"日本一情の深い父の裏の顔" 第3話
言葉が、喉の奥でつっかえた。
警察の捜査資料。 何度もテレビで擦られるように放映された、あののタイムライン。
平成。 休みの族旅。 き先は伊豆の温泉旅館。
帰の午分、名速・老名サービスエリアのり線。 混雑する駐で、菜は「トイレにく」と言ってをりた。 それが、族が見た妹の最の姿だったはずだ。
サービスエリアの駐で、は完全に止していた。 アイドリング状態で、父と母が菜の帰りを待っていた。 それが、警察の調にかれた『確定した事実』だ。
止しているのシートベルトのプリテンショナーが、なぜ爆発する? なぜ、歳の子供の体を縛り付けたベルトが、4センチも伸びきるほどの衝撃を受ける?
「……それだけじゃねえ」
健さんの声が、さらにくなった。
彼は座席の元に転がっていた、シートベルトの受け側――プラスチック製のバックルを拾いげた。
バックルの赤い『PRESS』ボタンは、斜めに陥没したまま固着していた。
「ボタンが押し込まれた状態で、で具が噛みってんでる。……拓、プライヤー持ってこい」
俺は震えるで具棚からプライヤーを取りし、健さんに渡した。
健さんはバックルの脂カバーの隙にマイナスドライバーをねじ込み、引に殻を割りけた。
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バキッ、という乾いた破壊音が、静まり返ったに響く。
び散った黒い破片のから、何かがのコンクリートのに転がり落ちた。
カラン、とい属音が鳴る。
それは、砕けたいプラスチックの破片と、引きちぎられた赤いナイロンの平紐だった。
俺の線が、の点に縫い付けられた。
黄に、褪せた防犯キャラクターのイラスト。 割れたプラスチックの裏側には、油性マジックでかれた、見覚えのある拙い平仮名が残っていた。
『おおもり なつき』
学から配られた、防犯ブザーの残骸だった。
紐の切断面は、引っ張られて千切れたのではない。 鋭利な刃物で、斜めにスパッと切り落とされていた。
「これ……」
声が震えた。
「菜が、いつもランドセルやのベルトループに付けてたやつです。……あのも、お気に入りの黄いワンピースの腰に、ぶらげてました」
「なんでそれが、バックルの隙に挟まってんだ?」
健さんが破片を拾いげ、にかざした。
「ピンを引き抜くための紐を、誰かがハサミかカッターで切断して……本体ごとバックルに無理やり突っ込んで、噛み潰したような形になってる」
ので、何かが音をてて軋み始めた。
菜は、サービスエリアでトイレにったはずだ。 防犯ブザーを持ったまま、で歩いてったはずだ。
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なぜ、そのブザーの紐が切断され、このので、4センチ伸びきったシートベルトのバックルに噛みって潰れている?
「……拓、お、このの過のデータ、見たことあるか?」
健さんがちがり、事務所の奥から埃を被った黒いノートパソコンと、本の通信ケーブルを持ちしてきた。
「この式のハイエースなら、運転席の元にOBDⅡコネクターがある。コンピューターの奥底……EDR(イベント・データ・レコーダー)の揮発性メモリだ。エアバッグやプリテンショナーが点したの記録は、きできない領域に永久保される仕組みになってる」
「見られるんですか……そんなものが」
「ディーラーの専用ほど詳細にはねえが、うちの診断でも『いつ、どんな衝撃が記録されたか』のタイムスタンプくらいは引っ張りせる」
健さんの指が、キーボードを叩く。 通信ケーブルがハイエースのステアリングコラムのに接続された。
内のどこかで、リレーがカチリとさく鳴る。
画面に、無質な英数字の羅列がスクロールしていった。 故障診断コード、スロットル度のログ、輪速センサーのエラー履歴。
そして、健さんのが止まった。
モニターのが、彼の険しい横顔を青く照らししていた。
画面の央に、赤文字で点灯した。
【CRASH EVENT RECORDED : LEVEL 3】 【DATE : 2017/08/14】 【TIME : 14:02:19】 【IMPACT G : -0.85G (LONGITUDINAL)】 【SPEED : 108km/h -> 0km/h】 【SEATBELT PRE-TENSIONER : DEPLOYED (REAR-L)】
息が止まった。
付は、〇。 菜が消えた、あのだ。
だが、が狂っている。
警察への通報は、午分。
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