"元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒" 第4話
の保険更の封筒をテーブルに置いたままにしていたという、それだけの理由で鳴られた。
「何で届いたに言わないんだよ」
「でいいとったから」
「そうやって何でも勝に判断するな」
「拓也、仕事のストレスを私にぶつけないで」
言った瞬。
肩をく突かれた。
背が壁にぶつかった。
部が静まり返る。
拓也自も、自分が何をしたのか分かったらしい。
「……ごめん」
すぐに顔を変えた。
「本当にごめん。俺、どうかしてた」
まただ。
る。
私が怯える。
謝る。
優しくなる。
私はその流れを初めて、最初から最までつのものとして見た。
翌。
拓也が休勤へた、私はで実へ向かった。
誠は何も聞かず、いつものように茶を淹れた。
しばらくしてちがると、茶箪笥の引きしから茶い封筒をつ取りした。
「これ、何?」
「読んで嫌なら捨てろ」
にはA4のが枚だけ入っていた。
探偵の調査でもなければ、拓也の会社の報でもない。
そこにかれていたのは、付とい文章だった。
《93 織、頬に自然な痣。夫の話で線を落とす》
《910 昼の約束をキャンセル》
《917 再びキャンセル。話、午5を過ぎると急に落ち着かなくなる》
《922 「私がげさだとっているのか」と尋ねる》
《928 夫同伴で来訪。夫、会社の所を聞いた理由を自ら確認》
が震えた。
広告
秘密などつもなかった。
全部、私がっていることだった。
けれど枚ののへ順番に並べられると、全く違って見えた。
私は来事が起きるたび、「今回だけ」と切りしていた。
拓也が謝れば、そのにあったことを消した。
だから自分では、何も積みなっていないつもりだった。
の番。
父の字で、しだけきくかれていた。
《これは捜査記録じゃない》
そのにもう。
《おが「したことない」と言って消してきたかだ》
涙が落ちた。
「お父さん……」
そのだった。
テーブルのの私のスマートフォンが震えた。
拓也からだった。
メッセージは。
《今から迎えにく》
私は顔をげた。
誠は封筒にも、スマートフォンにもを伸ばさなかった。
ただ静かに言った。
「帰るかどうかは、おが決めろ」
拓也からの着信は10分のに6回続いた。
私はスマートフォンを伏せたまま、父がいた枚のを見ていた。しい事実は何もかれていないのに、そこには私がかかけて見ないふりをした現実が逃げなく並んでいた。
「ここに泊まってもいい?」
誠は驚かなかった。
「押し入れに布団がある」
それだけだった。
私は拓也へいメッセージを送った。
《今は父のに泊まります。、必な荷物を取りに戻ります》
すぐに話が鳴った。
今度はた。
広告
「おい、どういうことだよ」
鳴り声がに刺さる。
「何で急に泊まるんだ。俺の夕飯どうするんだよ」
以なら、その言だけで私は謝っていた。
蔵庫に何があるか説し、「ごめんね」と何度も言っただろう。
でも私は、目ののを見ながら答えた。
「今は帰らない」
「お義父さんに何か言われたのか」
「違う」
「じゃあ何だよ」
私は度息を吸った。
「私が決めたの」
話の向こうが静かになった。
その数秒、拓也はい声で言った。
「織、おちょっとおかしくなってるぞ」
その言葉で、議なくらい迷いが消えた。
私が怖いと言えば、考えすぎ。
帰らないと言えば、おかしい。
いつも私の覚の方が違っていることにされる。
「連絡する」
私は自分から話を切った。
は震えていた。
けれど、胸の奥には今までじたことのない静けさがあった。
夜遅く、昔使っていた自分の部へ布団を敷いた。結婚してから物置にくなっていた部には、代に使っていた本棚と、さな勉机がまだ残っている。
廊を通った誠へ声をかけた。
「お父さん」
「何だ」
「私、もう『したことない』って言うのやめる」
父はしばらく黙っていた。
「そうか」
部の戸が静かに閉まった。
翌朝、スマートフォンの源を入れると、拓也から20件以のメッセージが届いていた。
最初はりだった。
《今すぐ帰れ》
《親を巻き込むな》
《夫婦の話だろ》
夜を過ぎた頃から、文章は謝罪に変わっていた。
《言いすぎた》
《俺が悪かった》
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 413 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 608 -
完結第14話
「死産」と告げた院長と20年目の出生記録
20年前、出産した娘を「死産でした」と告げられた私・佐藤しず子。しかし私は、麻酔の中で確かに聞いた産声を一度も忘れられなかった。 真実を確かめるため、私は清英産婦人科医院の清掃員として20年間働き続け、誰にも気づかれず院内の秘密を探ってきた。そんなある夜、若い看護師から「まだ間に合います。あなたの娘さん生きています」と書かれた紙を渡される。 やがて地下の保管庫へ忍び込んだ私は、自分の出産記録の隣に「佐藤女児――転送」と記された手帳を発見する。 さらにそこには複数の新生児と金銭の記録まで残されていた。娘を奪ったのは誰なのか。そして病院は20年間、何を隠してきたのか。見下され続けた“掃除婦”は、集めた証拠を手に院長・安藤剛と対峙する――。真相|修羅場2.1万字5 407 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 199 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2732 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695