"四十二歳の妊婦を捨てた機長と二十年後の息子" 第9話
完全にアウトだね」
蓮の声はかったが、その奥にはりが滲んでいたようにう。
翌、ニュースはさらに広がった。
『藤崎翔氏、CAへの適切言疑惑で航空会社を解雇』
『被害者数。業界内での再就職も困難』
翔の醜聞は、瞬にして業界にれ渡ることに。
さらに、翔のセクハラ被害者のには、元CAの結も含まれていたことが判した。
結は元々翔が結婚したはずの若いCAだが、翔の本性をり、逃げしたのだろう。
彼女は記者会見で、涙ながらに語っていた。
「私は最初、彼を尊敬していました。でも彼の態度がどんどん変わり、支配しようとするようになったんです」
彼女はハンカチで涙を拭いながら訴えた。
「もう逃げられないといました。でも、これ以誰にも同じいをさせたくない……」
この証言をきっかけに、の被害者たちも次々と声をげていく。
翔は完全に終わった。
業界からも締めされ、どこにも再就職できなくなった。
数週のある。
蓮と私は空港のカフェで、空き缶を集める清掃員の姿を目にした。
かつてこの空港ので、として堂々と歩いていた男が、今や見るもない。
汚れたスーツはシワだらけ。
無精髭が伸び放題の顔。
そして憔悴しきった虚ろな目。
彼はボロボロの聞を握りしめ、カフェの隅の席で刻みに震えていた。
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「俺のキャリアが……財産が……全部……」
かつての自信はどこにもなく、ただ終わりの見えない絶望のにいた。
彼はを抱え、うめき声をげた。
「なんで俺がこんな目に?俺はだったんだぞ」
震えるでテーブルを叩くが、その音は々しく、誰も彼に注目すらしない。
「俺は業界でもトップのパイロットだった。みんな俺に憧れてたはずなのに……」
誰に言うでもなく呟き続けるその姿は、あまりにもれ。
蓮が静かに私の方を向き、さく息を吐いた。
「これが、父さんの選んだ未来なんだね」
私はややかに答えた。
「そうね。因果応報よ」
「うん」
「結局、自分で蒔いた種だよ」
私と蓮は、静かに彼の転落を見つめる。
翔が顔をげ、私たちの線に気づいた。
「美咲……」
翔は何かにすがるようにちがり、フラフラとこちらへ向かってくる。
「美咲、俺を助けてくれ」
私は歩がり、たく言い放った。
「今更、何?」
翔は蓮にすがりつこうとした。
「お、俺の息子だろう?俺を見捨てるのか?」
蓮は翔のを払い除けた。
「親父を?」
蓮は酷な目で見ろした。
「あなたは僕の父ではありません」
その言葉が突き刺さったのか、翔の顔が苦痛に歪む。
蓮は彼を責めてた。
「あなたは母を捨て、僕を捨てた」
「母が苦しんでいた、どこにいた?」
「それは……」
「お母さんが泣いている、どこにいた?」
翔は言葉に詰まった。
「それは……」
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翔のが震える。
蓮ははっきりと言い切った。
「お母さんを支えてくれたのはあなたじゃない。佐々誠さんだ」
翔は首を横に振った。
「違う!俺は……」
私は蓮の隣にち、翔に告げた。
「そう。あなたのは、あなたの選択の結果よ」
私は静かに言った。
「あなたが私たちを捨てたように、私たちもあなたを捨てるわ」
翔は絶望したようにを伸ばした。
「待ってくれ!俺は……」
彼は何かを言いかけたが、私と蓮はもう彼に興がなかった。
蓮は私の方を向いた。
「こう、母さん」
私たちは彼に背を向ける。
翔の痛な声が、どこかくで消えていく。
その、私は悟った。
翔はもう、過のなのだ。
そして私たちは、もうにむだけ。
それは、翔の転落が決定になったに起こった。
翔が航空業界から完全に追放され、再就職も叶わず惨めな姿を晒していた頃。
彼と共に落ちていったはずの結が、わぬ形で再び私たちのに姿を現した。
かつて27歳だった彼女も、今や47歳。
かつては「若くてらしい」と持て囃されていたが、今の彼女にその面はない。
齢をねた彼女を、翔はあっさりと捨てたのだ。
「翔さん、最全然うちに帰ってこないの……」
かつては翔にだった彼女が、今や泣きながらにすがるようになっている。
だが、翔がそれに答えることはなかった。
「うるせえな。
おもババアになったな。男は若い女が好きに決まってんだよ」
結は、かつて翔が私に言ったのと同じ言葉を、今度は自分が浴びる番だった。
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