"二十七年目の嘘" 第1話
夫の葬儀が終わった翌、美智子は斎のいちばんの引きしから、自分の名がかれた封筒を見つけた。
の付だった。
差は、京にある活報誌の編集・制作会社。
封筒のには、つ折りにされたのが入っていた。
「採用内定通」
美智子は、最初その文字のが分からなかった。
もう度読んだ。
それでもに入ってこなかった。
度目に、自分の名を指先でなぞった。
佐伯美智子。
違いなく、自分だった。
その会社には覚えがあった。
忘れるはずがなかった。
歳の、美智子がで度だけ、本気で挑戦した会社だった。
面接にもった。
阪から京まで、で幹線に乗った。
当まだ歳だった真由を実の母に預け、夫の也には、
「だけ、どうしても受けたいところがあるの」
とをげた。
也はりもしなかった。
ただ、困ったように眉をげて言った。
「子供がさいんだから、無理しなくてもいいんじゃないか」
美智子は笑ってごまかした。
「受かるかどうかも分からないし。記受験みたいなものだから」
その、週。
美智子は毎のように話のに座り込んだ。
当、連絡先に指定していたのは自宅の黒話だった。
美智子は買い物から戻るたび、先に帰宅していた也に聞いた。
「京から話なかった?」
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也は聞から目をさず、いつも同じように答えた。
「なかったよ」
週が過ぎた頃、美智子は諦めた。
落ちたのだとった。
恥ずかしくて、会社に問いわせる勇気もなかった。
そのうち、自分自に言い聞かせるようになった。
「京までって面接を受けたけど、だめだったの」
ママ友や実の母にも、そうやって笑って話した。
何度もにしているうちに、それが自分のの事実になった。
私は選ばれなかった。
才能がなかった。
だから庭に入って、の子供を育てた。
そういうだったのだと、疑わずにきてきた。
しかし、のにあるには、はっきりと印字されていた。
採用。
入社予定。
提示された与。
配属先としてかれた「活企画」の文字。
そして、封筒の裏側に、見慣れた夫の跡が残っていた。
「6/17 辞退連絡済」
美智子は、引きしのにへたり込んだままけなくなった。
の廊から、娘の真由が器を洗う音が聞こえていた。
昨まで、このには勢の弔問客が入りしていた。
玄関にはまだい百の匂いが充満している。
夫は歳だった。
勤め先の宅設備メーカーで倒れ、救急搬送されたが、そのまま目を覚まさなかった。
すぎるだった。
葬儀の席で、参列者は誰もが也を悼んだ。
「真面目で、誠実なでした」
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「いつもご族の写真を机に飾っておられましたよ」
「本当に、族のためにきた方でした」
美智子自もそうっていた。
数のないだったが、真面目に働き、浮気もギャンブルもせず、子供たちの学費を滞りなく払ってくれた。
良き夫であり、良き父親だった。
なくとも、昨までは。
封筒を握りしめたまま、美智子は居へ向かった。
真由がエプロン姿で振り返った。
「どうしたの、お母さん。顔が悪いよ」
「これ」
美智子は震える指で、を差しした。
真由は濡れたを拭き、それを受け取った。
目を通す。
最初はが呑み込めないようだった。
「お母さん……これ、内定通?」
「そう」
「採用っていてあるよ。お母さん、代のころに受かってたの?」
「受かってたみたい」
「みたいって……らなかったの?」
美智子は封筒の裏側を指さした。
真由の線が、そこに留まる。
「6/17……辞退連絡済……」
「それ、お父さんの字よね」
真由の顔から、急速に表が消えていった。
居に沈黙がりた。
計の針の音だけが、やけにきく響いた。
「でも、これって……」
真由は言葉を探すように線を泳がせた。
美智子には、娘が何を言おうとしているのかに取るように分かった。
「その頃、真由はまだ歳だった」
美智子が先に言った。
真由はしだけ堵したような顔をした。
「そうだよ。私、まだ赤ちゃんだったんでしょ?」
「だから?」
「だから……お父さんだって、困ったんじゃないかな。お母さんがいきなり京の会社に受かって、赤ちゃん残してくわけにいかないし」
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