"亡き義母の口座を洗う女" 第10話
「嘘だ……おがそんな真似、できるはずがない……!」
「嘘だとうなら、を待ってみればいいわ」
私はテーブルののクリアファイルを素く鞄に押し込むと、雅志の横をすり抜けて寝へと向かった。背しろで雅志が「待て! 由里! 話を聞け!」と鳴り散らし、ドアを叩く音が響いたが、私は内側からい鍵をかけた。
ガタガタと震えるで、スーツケースに最限の着替えと貴品、そしてすべての証拠データを詰め込む。
今夜が最の夜だ。
翌朝、未。
雅志がリビングのソファで酒に潰れて眠りこけている隙に、私は静かにをた。朝のたい空気が、疲弊しきった頬をよく撫でる。
午830分。
私は、義母が座を設していた方の支にっていた。と同に窓へ滑り込む。
「いらっしゃいませ。本はどのようなご用件でしょうか?」
案内係の員に、私は息をえて答えた。
「座の緊急凍結と、正利用の届をお願いします。名義は坂本子……私のくなった義母です」
応接に通され、対応にた支代理の男性に、私は持参した類を順番にテーブルへ並べた。
義母の『除籍謄本』と『葬許証』。 そして、昨夜まで雅志の庫にあった『名義譲渡契約』の複写と、監カメラの画像。
「……これは……」
類を目にした支代理の顔が激変した。
広告
「名義の坂本子様は、3に既におくなりになっているのですね……? なぜ、今も毎週引きしの記録が……」
「夫が届を図に隠蔽し、組織に座を貸ししていたんです。今も『株式会社再』という法から資が流入し、毎週曜に犯罪配された物によって全額が引きされています」
私は静かに、だが力い声で言った。
「法定相続である妻の私として、この座の即全額凍結を申請します。それと同に、今から警察へ向かいます」
員の指が猛烈な勢いで端末を叩き始めた。システムで『サカモトカズコ』の座に『事故・刑事案件・即凍結』のフラグが打ち込まれていく。
3、者である義母を縛り付け、正なを流し続けていた「いたままのパイプ」が、カチャリと音をてて完全に閉ざされた瞬だった。
——同刻。IT関連会社、営業部。
雅志は酔いのいを抱えながら、自分のデスクでパソコンをいていた。
昨夜の由里の言葉が気にかられない。だが、「女の旅で何ができる。警察に駆け込んだところで、証拠分で突っ返されるのが落ちだ」と自分に言い聞かせていた。
画面のに、定期にチェックしている『再』の管理ツールからポップアップ通が入った。
今分の『額マージン(80万円)』が、義母の座を経由して雅志の裏座へ送される予定刻——午930分。
広告
(ふん、見ろ。問題なく送処理が始まっているじゃないか。あの女め、ハタリと脅しおって……)
雅志がせせら笑いながら画面を更した、そのだった。
『エラー:対象座(サカモトカズコ)はしないか、利用が制限されています[コード:ERR-901-FROZEN]』
画面が真っ赤に点滅した。
「……は?」
雅志の目玉がびそうになった。マウスを何度も連打する。
『送失敗。資は送元へ逆流しました』 『警告:該当アカウントは捜査関によりマークされています。直ちに端末を破棄してください』
「な……なんだこれ……!? 凍結……!? 本当にやりやがったのか、あの女……!!」
雅志は血相を変えてちがり、スマートフォンを引っ掴んだ。由里に話をかけようとした、その瞬。
『ウィーン』
オフィスの自ドアがき、スーツを着た数の男たちが静かに入ってきた。先の男が胸元から警察帳を取りし、まっすぐに雅志のデスクへと歩み寄る。
「坂本雅志さんですね」
「な、なんですか急に! 俺は今、仕事で……」
「県警捜査課です。組織な子計算使用詐欺、および印私文偽造・同使の容疑で逮捕状がています。それと、組織犯罪処罰法違反(マネーロンダリング)の容疑でも同願います」
静まり返るオフィス。同僚たちの刺すような線が、斉に雅志へと注がれた。
「ち、違う! 俺じゃない! 妻だ! 妻が勝にやったんだ!!」
雅志は狂ったように叫びながら鏡のように暴れたが、捜査官たちに両腕をガッチリと固められ、へ押し伏せられた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 0 -
完結第17話
何番まで落ちたら離婚するの
三年連続で学年一位を取り続ける十二歳の息子。深夜まで勉強に付き添う私と、追い詰めるなと制する夫は、外食先でも教育方針を巡って激しく口論していた。沈黙していた息子は突然、「僕が何番まで落ちたら二人は離婚するの」と冷たく言い放ち、鞄から直近三回分のテスト用紙を取り出した。そこに並んでいたのは、最難関の応用問題だけが解かれ、一番簡単な基礎計算だけを全て意図的に間違えた、信じがたい異様な答案だった。夫婦|真実|親子関係|修羅場2.6万字5 0 -
完結第22話
母は死んだと書いた娘
夫の連れ子だった八歳の娘を引き取り、七年間毎朝弁当を作り、熱を出せば夜通し看病を続けてきた。ぎこちなくとも穏やかに暮らしてきたはずの中学三年の秋、担任に呼び出された私は、娘が提出した調査票を見て言葉を失った。家族欄には「実母は七年前に他界、父と二人のみで生活」と書かれ、私の名前は存在すら消されていた。裡切られた|夫婦|孤獨|修羅場3.3万字5 0 -
完結第25話
父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導
父の葬儀を終えて帰宅した私・水希を待っていたのは、夫・高志から突きつけられた離婚届だった。「底辺の血筋」「寄生虫」と亡き父まで侮辱した彼は、次期社長の座を手に入れるため、社長令嬢リナとの再婚を宣言し、10年間尽くした私を無一文同然で家から追い出す。絶望の中、私に残されたのは、父が最期に託した錆びたブリキ箱だけ。その届け先を頼りに東北へ向かうと、辿り着いたのは巨大企業・暁グループの総本部だった。しかも父の名を告げた瞬間、黒服の社員たちが一斉に頭を下げる。父は本当に貧しい町工場の職人だったのか――。やがて私は、父が残した“力”と、高志の会社を巡る不穏な事実を知る。もう泣いて耐えるだけの妻ではない。自分を捨てた男が次期社長の座を確信して総本部へ乗り込む日、私は静かに反撃の舞台を整え始める。嫁姑3.8万字5 0 -
完結第12話
午前五時の朝餉
母・加奈子を理不尽に追い出して七日目の朝。二重ロックで施錠されたはずの台所で、炊飯器のランプが黄色く灯っていた。「保温:28分」。蓋を開けると、湯気を立てる筍ご飯と、包丁立てから消えた一番重い三徳包丁。電源を抜いても、暗証番号を変えても、毎朝午前五時に届き続ける温かい米。やがて米の底から現れた“ある金属片”を境に、父と祖母の顔から血の気が引いていく。母はどこから入り、この家で何を見つめているのか。因果応報|嫁姑|真実|修羅場1.8万字5 0 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 0 -
完結第13話
二十七年目の嘘
58歳で急死した夫の遺品を整理していた美智子は、引き出しの奥から27年前の「採用内定通知書」を見つける。当時不合格だと思い込んでいた東京の出版社からのものだった。封筒の裏には夫の筆跡で「辞退連絡済」。夫はなぜ私の人生を勝手に奪ったのか。さらに、夫の出世作となった伝説の住宅企画が、かつて自分が書いた企画ノートそのものだったことを知る。奪われた名前と人生を取り戻すため、妻が下した決断とは。人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係2.0万字5 0 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 0