"左足だけの靴箱" 第7話
そのすべてが、若者の命と老の血肉を貪ったのに成りっていたのだ。
「許さない……絶対に」
私は資料をカバンに押し込み、自宅へと戻った。
そのの夜過ぎ。
玄関の鍵が、おどおどとしたつきでけられる音がした。
私は居のかりを消し、ソファに静かに腰掛けていた。元には、録音状態にしたスマートフォンと、弁護士から指示されたヒアリングシートを準備している。
ドアがき、忍びで入ってきたのは、髪をボサボサにし、をシワだらけにした夫・直だった。逃げ回り、く当てもなくなって戻ってきたのだろう。
「……彩?」
暗ので私が座っているのに気づき、直は鳴のような声をげた。
「直。気をつけなさい」
私のややかな声に弾かれたように、直は壁のスイッチを押した。部がるくなり、直の惨めな姿がわになる。目のには酷いクマができ、全がガタガタと震えていた。
「彩……頼む、聞いてくれ! 俺は……俺は悪気があってやったんじゃないんだ!」
直は私のもとに駆け寄り、フローリングのに膝をついてを擦り付けた。座の姿勢のまま、泣きじゃくりながら叫ぶ。
「俺は、あの事故の、パニックになってたんだ! 輝が落ちたのは俺のせいじゃない、あいつがを滑らせたんだ! でも、全ネットを張ってなかったことがバレたら、俺は首になるし、刑務所にかなきゃならなかった! だから……ちょっと類をごまかしただけなんだ!」
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「ちょっと類をごまかした?」
私は静に、しかし氷のようにたい声で問いかけた。
「慰謝料の百万円を横領したことも? 吉岡静さんを脅して示談にサインさせたことも? すべて『ちょっと』のことなの?」
直は顔をげ、涙とでぐしゃぐしゃになった顔で私を見げた。
「静さんは……あのバカなババアは、から事故の真相に気づいたんだ! 輝がいていた記を見つけたらしい! それで俺を警察に売ると脅してきたんだよ! 『警察にかれたくなかったら、毎万払え』って……!」
「それで、あの部にまわせたのね」
「そうだ! じゃ活できないって言うから、俺が賃を払って隣の202号にませた! くで監しておかないと、いつ警察に駆け込まれるか分からなかったから……!」
「じゃあ、私の靴は?」
私はフローリングのに置かれた、ワインレッドのパンプスを指さした。
「なぜ、私の靴を盗んで静さんに渡していたの?」
直はそうに顔を歪め、吐き捨てるように言った。
「あのババアが……あのイカれたババアが求したんだよ! だけじゃ信用できないって。『おが番切にしている庭を、いつでも壊せる証拠を寄こせ』って言われたんだ!」
直のから語られた真相は、あまりにも狂気に満ちていた。
吉岡静は、孫をに追いやった直への復讐として、彼に「妻の常」
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を差しすことを命じた。
直は妻が用している靴を、玄関からずつ盗みし、隣の静に渡した。静はその靴を受け取ると、直の目ので、同じ靴の品()を通販で注文させ、つを並べて箱に収めたという。
『おの奥さんは、自分が靴を無くしたとって泣いているかい?』
『おが残業だと嘘をついて私にを払っている、奥さんはで夕飯をべているんだろうね』
静は、直が靴を持ってくるたびに、そうやって彼を精神に痛めつけた。
「静さんはね……あの靴の箱を、俺に見せつけるように部に並べてたんだ……」
直は自分のを両で抱え込み、呻くように言った。
「『もしおがを払わなくなったら、この靴を全部奥さんに見せて、おが殺しだと教えてやる』って……! 俺は怖かったんだよ、彩! おに嫌われるのが、おに捨てられるのが怖くて……だから指示通りに靴を盗んで、静さんに渡し続けたんだ!」
「……私のためだった、とでも言いたいの?」
「そうだよ! 全部、俺たちの活を守るためだったんだ! 信じてくれ彩! 俺は被害者なんだ! あのババアと、産の渡辺に利用されてたんだ!」
直は私の膝にしがみついてきた。そのから伝わる温もりが、今の私には酷くで、悪寒すら覚えた。
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