みかん小説
本棚

"全員が揃えた同じ嘘" 第11話

で、輔の握り拳が壁を鈍く叩いた。

「男は警察を呼べと喚き、学側はパニックになった。教育委員会にれたら学の名が傷つく、児童相談所のち入りが遅れた責任を問われる……の保が渦巻くで、倉だけが、血まみれのまま、倒れたを必に抱きしめてた」

「それなら……どうして先は『精神の病』で辞めることになったんだ? 正当防じゃないか! 徒を守ろうとした英雄じゃないか!」

「それが……俺にも分からないんだよ!」

輔が痛な叫びをげた。

「警察が来た、俺たち子どもは全員追いされた。翌には教が来て、先は精神の病気で自分から辞めたって発表されたんだ。あの男がどうなったのかも、がどうしてあんなを残して消えたのかも、俺には何つ分からない……! ただ、ひとつだけ確かなのは」

輔は私の胸ぐらを掴み、暗でその目を真っ直ぐに見据えた。

「倉は、がおかしくなって逃げたんじゃない。俺たちを守るために、あので……血を流して戦ったんだ。それだけは、絶対に違いねえんだよ!」

音が、くでく唸っていた。

輔の証言によって、きくれた。 しかし、その先に現れたのは、あまりにもすぎるたなだった。

なぜ、正当防であるはずのが、「狂気による依願退職」

広告

として処理されなければならなかったのか。 なぜ、学と教育委員会は、すべてを先の責任にして蓋をしたのか。 そして、あの片を残した篠原は、あのから何を背負ってきてきたのか。

輔」

私は輔の腕をゆっくりと解き、自分のでしっかりとった。

を探す」

輔が息を呑んだ。

「探すって……あいつは半に転して、それっきりだぞ。苗字だって変わってるかもしれないし、どこにったかも……」

「僕の仕事を舐めるなよ」

私はポケットの片を、暗でそっと撫でた。

「私は区役所のだ。戸籍の追跡は勝にはできないが、当の児童福祉の記録や、母親の旧姓をがかりにすれば、連絡を取る方法は必ずある。に会わなきゃいけない。あの、あので、倉が最に何を背負わされたのか……それをっているのは、あの所に最までいただけだ」

て、私たちはりしきるへと戻った。

空はい鉛に覆われ、夕暮れがづいていた。 たいを顔に受けながら見げた旧舎の窓ガラスは、まるで何も語らない証のように、に鈍くっていた。

残されたない。 解体のがこの所を完全に破壊するに、私はあの女を見つけさなければならなかった。

広告

、先の血と引き換えにき延びた、あの無女を。

翌週の、私は区役所のデスクで、パソコンの青を見つめながら指先を止めていた。

戸籍民課の窓には、午から絶えなく民が訪れていた。 転入届、婚姻届、印鑑証、そして除籍謄本。 カウンターの向こうで交わされる形式なやり取りのに、私は元のメモ帳にらせた文字をじっと見つめていた。

『橘』。 それは先週の、用務員の田さんにもう話をかけて聞きした、の母親の旧姓だった。

ちゃんの母親はな、あの事件の直に旧姓に戻したんじゃ。そして、児童相談所の紹介で、くのシェルターへ移っていった。……あの父親から逃げるためにな」

方公務員である私が、職権を濫用して民基本台帳ネットワークを私に検索することは、当然ながら法律で固く禁じられている。違反すれば懲戒免職だ。 だが、私には別のがあった。 緑ヶ丘を管轄する教育委員会と、県内の福祉ネットワークが過に発した、公な児童支援報や支援団体の広報誌だ。役所の資料には、の公報が棚いっぱいに眠っている。

昼休み、暗い資料保管庫にで籠もり、埃の匂いがち込めるバックナンバーをめくった。

母親の旧姓である『橘』、そして当の母子保護プログラムを担当していた民NPO法の活記録。 ページをめくる指が、あるで止まった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: