"午前五時の朝餉" 第12話
あの朝の、健と志保は正式に起訴された。
の保護責任者遺棄致に加え、千万円の保険を詐取した容疑。
会社の負債はすべてるみに、野のと建物は、差し押さえの続きがめられていた。
親戚筋は誰も蓮を引き取ろうとはしなかった。
だが、加奈子の尽力と公な支援制度によって、蓮は内の学寮に入することが決まり、も転せずに通える目処がっていた。
「蓮」
階段の方から、声がした。
蓮が顔をげると、加奈子がっていた。
以よりし髪をく切り、ベージュのトレンチコートを着ている。
そのには、見慣れない紺のさな提げ袋が握られていた。
加奈子は蓮の隣に腰をろした。
のに、拳つ分ほどの隙が空いている。
「荷物、これで全部?」
「うん。寮に送ったやつもあるから、持ちはこれだけ」
蓮はを見つめたまま答えた。
気まずい沈黙が流れた。
母親が父親と祖母を破滅させたという事実。
そして、その母親が、自分を守るために獄のような暴力を耐え抜いてきたという事実。
どちらも、歳のが簡単にみ込めるさではなかった。
「これ」
加奈子が提げ袋を差しした。
蓮が受け取ると、から現れたのは、真しいステンレス製の段式保温弁当箱だった。
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蓋をけると、まだ温かい湯気がふわりとちった。
に入っていたのは、普通のいご飯のに、梅干しが粒。
おかずの段には、甘くない卵焼きと、ほうれんの胡麻え、それからさく焼かれた鮭の切りが入っていた。
あの々の、を持たされた呪いのような献ではない。
ただの、どこにでもある昼飯だった。
「寮の堂、朝と夜しかないって聞いたから」
加奈子はを見据えたまま言った。
「自分で作れるようになるまでは、たまに届けることもできるけど……無理に会わなくてもいいからね」
蓮は箸をに取らなかった。
弁当箱の底から伝わってくる確かな温もりを、両のひらで受け止めるようにして包み込んだ。
「母さん」
「ん?」
「僕……母さんのこと、ずっと『何もできない』だとってた」
蓮の声が、微かに震えた。
「お父さんたちがそう言うから、そうなんだってい込んでた。母さんが台所でで泣いてるの、見たことあったのに……見ないふりしてた」
加奈子は何も言わず、ただに揺れる線の向こうの板を見つめていた。
「ごめんなさい」
蓮の目から、粒の涙が零れ落ち、弁当箱の蓋のに落ちた。
「謝らなくていいのよ」
加奈子のが、そっと蓮ののに置かれた。
、度もさをじさせたことのなかった、さく、いだった。
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「あなたがきているだけで、私は何度も助けられたんだから。でもね、蓮」
加奈子は静かに息を吸った。
「あなたはお父さんの代わりでも、私の方をするための具でもないの。これからは、全部自分で決めていいのよ」
くから、の接を告げる踏切の警報音が響き始めた。
加奈子はちがり、元に置いてあった自分のさなキャリーケースのハンドルを引いた。
「母さんはどこへくの?」
蓮が涙を拭いながら尋ねた。
「のくの町よ。アパートも見つかったし、スーパーの惣菜売りで働くことになったの」
加奈子は振り返り、微かに微笑んだ。
その元には、かつての凍りついたたさも、痛みに耐える歪みもなかった。
「料理はね、本当は嫌いじゃなかったのよ」
滑り込んできたのドアがき、加奈子は迷いのない取りで内へと乗り込んでいった。
ホームのベルが鳴り止み、ドアが閉まる。
きしたの窓越しに、加奈子は度だけさくを振った。
の陽が、プラットホーム全体をく照らししていた。
蓮はベンチに座り直し、温かい弁当箱の蓋を丁寧に閉めた。
あの暗い台所で、、誰かの都のためだけに灯り続けていた琥珀の保温ランプは、もう度と点くことはない。
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