みかん小説
本棚

"昭和39年、姉の「元気です」に隠された嘘" 第3話

》

それだけだった。

子は裏返した。

消印は板区。

わず鳥肌がった。

質問に答えていない。

「同じにいる」ときながら、かられた別の所で投函している。

その夜、子は返事を母へ見せなかった。

節子は姉妹だけでをやり取りしていることをっていたので、「子から何か来たの」と尋ねたが、子は「元気だって」とだけ答えた。

嘘ではなかった。

姉自も。

ずっとそういている。

昭3910、京オリンピックが始まった。町の器のには黒テレビを見るが集まり、学帰りの子も友達と垣のろから会式を眺めた。

画面の京はるかった。

った。

しい建物。

勢の国。

テレビのには、子のらない「しい本」が映っている。

「京ってすごいね」

友達が言った。

子は頷かなかった。

あの町のどこかに。

姉がいる。

でも子の葉からは。

画面に映る京が。

つも見えてこない。

《元気です》

ただ、それだけだった。

テレビのの京が華やかになればなるほど。

子には。

姉のが。

暗く見えるようになっていった。

末がづくと、節子は子が正には帰ってくるものとって準備を始めた。餅をしめにつき、子が好きだった黒豆も取っておき、器棚の奥から子用の茶碗をした。「京の料はいいって言うけど、汽賃もいからね」

広告

とでは言いながら、顔はらかに嬉しそうだった。

ところが1227。

届いた葉には、こうかれていた。

《正はが忙しいので帰れません。元気です。》

節子はいその文字を見ていた。

「仕方ないね」

最にはそう言って笑った。

けれどその晩、子は夜にをみに起き、台所で母が座っているのを見た。には子の茶碗があり、きれいな布巾で何度も同じところを拭いている。

「母ちゃん」

声をかけると、節子は驚いて振り返った。

「何だい。く寝なさい」

「姉ちゃん、忙しいんだって」

「分かってるよ」

「来は帰ってくるよ」

節子はしだけ笑った。

「そうだね」

それ以、とも言わなかった。

母だって。

本当は。

配なのだ。

ただ。

「元気です」

といてある以。

信じるしかない。

がけ、昭402。

町につの噂が流れた。

子と同じ学から集団就職で京へた女・藤子が、突然帰ってきたという。

「体を壊したらしい」

「がわなかったんだって」

「親が迎えにったらしいよ」

たちは好き勝に話していた。

子はそのの放課、子のへ向かった。

何度ものをき来したあと、い切って戸を叩いた。

てきた子は、京へくより痩せていた。

「子ちゃん?」

「子さん。ちょっと聞きたいことあるんだけど」

「何?」

「子姉ちゃんのこと、ってる?」

広告

子の表が変わった。

「ちゃん?」

「京で会った?」

子は頷いた。

「何回か会ったよ」

子の胸がく鳴った。

「どこで?」

「うちの寮」

「子さんの寮?」

「そう」

子は言葉を失った。

子の職は子とは別ので、寮もかなりれているはずだった。

「なんで姉ちゃんがそこにくの?」

子はすぐには答えなかった。

「ちゃんから何も聞いてない?」

「何を?」

「……そっか」

子は度の奥を振り返った。

それから。

「ちょっと待ってて」

と言って姿を消した。

数分。

通の封筒を持って戻ってきた。

「これ、見て」

差欄には。

《藤子》

宛先は。

青森県にむ子の両親。

けれど。

封筒の裏にかれた所も。

の便箋の文字も。

子は目で分かった。

子の字だった。

《父ちゃん、母ちゃんへ。私は元気です》

《仕事はし変ですが、同じ部のたちが優しくしてくれます》

《このの休みにはちゃんという同じ青森の子が遊びに来ました》

子は顔をげた。

「姉ちゃんがいたの?」

子は頷いた。

「うん」

「なんで?」

子は便箋を受け取りながら、し困ったように笑った。

「私だけじゃないよ」

「え?」

「のミツちゃんも。墨田のカヨちゃんも、板にいるトシちゃんも。ちゃん、休みになるとみんなのところ回ってたから」

子のので。

卓袱台に並べた葉が。

枚ずつ浮かんだ。

区。

荒川区。

区。

墨田区。

板区。

すべて。

姉が。

仲の寮へった所だったのか。

転職していたわけではない。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: