"3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日" 第5話
2枚の証券にかれた額
「類は、1件が5000万円。もう1件も同額です」
刑事の説を聞きながら、私は机に置いたコップを見ていた。計は1億円になる。娘が働いて受け取る与でも、治療に充てるためのおでもなかった。
「娘がくなったら、あのが受け取るおなんですね」
「契約内容については、保険会社にも確認をめます」
刑事は断定を急がず、加入したころの庭の様子を尋ねた。契約の付は約1で、さやかはまだ元気に会計の仕事をしていた。夕のあとも卓で資料をき、数字を指で追っていた姿を覚えている。
保険を見直した夜、健が説していた。
「どちらかに何かあっても、残された方が困らないようにしないと」
さやかも担当者の説を聞いて加入したという。私は、先のことまで考える夫婦になったのだとい、のお茶をした。そのとき、額を確かめることはなかった。
病院の相談員に紹介先を教えてもらい、私は弁護士にも会った。松井という女性の弁護士は、娘の今の治療、の権利関係、健から連絡があったのことを、順に聞いてくれた。
私はの購入の類を鞄からした。あのまで失えば、娘の戻る所もなくなる気がしていた。
松井弁護士は登記と支払いの記録を確認し、私のを聞いてから言った。
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「所者は恵子さんです。健さんが、夫だからという理由でこのを売ることはできません。何か署名を求められても、そのでは応じずに相談してください」
私は類を袋へ戻した。娘の治療をに任せることと、何も確かめずに従うことは違うのだと、そこでやっと考えられた。
数が過ぎた。病院とを往復するにも、捜査はんでいた。健には、佐藤由美という25歳の交際相がいたとらされた。
「阪への張とお聞きでしたが、その張の事実は確認できていません。当は都内にいたとみています」
私は、玄関に置かれていた旅鞄をいした。宿泊の荷物は本物だった。き先だけが違っていた。
由美は逮捕をり、保していたやり取りを警察に提したという。妊娠したと健に伝え、今の活について話しっていた。どこまで事をっていたのかは、本の説だけで決めずに確認していると刑事は言った。
私のに関する記述を確かめたいと、部のやり取りを示された。
『奥さんと別れる話、どうなってるの』
それに対する健の返事を、私は読み直した。
『今婚したら、保険のは入らない。病気なんだから、もうし待てばいい』
には、宅についてのやり取りもあった。
『さやかがいなくなったら、母親には施設へ移ってもらう。
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を売る話は俺がめる。あのは俺に任せておけばだとってるから』
その文面の付は、私が娘の好きな茶碗蒸しを作ろうとして、健に止められたころだった。私はもう1度付を見た。娘のべられるものを探していた同じに、彼は娘がいなくなったあとのを数えていた。
「私が売却を任せたことはありません。施設へ入る相談もしていません」
声にして答えると、刑事が記録した。私は自分のの記述から線を戻し、最初の返事をもう1度見た。
もうし待てばいい。
病状がよくなるのを待つ言葉なら、何度も聞いていた。同じで、さやかがいなくなるのを待てと言っていたのだった。
そのの面会で、私は娘の爪を見た。伸びた端を護師がえてくれていた。寝具は清潔で、の届くところに呼びしボタンがあった。まだ自分で何でもできる体ではない。それでも、助けを呼べる所にいる。
「今も来たよ。のことは丈夫だから」
保険や由美の話を、私は持ち込まなかった。娘に今聞きたいのは、つらいところがないかということだった。
さやかはしの、私の顔を見ていた。以のように目がってもすぐ眠ってしまう様子とは違い、何かを確かめようとしていた。
「お母さん……ずっと、来てくれてたの」
「来ていたよ。今も、も来るつもり」
してもらえるとって答えたのに、娘は目を伏せた。掛け布団の端を、指でさく折り込んだ。
「私のこと、もう嫌になったんじゃなかったの」
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