"母は死んだと書いた娘" 第5話
血の気が完全に引いていくのが分かった。 葵は、っていたのだ。 父親が、自分のらないところで勝に養子縁組をめようとしていたことを。 そして、「これ以騒がせるな」とかれているということは……葵はすでに、この件で康平と激しく衝突していたのだ。
脱所の方から、呂のドアがく音がした。 音が廊をづいてくる。
私は急いで類を封筒に戻し、引きしを閉めて鍵を元の状態に戻した。 斎のかりを消し、胸に封筒を抱えたままリビングへと戻る。
濡れた髪をタオルで拭きながら、部着姿の康平がリビングに入ってきた。 「ふう、さっぱりした。朋代、飯は?」
私はダイニングテーブルの央に、その茶封筒を叩きつけるように置いた。 バサリ、とい音が静かな部に響く。
康平のが止まった。 タオルの隙から覗く彼の目が、テーブルのの封筒を捉えた瞬、きく見かれた。
「……朋代、それ」
「斎の引きしがいていたわ」 私の声は、自分でも驚くほどたく、く沈んでいた。 「これ、どういうこと? 説して、康平さん」
康平はタオルを首にかけ、わざとらしくきなため息をついた。 「なんだよ、勝にの部を漁ったのか? プライバシーってものがあるだろ」
「プライバシー?」 私は歩詰め寄った。 「私の名とが勝にかれて、実印を押す直まで準備されている類のどこが、あなたのプライバシーなの!? 答えてよ! どうして私に内緒で、葵との養子縁組をめようとしていたの!?」
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康平はバツの悪そうに顔を歪め、をガリガリと掻いた。 「……サプライズにしたかったんだよ」
「は?」
「おのためだよ、朋代」 康平は、まるで来の悪い部に言い聞かせるような調で言った。 「お、ずっと気にしてただろ。もあいつの面倒を見てきたのに、葵から度も『お母さん』って呼んでもらえないこと。このままに入学したら、保護者の類やPTA、何かあるたびに『継母』って肩の狭いいをするのはおじゃないか。だから、俺が全部段取りをつけて、法律も本当の親子にしてやろうとったんだ。納めとして、おへの謝の印だよ」
謝の印。 その言葉が、あまりにもグロテスクに響いての奥が泡った。
「謝……? 私のために、葵に無断でこれをめようとしたの?」
「無断じゃない!」 康平は苛ちをわにして声を張りげた。 「先週、あいつにもちゃんと話したんだよ!『に入るいい会だから、朋代さんと正式に親子になれ』ってな! そしたらあいつ、急に泣き喚いて暴れしやがったんだ。『絶対に嫌だ』『お母さんはだけだ』って! 俺の言うことをまったく聞かないで、部に閉じこもりやがった!」
康平の顔が、りで赤く染まっていく。 「親の子らずとはこのことだ。朋代がどれだけ苦労しておを育ててきたとってるんだって叱りつけてやったよ。
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葵のためにも、おのためにも、世体にも、途半端な関係のままにかせるわけにはいかないんだ。だから俺が父親として、引にでも決断してやろうとしたんじゃないか! 何が悪いんだよ!」
「世体……」 私のから、かすれた呟きが漏れた。
「そうだよ! 親戚だって見てるんだ。『康平のところはまだ籍を入れてないのか』『妻さんとうまくいってないのか』って、裏で言われてる俺のはどうなる? 養子縁組をすれば、すべてが丸く収まるんだ。おだって、本当の母親になりたいだろ!?」
目のの男が、ひどくいき物に見えた。 康平は、私の気持ちなどこれっぽっちも考えていない。葵の傷など、ミリも見つめていない。 彼が欲しかったのは、「き妻の連れ子をく育てる献な妻」と、「しい母親を受け入れて更した素直な娘」、そしてそれらを束ねる「派なである自分」という、美しくえられた額縁だけだったのだ。
そして、その押し付けられた額縁に、歳の葵はたったで絶望していたのだ。
父親から「正式な母親になれ」「おのためだ」と追い詰められた葵。 逃げを失った彼女が、学の調査票という公なので取った、唯の抵抗。
――母はに。 ――現、父とのみで活。
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