みかん小説
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"二十七年目の嘘" 第1話

夫の葬儀が終わった翌、美智子は斎のいちばんの引きしから、自分の名かれた封筒を見つけた。

付だった。

は、京にある報誌の編集・制作会社。

封筒のには、つ折りにされたが入っていた。

「採用内定通

美智子は、最初その文字のが分からなかった。

もう度読んだ。

それでもに入ってこなかった。

度目に、自分の名を指先でなぞった。

佐伯美智子。

違いなく、自分だった。

その会社には覚えがあった。

忘れるはずがなかった。

歳の、美智子が度だけ、本気で挑戦した会社だった。

面接にもった。

阪から京まで、幹線に乗った。

まだ歳だった真由を実の母に預け、夫の也には、

だけ、どうしても受けたいところがあるの」

げた。

也はりもしなかった。

ただ、困ったように眉をげて言った。

「子供がさいんだから、無理しなくてもいいんじゃないか」

美智子は笑ってごまかした。

「受かるかどうかも分からないし。記受験みたいなものだから」

その

美智子は毎のように話のに座り込んだ。

、連絡先に指定していたのは自宅の黒話だった。

美智子は買い物から戻るたび、先に帰宅していた也に聞いた。

京から話なかった?」

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也は聞から目をさず、いつも同じように答えた。

「なかったよ」

が過ぎた頃、美智子は諦めた。

落ちたのだとった。

恥ずかしくて、会社に問いわせる勇気もなかった。

そのうち、自分自に言い聞かせるようになった。

京までって面接を受けたけど、だめだったの」

ママ友や実の母にも、そうやって笑って話した。

何度もにしているうちに、それが自分のの事実になった。

私は選ばれなかった。

才能がなかった。

だから庭に入って、の子供を育てた。

そういうだったのだと、疑わずにきてきた。

しかし、にあるには、はっきりと印字されていた。

採用。

入社予定

提示された与。

配属先としてかれた「活企画」の文字。

そして、封筒の裏側に、見慣れた夫の跡が残っていた。

「6/17 辞退連絡済」

美智子は、引きしのにへたり込んだままけなくなった。

の廊から、娘の真由が器を洗う音が聞こえていた。

まで、このには勢の弔問客が入りしていた。

玄関にはまだい百の匂いが充満している。

夫は歳だった。

勤め先の宅設備メーカーで倒れ、救急搬送されたが、そのまま目を覚まさなかった。

すぎるだった。

葬儀の席で、参列者は誰もが也を悼んだ。

「真面目で、誠実なでした」

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「いつもご族の写真を机に飾っておられましたよ」

「本当に、族のためにきた方でした」

美智子自もそうっていた。

数のないだったが、真面目に働き、浮気もギャンブルもせず、子供たちの学費を滞りなく払ってくれた。

良き夫であり、良き父親だった。

なくとも、昨までは。

封筒を握りしめたまま、美智子は居へ向かった。

真由がエプロン姿で振り返った。

「どうしたの、お母さん。顔が悪いよ」

「これ」

美智子は震える指で、を差しした。

真由は濡れたを拭き、それを受け取った。

目を通す。

最初はが呑み込めないようだった。

「お母さん……これ、内定通?」

「そう」

「採用っていてあるよ。お母さん、代のころに受かってたの?」

「受かってたみたい」

「みたいって……らなかったの?」

美智子は封筒の裏側を指さした。

真由の線が、そこに留まる。

「6/17……辞退連絡済……」

「それ、お父さんの字よね」

真由の顔から、急速に表が消えていった。

に沈黙がりた。

計の針の音だけが、やけにきく響いた。

「でも、これって……」

真由は言葉を探すように線を泳がせた。

美智子には、娘が何を言おうとしているのかに取るように分かった。

「その頃、真由はまだ歳だった」

美智子が先に言った。

真由はしだけ堵したような顔をした。

「そうだよ。私、まだ赤ちゃんだったんでしょ?」

「だから?」

「だから……お父さんだって、困ったんじゃないかな。お母さんがいきなり京の会社に受かって、赤ちゃん残してくわけにいかないし」

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