"毎月20万円送っていたのに、82歳の母は皿を洗っていた" 第8話
社は会いたくないそうです
「代表も、ごじだとっていました」
駅の喫茶で、岡田は膝に置いていた鞄をいた。8にグループをった元財務責任者だった。関連業者の古い契約を調べるうちに、彼が提した照会の記録が見つかり、健が連絡を取った。
岡田は当の報告の控えを机へした。透な袋に入れたまま保管してあったには、アオバへの支払いに関する質問が並んでいた。
「業務の報告がないまま、委託費だけが増えていました。直接説したいと、面談も申し込んだんです」
「僕は、この報告を受け取っていません」
「専務からは、社は私に会いたくないと聞きました。経営判断にをしすぎる、と」
健はカップを置いた。母と勝に向けられたのと同じ言葉が、ここでも使われていた。
当、岡田は取引先との調ができず、自分から退職を希望したと聞かされていた。健がそう伝えると、岡田は袋の端を押さえた。
「辞めると決めたのは私です。でも、疑問をしたから必な会議にも呼ばれなくなりました。私が残っても、数字を確かめられる所がなかった」
健はその説を途で止めなかった。岡田が鞄へを戻したところで、自分から会って聞くべきだったと謝った。
「この控えを、調査に使わせてもらえますか」
広告
「構いません。ただ、これだけで現の正まで分かったことにはしないでください」
「実際の仕事と照します」
岡田はうなずき、類のから事の番号を1つ選んだ。当、請求内容を説できるが誰もてこなかった案件だという。同じ取引先が関わるしい契約を調べるにも、掛かりになるはずだった。
数、健は調査担当者とともに、グループが運営するホテルを訪れた。従業員用の通から設備へ入ると、管理担当者が扉を押さえて待っていた。
調べていたのは、過5の契約だった。港設備とアオバの請求資料では、同じフロアの空調設備が、それぞれから納められたことになっていた。
担当者は設置記録をき、壁際の器の銘板を示した。資料に記された製造番号と致していたが、現が受け取ったのは1回だけだった。
「もう方の検収は、私が作ったものではありません」
2枚を並べると、別の事を示すはずの欄に、同じ付と器の番号が使われていた。さらに、港設備の作業を実際に請け負った会社から、アオバ経由の別事は受注していないと回答が届いた。
健は狭い通で類を閉じ、従業員が通れるように脇へ寄った。械は今も、客へ空気を送り続けている。その仕事にねて、実しないもう1件の代が払われた疑いがあった。
広告
「同じ番号の使い回しがないか、の契約も調べてください」
調査担当者はうなずいた。岡田の控えにあった疑問が、現物と取引先の回答によって、確認できる問題へ変わり始めていた。
会社へ戻ると、財務担当者が今の支払予定を持ってきた。そのに、アオバを窓にした設備更費があった。関係する見積には、港設備の名も記されている。
予定額は2億4000万円で、検収に支払う契約だった。
健は、その支払いの根拠となる納品記録を確認するよう求めた。資はまだ実で、通常の支払までは数残っていた。
「この案件には私の確認を加えてください。資料がそろうに、自でめないように」
担当者が予定表に印を付けた。健は承認済みの伝票をいた。最の欄には、またの署名があった。
今度の2億4000万円は、まだ会社の座に残っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 199 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111