みかん小説
本棚

"年商一兆円の父にワインをかけた婚約者" 第7話

首都速を抜けたタクシーは、本経済の枢である町のオフィスへと滑り込んだ。 然とそびえつ超層ビル群のでも、圧倒な威容を誇る階建ての巨塔――扶桑タワーの寄せにする。

の鳳凰が翼を広げたエンブレムが、エントランスの巨な御に刻まれている。 世界数のメガコングロマリット、「扶桑グループ」の本社ビルだった。

がおずおずと回転扉をくぐると、広なエントランスホールにはピンと張り詰めた静寂が漂っていた。 受付へ向かおうとした瞬に駆け寄ってくるがあった。

「お嬢様、お待ちしておりました」

々とげたのは、先ほどホテルで父の傍らにいた男、倉林だった。 ホテルでの焦燥は消えり、完璧なエリート秘の顔に戻っている。

「倉林さん……父は?」 「最階の会でお待ちです。どうぞこちらへ」

倉林が黒いカードキーをかざすと、役員専用のプライベートエレベーターの扉が無音でいた。 力をじさせない速度で、階数表示が信じられない勢いでがっていく。

階。 扉がいた先は、音が完全に吸い込まれる毛い絨毯と、壁に掛けられた美術館級の絵画が並ぶ回廊だった。 倉林がな両きの扉をノックする。

「会、お嬢様をお連れいたしました」

広告

「入れ」

から聞こえてきたのは、聞き慣れた、けれど今まで聞いたことのないみと威厳を帯びた声だった。

扉がかれる。 広な部の奥、ガラス張りの壁面に広がる京の夜景を背にして、巨なマホガニーのデスクに座る男がいた。

ワインで汚れた物のシャツは脱ぎ捨てられ、最峰の職が仕てたダークグレーのスリーピーススーツを完璧に着こなしている。 髪をオールバックに撫でつけ、デスクのに組まれたからは、絶対な権力者だけが放つ徹な覇気が漂っていた。

「お父さん……」

の声が震えた。 そこにいるのは、違いなく父だった。 だが、自分がっていた「田舎のの良いお父さん」の姿は、どこにもなかった。

郎は娘の姿を見ると、すっと目元を緩め、がった。

「綾、無事だったか」

その温かい声を聞いた瞬、張り詰めていた糸が切れ、綾はそのに崩れ落ちるように泣き崩れた。

「ごめんなさい……っ! お父さん、ごめんなさい! 私が馬鹿だったの! 圭吾さんのことも、あのたちのことも何も見抜けないで……お父さんにあんな酷いいをさせて……!」

郎は歩み寄り、膝をついて娘の肩を優しく抱き起こした。

「泣くことはない。おが謝る必など、何ひとつないんだ」 「でも……っ!」

「私はおに言ったはずだ。は見かけによらない、本質を見なさい、とな。

広告

だから私は、おになるまで、自分が扶桑グループのであることを隠し、福岡のさな会社で育てた。柄に群がるハイエナではなく、おというそのものをしてくれる男を見つけてほしかったからだ」

郎はきなで、綾の涙を拭った。

「おは騙されたのではない。相の化けの皮を、結婚するに剥がすことができたんだ。それだけで、今来事には分な価値があった」

「お父さん……あのたちに、復讐するの……?」 恐る恐る尋ねる綾に、宗郎はふっと線をした。

その横顔には、先ほどまでの優しい父親の表はなく、百戦錬磨の酷な経営者の顔が浮かんでいた。

「復讐ではない。これは教育だ。……いや、社会な制裁だな」 声から切のが消えていた。

「彼らは踏み越えてはならない線を越えた。の尊厳を踏みにじり、己の保のために嘘を並べててを陥れようとした。その罪のさを、彼らの信じる『と権力』のルールに従って、骨の髄まで教えてやる必がある」

「私に……何かできることはある?」 宗郎は首を横に振った。

「おは何も配しなくていい。傷ついたを休め、自分のを向いて歩みなさい。あとはすべて、の仕事だ」

郎がデスクに戻り、インターホンを押した。 「倉林、入れ」

扉がき、倉林がタブレットをに部へ入ってきた。

「会、ネットの状況です。ホテルのロビーで撮された画がSNSで拡散され始めております。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: