ?」
「しがかかるかも」
杏奈は寂しそうにした。
「でも、もう会える」
私は言った。
「会えなくなることはない」
それだけは守る。
吉兼がある町へ入る。
私はりながら、3の仕事をいしていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 449 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2860 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 208 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695