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"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第2話

私は言葉を失い、ただ目の婚届を見つめることしかできなかった。

彼が最帰りが遅く、休を空けていた理由。

それが今になって、はっきりと1つの線に繋がった。

志は次期社の座を狙っており、そのためには私というが邪魔になったのだ。

彼はテーブルの婚届を指差し、たい声で命令した。

「さっさとそのにサインして、俺のからていけ」

彼は私の顔を覗き込み、残酷な言葉を付け加えた。

「俺がわせてやっている寄虫には、もう1円も払う気はない」

私は何か反論しようといたが、喉の奥が張り付いたように声がなかった。

私には、彼に正面からち向かうための現実な武器が何つなかった。

結婚してからの10、私は志の命令で専業主婦となった。

事の全てを完璧にこなすよういられ、社会から切りされてきたのだ。

活費は彼が細かく管理し、私の元には自由になるおなどほとんどない。

私名義の通帳の残は、数万円しかなかった。

所も、からの事を買うおも、私には保証されていない。

それでも、いつか彼が優しかった頃に戻ってくれるかもしれないと信じていた。

を殺して、ただひたすらに耐え続けてきたのだ。

しかし、テーブルに置かれた婚届と、彼から放たれる酷な線。

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それが、私のに残っていた全ての希望を完全に打ち砕いた。

私のに残っていた彼への抹のは、この瞬に完全に凍りついた。

私はゆっくりと線を落とした。

私のには、錆びついた物のブリキ箱がしっかりと抱えられている。

くなる直、父は酸素マスクをし、震えるでこの箱を私に握らせた。

父の苦しそうな呼吸と、最期の言葉が脳裏に蘇る。

に、俺の内縁の妻と娘がいる』

父は私のく握り返し、懇願するように言った。

『これをあいつらに届けてやってくれ』

その言葉は、ずっと真面目にきてきた父のとは全く結びつかないものだった。

解で、どこか違のある言葉だった。

箱と緒に渡されたさなメモには、方の所がきされている。

なぜ父は、の直に私へこんなものを託したのか。

なぜ今まで、しい族のをただの1度もにしなかったのか。

そのさな違が、今の私にとって唯がかりだった。

志が苛ったように舌打ちをした。

「どうした?漢字が読めないのか?」

彼は私を急かすように言い、私の目のに印鑑を転がした。

印鑑がテーブルのでカラカラと音をてて止まる。

私はゆっくりと顔をげ、彼の顔を静かに見つめ返した。

そこにいるのは、私がした夫ではなく、ただの酷なだった。

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私は無言のままを伸ばし、テーブルののペンをに取った。

婚届の署名欄にペン先を当て、自分の名を記入していく。

き終えると、私は震えるに力を込め、赤い印鑑を拾いげた。

の横の枠のに、印鑑をしっかりと押し付けた。

私はペンと印鑑を置き、類からした。

「これでいいですね」

私が静かな声で婚届を差しすと、志は満そうに角をげた。

彼は私のから類を乱暴に奪い取った。

「荷物は、適当な所に送ってやる」

彼は類を見つめたまま、私に向かってを振った。

「今はそのゴミだけ持って、さっさと消えろ」

私は何も言い返さず、ゆっくりと踵を返した。

リビングの隅に置いてあった、自分のさな鞄だけをに取る。

には財布と携帯話、そして数分の着替えしか入っていない。

私はブリキ箱を両でしっかりと抱え直し、玄関へと向かって歩きした。

度も振り返ることなく、廊む。

から、志が誰かに話をかけるるい声が聞こえてきた。

「あ、リナさん?うん。今ちょうど、あの寄虫を追いしたところだよ」

その楽しげな声は、私というが初めからしなかったかのように響いていた。

私は属製のドアノブにをかけ、押しけた。

はまだ、たいがとめどなくり続いていた。

私はへとを踏みし、背でドアが閉まるのを待った。

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