"四十二歳の妊婦を捨てた機長と二十年後の息子" 第5話
誠は私の目を見て、はっきりと言った。
「黒なら黒、ならってな」
私は決し、誠に向かって頷いた。
「そうだね。誠、お願い。その探偵を紹介して」
誠は力く頷いた。
「分かった。任せとけ」
こうして私は、翔の裏切りの真実をるためにきす決を固めた。
その夜、私は何わぬ顔でに帰った。
玄関のドアをけると、リビングのソファーに座る翔の姿が目に入る。
片にスマホを持ち、画面をスクロールする指先は忙しなくいていた。
ソファーの背もたれにだらしなく寄りかかり、まるでそこが自分だけの居所かのようにくつろいでいた。
私は普段通りに声をかけた。
「ただいま」
翔は画面から目をさず、気のない声で返した。
「お、おかえり」
それだけ。
私の顔をまともに見ることもなく、目線はスマホの画面に釘付けのまま。
いつからこんなにたい関係になったんだろう。
私は靴を脱ぎながら、のでいため息をつく。
私はリビングに入り、彼にづいて尋ねた。
「最、仕事忙しいの?」
翔は面倒くさそうに答えた。
「まあな。フライトがて込んでる」
相変わらずスマホをいじったままの返事。
まるでこの会話がどうでもいいと言わんばかりの態度だった。
私は彼を試すように、核に触れる言葉を投げた。
「そう。結ちゃんって子と仲がいいって聞いたけど」
広告
その瞬、翔の指が画面のでぴたりと止まる。
翔は顔はかさないが、らかに瞬の自然ながあった。
私は彼の反応を逃さず、さらに続けた。
「同僚が噂してたの。フライトもずっと話してるし、ラウンジでも仲良しだって」
翔は無理に作ったような乾いた声で、で笑った。
「くだらない。おもそんな噂を信じるのか」
乾いた笑い声。
でもその目はわずかに揺らぎ、表がくなるのがはっきりと分かった。
私は彼を見ろして聞いた。
「翔はどうなの?」
翔はスマホの画面を消し、テーブルのに置いた。
「仕事仲だよ。それ以でもそれ以でもない」
翔はそう言いながら、スマホを裏返して置いた。
その仕が、どこか自然だった。
さっきまでずっとで触ってたのに。
まるでスマホの画面の通を見られたくないかのように、翔はしだけ体の向きを変え、私の線を避けるように目を細める。
私は静かに問い詰めた。
「じゃあ、その噂も全部嘘?」
翔は苛ったように声を荒げた。
「当たりだろう。おもそんなくだらないこと気にするなよ」
気にするな、ね。
何もないなら、もっと堂々として目を見て言えばいい。
ただの勘違いなら、で笑って「くだらない」だけで済ませるはず。
それなのに、今のは違う。
声の無駄に力の入った言い方して、瞬の目の揺らぎ。
広告
やっぱり、何かある。
翔の言葉を信じたい気持ちと、疑う気持ちが私ので激しく交差する。
でも、もう迷わない。
私は真実をるために、探偵をかすことを決めた。
探偵に依頼してから数。
私はついに、翔の決定な裏切りの証拠をに入れることに成功した。
探偵からの詳細な報告は、私の像以に残酷なものだった。
写真には、翔と結が腕を組みながら、級ホテルに入る姿が写っていた。
密に2きりで消えていく姿が、はっきりと鮮に映しされていた。
探偵からの報告によると、フライトのの滞先でも、ほぼ毎回2でを共にしていたらしい。
内だけの単なる仕事仲の関係ではないのだ。
言葉にするのも嫌だった。
私はまだどこかで、翔を信じたかったのに。
それがこんな形で裏切られるなんて。
私は写真を見つめ、涙を流した。
「やっぱり……そうだったんだね」
たい現実を突きつけられた私は、最の戦いに挑む決をした。
その夜、私はリビングのテーブルに、探偵から受け取った証拠の写真をずらりと並べた。
翔が帰宅するなり、いつものようにスマホを見ながらソファーに座る。
私はく息を吸い、静かに、しかしたい声でかけた。
「翔、話があるの」
翔はスマホから目をさず、面倒くさそうに答えた。
「なんだよ」
相変わらず、スマホの画面から目をさない。
私は無言でテーブルに並べた写真を指さした。
「これ見て」
翔は瞥すると顔をしかめ、に取ることもなく適当に目を通した。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
五十万円の便利妻
義父の四十九日を終えた日曜の朝、商社の係長へ昇進した夫から緑の離婚届を突きつけられた。「腰を壊したお前は出世の邪魔。手切れ金50万で出て行け」。4年間、排泄の世話まで一人で背負い続けた私を、夫は「無償の介護要員」として切り捨てたのだ。愛人とタワマンへ移る気満々の夫。だが、冷え切った私の手元には、四年間の一切を記した【介護日誌】と、義母から託された反撃の鍵が握られていた。因果応報|裡切られた|介護|金銭問題|不倫1.7万字5 121 -
完結第19話
10年間外に出ていない妹が妊娠、母は病院を拒んだ
10年間も寝たきりの妹・知恵の腹部が、ある日わずかに膨らんでいることに気づいた和美。妊娠検査薬はすべて陽性だったが、父親を尋ねても知恵は「彼が誰か知ったら家族が壊れる」と口を閉ざす。 妹の命を守ろうと中絶を決意した和美は、やがて自分自身の記憶にも不自然な空白があることに気づく。そして母を問い詰めた末、2年前、和美が権力者から襲われかけて抵抗し、刑務所へ追い込まれていた過去が判明。さらに、知恵は姉を救うため、自らその一族との取引を受け入れていたのだった。 和美が「自分が妹を守ってきた」と信じていた10年間。しかし本当に人生を犠牲にして姉を守り続けていたのは知恵の方だった。そして今、彼女のお腹に宿った子の父親こそ、封印されていた過去へ繋がる人物だった――。親子関係|修羅場|不倫2.9万字5 859 -
完結第14話
夫の遺品から出た三十年目の嘘
四十九日を終えた亡き夫の書斎。引き出しの隠し底から現れたのは、銀座の老舗宝飾店の高級ネックレスだった。添えられたカードには夫の筆跡で「麻美へ 誕生日おめでとう」の文字。結婚三十二年、私には花一輪すら贈らなかった無口な夫が、見知らぬ女へ遺した甘い贈り物。裏切りの証拠を握りしめ、私は封筒に記された住所の呼び鈴を鳴らした。現れた四十歳の女性にネックレスを突きつけ、夫の名を告げた瞬間――女は息を呑み、大粒の涙をこぼして言った。 「奥さん……ご主人から、何も聞いていないんですか?」夫婦|不倫2.1万字5 1285 -
完結第18話
余命半年と嘘をつき、愛人と隠し子を選んだ夫
「俺はあと半年しか生きられない」――夫・健一から突然、肺がんによる余命宣告を告げられた恵子。しかしその夜、1人で人生を考えたいと言って出かけた夫は、隣町のスナックで若い女性・みほと会っていた。 幼馴染・香織が録音した会話から、健一が既婚者であることを隠してみほと関係を持ち、存在しない「軽井沢の豪邸」で一緒に暮らそうとしていることまで判明する。さらに健一は、妊娠中のみほとの子を「隠し子」と認め、「遺産は愛人と子供に渡すから、お前は我慢しろ」と恵子へ言い放つ。 だが恵子は夫の病気そのものを疑い始める。やがて健一が“証拠”として見せた診断書に、決定的な綻びが見つかる――。怒り|不倫2.7万字5 3490 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 4077 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 584 -
完結第30話
愛人の妊娠を信じた夫と15年前の無精子症診断書
「俺は彼女とやり直したい。だから離婚してくれ」――48歳の夫・健一が土下座して告げた相手は、娘より年下の20歳・美香。しかも妊娠しているという。15年間、夫のわがまま、継娘ナナの冷笑、義母・和子の嫌味に耐え、家族のために尽くしてきた私・ゆみは、泣き叫ぶどころか用意済みの離婚届を差し出した。彼らは知らない。生活費を削って愛人へ送金した記録も、ナナが父の不倫を手伝っていたLINEも、家の売却計画も、私はすべて押さえていた。そして弁護士の調査で、美香がナナの恋人・達也と2年前から同棲する“事実上の妻”だったことまで判明する。新しい家族を手に入れたと浮かれる父娘は、実は同じ若いカップルに二重で騙されていたのだ。親族が集まる古希祝いの日、私は証拠写真をテーブルに置く。だが本当の切り札はまだある。12年前、健一が必死に隠した不妊検査の結果が、愛人の妊娠だけでなく、ナナの出生そのものまで覆そうとしていた――。不倫4.4万字5 605